数日後。

 花か音のちゃんに誘われてめいちゃんと一緒に家電量販店にやってきた私は、正式に追加メンバーを祝福していた。

「ということで、JELEEジエリー新メンバーの木き村むらちゃんでーす!」

 花音ちゃんの紹介に、めいちゃんがすっごく緊張した様子でぺこりと頭を下げている。

「よ、よろしくお願いしますっ! 木村ちゃんこと、高たか梨なし・キム・アヌーク・めいですっ!」

「わ──」

 調子を合わせて言いながら私は、ぱちぱちーって拍手をした。いろんなことがあったけど、とりあえず話がまとまってよかったなって思う。

 しかし花音ちゃんは、ちょっと疑問があるようだった。

「めでたいけど……いまの私は解釈違いなんじゃなかったの?」

「大丈夫です!」

 めいちゃんは、親指をぐっと立てながらウィンクをする。

「私、橘たちばなののかと山やまノの内うち花音の両推し──つまり、ののたん箱推しになったので!」

「ののたんって箱なの?」

 私がもっともな疑問を口にするけど、めいちゃんはご機嫌るんるんって感じで私をスルーして、ふむふむと顎あごをさすりはじめる。

「とはいえ、ビジュはあの頃が最高なんですよね……ののたん! 黒髪に戻しましょう! 私とおそろにしましょう!」

「私あっち見てくるねー」

「えぇぇぇぇっ!」

 歩いていく花か音のちゃんに縋すがるように手を伸ばすめいちゃんを、私は苦笑しながら見つめた。

「よかったね。推しと友達になれて」

「とっ、友達!? ……わわ、私と、ののたんが!?」

 恐れ多い、私なんて、靴でもなめますみたいな調子で言うめいちゃんに苦笑しながらも、私は微笑ほほえむ。

「違う? 友達の定義って難しいけど……私にはそう見えたよ」

「そ、そんな……」

 顔を赤くして、目を潤ませる。こういうところは素直でかわいいなって思う。

「ねえヨル! これなんかどうかな?」

 マイク売り場のショーケースの前に歩いていった花音ちゃんが、私に声をかけた。

「えーとね、マイクとオーディオインターフェースは最初は一万くらいのやつで十分だって、キウイちゃん言ってたよ」

「キウイちゃん?」

 私が花音ちゃんのほうに歩きながら返事をすると、戸惑いと、どこか熱を持った声が、私たちの耳に届いた。


「私と推しが、友達なんて──」


 見ると、めいちゃんはスマホを構えて、レンズを私たちに向けていた。花音ちゃんがにっと笑って、私たちは顔を見合わせる。二人で合わせて、いえーい、とピースをしてみせた。

「っ!」

 めいちゃんは目を丸くして、私たちを見る。カメラをインカメに切り替えたのだろうか、めいちゃんはスマホの画面をこちらへ向けると私たちに背を向け、白くて長い腕を精一杯、自撮りをするように斜め上に伸ばした。

 やがて鳴り響く、小さなシャッター音。

 同時に、心の底から幸せそうで嬉うれしそうな声が、私の耳に届いた。


「──解釈違いですっ」


 切り替わったスマホの画面。そこには友達になった三人が、笑顔で写っていた。