冒険者ランク昇格
ギルドに到着すると、奥からギルドマスターが出て来た。
昨日、クレスは気を失っていたため会っていないから卒業式以来初めて会うみたいだ。
「クレス、よくやったな。昨日、君のお父さんから話は聞いたよ。君がオーガロードを倒したのだと」
「お久しぶりです、ギルドマスター! ……ええと、実は無我夢中だったので、殆ど覚えていないんです。でも、何とか倒せたみたいで本当によかったです」
ギルドマスターからの称賛に、苦笑いしてそう答えるクレス。
謙遜しているというより、本当に朧げにしか覚えていないみたいだ。
「そうか。その華奢な体でどうやって倒したのか興味があったのだが……。いや、その話は今度ゆっくり聞こう。まずは、全員奥の部屋に来てくれ」
ギルドマスターは、そう言うと俺達全員を奥にある応接室へ呼び寄せた。
ここに入るのは、初めてだ。
「ここはな、ギルド職員以外は大きな功績を達成したものや、特別な依頼を受ける高ランク冒険者しか入れない。今回のお前達は前者だな。それで……」
俺達は、ふかふかのソファーに座りつつギルドマスターの話を待った。
ギルドマスターの隣には、秘書官だという美人の女性が座っていた。
色んな書類をギルドマスターに見せつつ、説明をしている。
「……そうか、なるほどな。分かった、ありがとう。じゃあ、話を続けるぞ」
そう言うと、俺達の方に向き直して話を再開する。
「まずは、今回のクエストの報酬だ。『ラ・ステラ』として受けているから、これはパーティーへの報酬だ。まずは『ゴブリンの集落の偵察任務』、次に『オーガの群れの討伐』、最後に『オーガロード討伐』となる。これにさらに提出した素材の買取金額を合わせると……」
「合わせると?」
俺はギルドマスターの勿体ぶった言い方に反応して、思わず聞き返してしまう。
その答えを、クレスもマリアもレイラも固唾を飲んで待つ。
「これが報酬金だ。ざっと金貨五十枚ってところだな」
「き、金貨が五十枚!?」
「えっ、本当ですか!?」
「わぁ、すごい金額ですね」
「え、ほんとギルマス!?」
俺が、クレスが、マリアが、レイラが目が飛び出そうなほど驚いてギルドマスターに聞き返してしまう。
金貨五十枚というと、馬を売って生活をしている俺の年収の十倍以上だ。
渡された袋の中身をさっそく確認した。
こういうのは、その場で確認するのが商人の原則だ。
……今は冒険者だけど。
さっそく商家の娘でもあるレイラに金貨を数えて貰った。
「……うん、間違いなくあるわ。久々にこんな数の金貨を見たかも」
「しかし、いくらオーガロードとはいえ、すごい金額だな」
俺からすれば、とんでもない金額だ。
こんな金額を一回の報酬で貰えるなら、冒険者になりたいと言う人が増えていくのも分かる。
ただ、常に命を賭ける仕事でもあるので、ある程度高くないと割に合わないというのもあるのだが。
「脅威度Bランクの討伐依頼の達成なら、そのくらいが当たり前になる。普通はかなりの準備が必要だし、その分費用がかさむ。しかも、下手をすれば一か月くらいかかる場合もザラにあるんだからな」
「それでも、ここまで貰えるとは思ってなかったですよ」
「今回のは、特に討伐したことが大きい。お前達が討伐していなかった場合、近隣の村や町への被害はそんな金額じゃ収まらないだろう。それに人的被害も想像したくないほど出ていた可能性がある。寧ろ、安いくらいだろうな」
なるほどな。
あのオーガロードが外に出て、近隣の村や町を壊滅させた場合の被害総額は計り知れないものになるだろう。
しかもそこには街道もあって、商人達が通る道にもなっている。
もし封鎖されてしまった場合、ものの行き来が途絶えてしまうだろう。
それを考えたら金貨五十枚なんて、大したお金じゃないということなんだろうな。
いや、俺達からしたらすごい大金には変わりないけどな。
「そういうことなら、ありがたく受け取らせて貰いますよ」
「ああ、そうしてくれ。さて、本題はコッチだな」
ギルドマスターはそう言うと、四つのギルドタグをテーブルに並べた。
銀色に光るそれらは、パーティー用のギルドタグと個人用のギルドタグが一緒になっている。
そして、一つだけ色が違うものがついているタグが置かれていた。
それを手に取り、クレスの方に差し出した。
「まずはクレス。これまでの功績と今回のオーガロードの撃破を評して、正式に『Cランク冒険者』として、認定する!」
「ええっ!?」
「おおーーー!」
クレスが突然のランクアップに驚き戸惑う声をあげると同時に、俺達は驚嘆する声をあげた。
「流石、俺の娘だ! クレス、やったな!」
「すごーい、クレスやるじゃない!」
「クレスはいつも先に行ってしまうんですね。でも、私も本当に嬉しいわ」
三人が三様の称賛を送る。
クレスもそれに照れながらも、『うん、皆ありがとう』と言葉を返すのだった。
そして、ギルドマスターからギルドタグを受け取る。
「三人もランクアップが承認されて、Dランク冒険者になった。つまりウードさん、あんたも今日からDランク冒険者に認定されたんだ。これは困難な状況で、三人を無事に連れ帰ってきたことを評価してのランクアップだ。これからも上を目指して頑張れ……、なんて言わないからな? どんな時も無事に全員を連れて帰って来てくれ。頼んだぞ?」
「本当ですか!? ありがとうございます! 言われなくても、絶対に生きて帰ってくるよ。もちろん、全員一緒にね」
「ああ、期待しているぜ、『遅咲きのルーキー』さんよ」
どうやら