そこで衝撃の事実を知った。
およそ一か月前にお父さんが野盗に襲われていたのも衝撃だったけど、そこで野盗の一員でもあったキールを保護したらしい。
最初は少し反抗的だったみたいだけど、キールはエースにボコボコにされたので反抗する気力は削がれたとのこと。エースってとっても力が強いから、私でも捕まると逃げられないからなぁ。ちょっと同情するよ。
でもそのあと、町の警備兵に突き出されて処刑されると思っていたら、お父さんに村に連れて行かれて『野盗に襲われていた迷子を保護した』とお父さんが村人に説明したのを聞いてびっくりしたみたい。
村人が『また迷子を拾ったのか! ……じゃあ、最後まで面倒頑張れよ』と何も疑うことなく話が進んでしまい唖然としたらしい。
それよりも、本当に自分を守ろうとしてくれたお父さんに感謝しているみたい。
「旦那様は、真面目に働けばいっぱいご飯を食べさせてくれると約束してくれて、本当にいっぱい食べさせてくれたんです。あの日まで、お腹いっぱいに食べたことなんてなかったから……。思い出すだけでも涙が止まらないです」
そう言うと本当に大粒の涙を流しながら、お父さんに何度もありがとうと言う姿を見て私も泣けてきちゃった。
考えたら、私もお父さんに拾って貰ってなかったら、きっとあの森で飢え死にしていたんだろうな。
キールの境遇を自分と重ねてしまい、他人事に感じられなかった。
「それでな、一応丁稚として雇っているから衣食住は用意している。まぁ、なんだ同じ家に住んでいるんだから家族みたいなもんだけど……」
そこで、ずいっとお父さんはキールに顔を寄せて。
「クレスに変なことをしたら、追い出すくらいじゃ済まないからな?」
と鬼のような顔をしながらキールを脅してた。
気圧されたキールは、さっきとは違う涙を浮かべてコクコクと何度も頷いていた。
「うう、普段は厳しくも優しい旦那様があんな顔をするなんて、思ってもなかったよぅ」
「もう、お父さん。心配してくれるのは嬉しいけど、キールが可哀そうだよー。大丈夫、基本は優しい人だから怖がらないでいいからね?」
「うん、ありがとうクレス姉ちゃん!」
こうして、予期しない形で新しい家族が増えたのだった。
キールはとっても真面目で、最初にお父さんにナイフで向かっていったとは思えないほどだ。
朝は誰よりも早く起きて動物の世話を始めて、それが終わるとすぐに薪割りをする。
薪割りが終わると、今度は森の浅いところで薬草や山菜などを採っていた。
あんまりにも頑張っているから、無理しないでねと言ったら。
「この一か月で、旦那様に色んなことを教わったんだ。自分でやれることがいっぱいあるなんて誰も教えてくれなかったから、すっごい楽しいんだよ? 無理なんてしてないよ!」
と笑顔で返ってきた。
こんないい子を
お父さんが町の警備隊に引き渡し、そのあと処刑されてしまったみたい。
結末がそうなってしまったのは仕方ないことだと思う。
それでも、この子がお父さんに出会えてよかった。
もし、別の人に助けられていたら、きっと孤児院に預けられていただろう。
孤児院が悪いわけじゃないけど、それでもここよりもよほど過酷な生活をしないといけない。
そう考えると、お父さんに見つけて貰えて幸運だと心から思う。
ちなみに、迷子の届け出はしてあるが、彼を迎えに来る親はいないらしい。
もしかしたら、もう亡くなっているか、遥か遠くの国の人なのか、もしくは彼を売ったか……。
貧乏な家では、末の子を身売りするのは珍しいことじゃないらしいし。
もし、そうだとしたら、この村で幸せに暮らして欲しいと思う。
「そうだ、キールは文字の読み書きは出来るの?」
「ううん、全然出来ないんだ。誰も教えてくれなかったから……」
「そっか、じゃあ私が教えてあげようか?」
「本当!? うん、お願い!」
「よーし、じゃあこれが……」
こんな感じで、夏休みの間はキールとまるで本当の姉弟のように過ごすことが出来たわ。
ちなみにキールは丁稚という扱いだから、お父さんのことを暫くは『旦那様』と呼んでいたのだけど、村の人から『なーにが旦那様だよ、偉そうに! ウード、もうお前が父親みたいなもんだろうが。キールも〝父さん〟って呼んでやれよ』と冷やかされたので、そのあと暫くしてからキールも、〝父さん〟って呼ぶようになったのよ。
ちょっとお互いに照れくさそうにしてたのは、今でも微笑ましい思い出だよ。
こうして、キールは私の弟になったのでした。