電子版あとがき
どうも、アサウラです。
この度は電子書籍版『バニラ A sweet partner』をお買い上げいただき、ありがとうございます。しばらく絶版状態が続いていた本作が、こうして今一度皆様のお手元にお届け出来るということは本当に喜ばしい限りです。
本作は私としましても非常に思い入れのある作品です。大学生として卒業を控えたあのタイミング――学生と社会人という非常に曖昧な立ち位置だったからこそ書けたものだと思っています。子供と大人、それぞれの視野の違いや物事のとらえ方、そして話の作り方等々……今書くと恐らくまったく違うものになってしまうことでしょう。
そういった意味で良くも悪くもバランスが取れていたことで、読んでいただいた方によっては物語の感じ方に大きな違いが出るという大変興味深い結果が出ていました。
当時頂いたアンケート葉書をみますと、読み手の性別によって意見が変わり、また同様に年齢(大体二十歳に境界線がありました)によってもケイとナオか、中谷と元川のどちらに感情移入出来たかがはっきりと別れておりました。皆様はいかがだったでしょうか?
それはそうと冒頭でも書きましたが、本作は絶版状態が続いていたわけで……まぁ、要はろくに売れなかったわけなんですが、当たり前といえば当たり前で、ラノベといえば学園ラブコメみたいな雰囲気が漂い出した時代にコレですからね。そりゃ無理があるってものです。
時代に乗せようとしていたのか、本作の執筆に入る前に担当編集様が「とりあえず学校を出せ、学校を」と強要してきたので、とっても素直な良い子だった私は学校を舞台にした本作の狙撃シーンを書いたんですが、そうしたら「そういうことじゃねぇ!!」と怒られる始末。何も間違ったことをしていないのに、怒られる。世界の理不尽さを体感した瞬間でした。
また、売れていれば……という捕らぬ狸の何とやらとはいえ、実は続編の構想もありました。
そのタイトルもずばり『Re:バニラ』。冒頭が中華料理屋でレバニラを食べる中谷と元川から始まるという大変ドラマチックな展開!! どうです、ワクワクしてくるでしょう? その後は本作でちょっとだけ出てきた面々、そして再びケイとナオの物語が展開していく予定だったのですが……。何かの間違いで続編を書ける機会に恵まれれば、皆様の元に異様にレバニラが食べたくなる作品をお送りしたいと思います。
話は変わるのですが、本作はSD文庫としては非常に珍しく女性読者に恵まれた作品でもありました。アンケート葉書の半数が女性というのは例がないことらしいです。きっとシトロネットさん(高山瑞樹さん&曽我部修司さん)の素晴らしいイラストのおかげでしょうね。
そういえばこれにもいろいろありました。是非ともイラストはシトロネットさんにお願いしたい……ですが新人の分際で絵師様を指定するなど言語道断というもの。さすがに友人の披露宴に『服装自由』とあったので、私服にセガサターンのマスクを被って行ったら全員がスーツとドレスで、マジで焦ったりする非常識な私とはいえ、担当様に要望を出すのは憚られました。
なので『今こういう人がいるんですよ! 凄いですよね!』『これとかもう最高です、大好きなんです!』『この絵とか、凄くないですか? いやぁ最高ですよ』というメールを日夜大量に送りつけて「わかった……わかったから、もう送るな」と、極自然に担当様の意識を誘導することに成功したのも、今となってはいい思い出です。
また思い出といえば、初めてファンレターをいただいたのもこの作品。何を血迷ったのかクソ貧乏なのに鰹節を大量に使って、うどん用のいい出汁を作っていた時にファンレターが転送されてきたんですよ。あまりの嬉しさに気が動転したまま、いい色と香りが出た出汁から鰹節をこそうとしたんですが……流し台にザルを置き、そこにザパーッとやらかしましてね。淡い黄金色の汁が全て排水溝へGOしていく絶望的光景は今でもアリアリと思い出せます。
さて、今一度の謝辞の方をば。何年経っても褪せることのない素晴らしいイラストを描いてくださったシトロネットさん、電子出版にあたりご尽力いただきました集英社の皆様、ありがとうございました。皆様あっての作品でした。
そして、最後までお読みいただきました大勢の皆々様、この度は本当にありがとうございました。今後ともどうかよろしくお願いいたします。
では、また皆様にお会い出来ることを祈りつつ……それではまた!
アサウラ