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一時間たっぷりと過ごした後、あたしたちは駅に向かった。別に帰るわけではなく、そこの五〇〇円もする大型コインロッカーに預けてある旅行用のトランクケースを回収しに行くためだ。中身は残っていた貯金全額に加え、あたしのタカミライフルや二人の着替え。
あの女とパパを殺したとなると、恐らくあたしの家は警察にすぐバレるだろうから、あらかじめ用意しておいた処置。
そういえば何故あの時テラスに昇ってきた警察はあたしの名前を知っていたのだろう? 駅の人込みの中を歩きながらナオに訊いてみるも、彼女もまた首を捻った。まぁ、遅かれ早かれ警察にバレるのは覚悟していたから、少し不気味だけれど別にいいといえば、そうなんだけれど。
うまくいくはずだ。うまく、やれるはずだ。あたしたちなら。
……だがそんな自信は、改札近くに設置されたロッカーが見えてきたと同時に打ち消された。改札口の前には普段こんな所で見るはずのない制服警官が二人立っているのだ。しかも手には何やら紙。彼らはそれを見ては明らかにまばらに行き交う人々の顔をチェックしている。
よく見ればその紙には黒髪を伸ばした女……あたしだ。どう考えたって、早すぎる。
あたしの名前を知っていたあの現場に駆けつけた中年警察官といい、この制服警官といい、まるで行動を読まれているかのようだ。自然とあたしの手はナオの手を握る。
制服に着替えてはいるがこのまま彼らの目の前でロッカーを開けるのはリスキーだろうか。
まずいな、ちょうど電車が来た直後のようで改札を通る人間にしか目を配っていないからいいようなものの、人の流れが一段落してしまうとこちらにも視線が向けられるかもしれない。あたしはナオの手を取ると一度駅を出ることにした。さりげなく振り返って見てみると彼らはどうも小さい子にはあまり目を配っていない。あの時マスクをしていたナオは大丈夫のようだ。
ならあたしは外で待ってて、ナオに荷物を取ってきてもらおうかな。でも、電車に乗れないとなると移動手段は大分削られてしまう。タクシーで隣駅まで行こうか。
ケイこっち、とナオはあたしの手を引っ張ってトイレに引っ張り込む。
「な、なに?」
「今、お巡りさんが正面から来てた。見えなかった?」
あちゃ……。巡回している人までいるんだ。身動きが取りづらくなってしまったな。
「とりあえずナオは大丈夫みたいだから、問題はあたしか。……一番目立つのは、やっぱりこの髪だよね」
トイレ内を見渡して誰もいないことを確認しつつあたしが言うと、ナオが後ろ向いてと言ろので素直に従う。すると彼女はあたしの後ろ髪を三つに分け、それを編んでいってくれる。