気がつき、支えようとする花か音のちゃん。転ばないよう体勢を整える私。なんとか転びはしなかったものの、おっとっと、とよろめいてしまい、やがて私はぽん、と花音ちゃんに受け止められた。

「ご、ごめん……ありがと」

「……」

「うん?」

 どうしてだろうか、私の感謝をスルーして、花音ちゃんの視線は黙ったまま下へ向けられていた。きょとんとその視線を追って──私は、すぐに理解した。

 靴くつ紐ひもがほどけて、靴が脱げて。


 ──私のクラゲの靴下が、露あらわになっている。


「うわぁぁぁああっ!」

 飛び退のいて、反射的に靴下を手で隠した。

「ち、違うの!」

 周りから『変』『かわいくない』と言われつづけていた靴下。ディスカウントストアで六割引の、不人気なはぐれもの。私の口からはつい、くせみたいに言い訳が飛び出す。

「これは……そう! 安かったから! 安かったから買ったってだけで……私は……!」

 けれどどうしてだろうか。

 花か音のちゃんは、子供みたいに目を輝かせている。

 やがて花音ちゃんは私の前にしゃがみこみ、私の頰ほおをぶにっと両手で雑に挟むと──


 全部を肯定するみたいに、くしゃっと笑った。


「いいじゃんそれっ! 最っ高にかわいい!」


 どうしてこの人はまた、私がいま一番欲しい言葉が、こんな簡単にわかるのだろうか。

 ずっと言いたかった。隠していて、でも本当は好きで、だからつらくてムカついて。

 だけどもう、隠すことはやめよう。


 私はただ、本音を言えばいいだけなのだ。


「──ほんっと、それ!」


 私は私が嫌いだった言葉を、今日だけは本音で全力で、ぶちまけるように言った。