水流の壁が解き放たれ、華凛と天狐が回転しながら高速で突き進んだ。

「喰らえぇええええっ!」

 凄まじい速度で加速する二人、突進してきたギルマンと正面衝突する。

 華凛の手に握られた巨大なドリルは狙い通り、ギルマンの額の傷を直撃した。

「ドリルが……!」

 しかし、それでも強固な頭蓋を割ることは出来ず、ドリルに ひび が入る。

「まだじゃ! ドリルは、ドリルは決して負けはせん! ドリルは最強なんじゃああああああああ!!!」

 シェンフゥが無数の氷狐を走らせ、妖術でドリルを補強していく。

 さらに巨大化したドリルを渾身の力を込めて突き立てながら、リサも吠えた。

「いい加減に、くたばりなさい。この、ウナギやろおおおっ!」

 ドリルに狐火を纏わせ、リサが全身の力を二本の腕に込める。

 共鳴は二人を熱く包み、ギルマンとの接触面を狐火で あぶ りながら回転するドリルは、遂にギルマンの頭蓋を軋ませ、先端が埋まり始めた。

「「いっけぇぇぇぇええええええ!!!」」

 二人の叫びが重なり、互いの共鳴が極大となる。

 巨大なドリルは遂にギルマンの硬い頭蓋を破り、その脳髄を突き抜けて破壊した。

 褐色の血と 脳漿 のうしょう を噴き上げながら、ギルマンの頭部が吹っ飛び、司令塔を失った身体が激しく痙攣する。

 回転を止めた天狐は、華凛の腰に抱きついたまま、水中へと没していくギルマンを見届け、漸く声を発した。

「やったぞ! わしらの勝利じゃ!」

「本当にギリギリだったわね。でも、なんでドリル……」

 荒く息を弾ませながら、リサが肩で息を吐くように呟く。

「ふっ、なんだかんだ言いながら最後はおぬしも熱くなっておったではないか。これで、おぬしも立派な螺旋の戦士じゃな

「いや、だから螺旋なんとかはわからな——」

 話の途中で、リサの音声が途切れ、シェンフゥは華凛の正面に回って操縦槽を覗き込んだ。

「ご主人? どうしたのじゃ?」

「…………」

 リサの応答はなく、華凛の目も光を失っている。

「しまった、もう三分を超過しておる」

 その重大さに気づいたシェンフゥが華凛を抱きかかえ、急浮上を試みる。

「……ち、力が……」

 ドリルに全エーテルを注いだことで、思うように浮上が叶わない。

「くっ、このままでは……」

 呻きながら搭乗扉をこじ開けたシェンフゥは、リサを優しく掴んで持ち上げ、いち早く水面へと出した。

「リサ!」

 手のひらを開いてリサの名を呼ぶが、応答がない。

 ぐったりと手のひらに横たわるリサに、シェンフゥは祈りを込めてもう一度叫んだ。

「————!!」

「……、……っ、げほっげほっ」

 飛び起き、激しく咽せながら、リサが巨大化したシェンフゥの手の中で目を覚ます。

「無事で何よりじゃ、ご主人」

「……ありがとう、シェンフゥ」

 水面に顔を出した天狐の鼻先に、手のひらの上のリサがそっと近づいて口付ける。

 二人のその姿を照らすように、雲間から朝焼けが差し込んでいた。

 リサとシェンフゥの連絡を受けた聖騎士団の小舟が、次々と客船に近づいてくる。