夜の街を歩くのが好きだ。
知っている人がいない街をクラゲみたいにふわふわと漂っていると、いつもと違う、誰の目も気にしない私でいられるような気がして。カラフルなネオンのなかを歩いているだけで、なんだか自分まで、輝いた存在になれたような気がして。
秋の温度に変わった十月の
夜の十時。たぶんこの法治国家日本、十六歳の女子高生が歩くにはそろそろ遅すぎる時間になってきたけれど、こうして自分じゃない自分になる時間が、私には必要だった。
回遊魚みたいに
コテでふんわりと内巻きにした毛先を、夜風が揺らす。世界に
『──クラゲという生き物は、自分で泳ぐことができません』
小学四年生のとき、水族館で聞いた飼育員さんの説明を、私はときどき思い出す。
『自分の意志もなく、水に流されて漂ってるだけなんですね』
直感的に。
私ってクラゲに似てるなあと思った。
『太陽が届かない海の底では、光を反射することもできない、
自分で泳げなくて、流されてばっかりで。
特別になってキラキラ輝くなんて、もってのほかで。
だけどなんだか憎めないと思ったのは、漂う私がクラゲに似ていると思ったからで。
『ですが、クラゲという生き物は、とてもすごい特徴を持っているんです。それは──っ!』
そして──私がクラゲに似ているといいな。
そんなことを思えた、きっかけでもあったのだ。
