温かい。

 なんというか、背中がとっても温かい。

「ん……んぅっ」

 いきが、首筋にかった。

 くすぐったいけど、温かい。

「んっ、ん─────」

 身じろぎして、より強く、まくらの要領で抱き付いてくる。

 りようすけはそっと顔を上げた。

 月夜に桜の花がっている。

 こんなれいな夜桜の下で良介は、一級しにがみであるリサラ・レストールと厚手の毛布にくるまっていた。

 振り返るとすぐリサラのがおがあるくらい、きんきよだ。下には、明日あしたの花見に向けて用意したビニールシートがいてある。

 この公園は、あさ町でも有数の花見スポットなのだ。

「んふふふ

 なんでかうれしそうにリサラがより強く、背中に抱き付いてくる。

 ない、貧しい、残念と、散々言われているリサラのおっぱいが、やわらかさと幸せをしっかりと背中に伝えてくる。

 当然と言えば当然だった。

 だって、良介の視線の先には、リサラのブラジャーが転がっているのだから。

 幾らリサラのおっぱいが残念といったって、ノーブラなのだ。

 良介の背中にダイレクトにおっぱいが吸い付いてくる……。

「う、うゔ……」

 良介は泣いた。

 このじようきようで何も出来ない。体がまともに動かないのだ。

 めずらしく生きる力は元気で、あっちはしっかり反応している。なのに、出来ない。手出しがいつさい出来ない。

 良介には、ただ泣くことしか出来なかった。

 そうこれは、今日の昼から起きた悲劇だった。


    ※   ※   ※


「明日は日曜日だしさ、花見でもしないか?」

 それは、良介の何気ない提案から始まった。

 四月の足音がすぐそこに聞こえそうな春の土曜日のことだ。正午の教室は、春のしを浴びて温室のようにポカポカしている。

 窓から校庭を見れば、あと一~二週間もたずに新入生をむかえ入れる桜の木もかなり花をかせてしまっていた。

「またとうとつね」

 りちに教科書やノートを机から出してかばんに入れていたリサラが、ちょっとおどろきの表情を浮かべて振り返った。

 赤く長いかみが、サラサラとかがやきながらたなびく。

 スラリとした長い手足、キュッとまったウエスト、少しキツめに整った顔立ち、可愛かわいいというよりも綺麗という言葉がぴったりな美少女、それがリサラという死神だ。

 ただし、胸はかなしいまでに真っ平ら……。

 そのリサラが、整った顔にしんさをのせて良介を見た。

「いきなりどうしたのよ」

「なんだよ、俺が花見を言い出しちゃおかしいか?」

 少しねた口調で返した良介に、リサラがなおうなずく。

「ええ。良介はどちらかと言えば、花より団子だと思ってたもの」

「失敬な。俺が一番好きなのは、女の子っていう花さ」

 キラリと白い歯を見せて、良介はかっこつけた。

 が、無視だ。

もどう?」

「え、もう行くことに決まったの?」

 リサラに声を掛けられた美菜が、眼鏡の下の目をパチクリとさせる。こちらは、リサラとちがって地味な印象が強い。

 ただよく見れば、眼鏡の下にかくされた顔は、おっとり系の美少女と断言出来る。そして何よりも、良介達が通うももぞの学園でもトップスリーに入るきよにゆうの持ち主なのだ。

 まさにいつざいだが、おさなみの良介としてはあまりに距離が近すぎて、あまりヨコシマな気持ちになれない困った相手でもある。

「ええ。良介にしてはまともでステキな意見だし、何より私は人間界で花見なんてしたことがないもの。折角だから楽しみたいって思うのがつうでしょ?」

「そっか。うん、それもそうだね」

「お弁当は私と美菜が、それぞれ作りましょうか」

うできそうの?」

「まさか。二人が別々に作った方が、バリエーションがあっておもしろそうじゃない」

 リサラが、ちょっとぎよう悪いものの机の上に座って足を組む。

「問題は、どこで花見をするかよね。美菜はいい場所を知ってる?」

 発案者の良介を完全に放置して、リサラと美菜の間で花見の計画がみるみる出来上がっていく。

「良介くんの家の近所にある公園は、かなり綺麗かな。ただ……」

 言葉を切ってやや難しい顔をした美菜に、けいはくな声が掛けられる。

「あの公園、んじゃうんだよねぇ。いい場所を取りたいって思うと、ちょぉっと大変なんだよなぁ」

 ぬすみ聞きしていたふくむねイリアが、首をっ込んできた。

「でもでも、花見をしたいってのは、イリアもだいだい、だーい賛成

 おおぎように両手を広げて、イリアがパチンとウインクをする。その動きで、げんえきグラビアモデルとしてのテクニックなのか、彼女まんの巨乳が不必要なまでに大きくれた。もっとも、その胸はリサラに勝つために仕込んだにせちちなのだが……。

「イリア、言い当ててあげましょうか?」

 リサラが冷たい視線をイリアに投げかけた。

「え……な、なぁに、リサラちゃん」

「私と美菜が作るお弁当が目当てなんでしょ」

「ゔ……」

 イリアがものの見事に言葉にまる。弱小死神組織メルロー人生保障の幹部であるイリアだが、はつきゆう過ぎて……とてもこんきゆうしている。グラビアモデルでかせいでいる賃金も、メルローの活動資金になっているとか、いないとか。

「あ、あのね、美菜さん。イリアってばここ数日、パンの耳カレーライスしか食べてないのぉ。お願いだから、さそってよぉ」

 リサラ相手では分が悪いと判断したイリアが、美菜にすがった。

「……あの、パンの耳カレーライスってなに?」

「コンビニで賞味期限ギリギリのレトルトカレーを買ってきて、三週間前に無くなったお米の代わりに近所の屋でもらったパンの耳を小さく千切って使ったものです」

「え、ええと、要するにパンの耳をご飯の代わりにしてるってこと?」

「うん。あらでも、意外にしいんだからねぇ」

「ま、まぁ、シチューだってフランスパンに合うし、美味しいとは思うけど……あ、あはははは、リサラ。連れて行ってあげようよ」

 あっさりとイリアのこんがんに折れた美菜が、リサラの顔を見上げた。

「ったく、美菜がそういうならいいけどね」

「やったぁ!」

 パァァァァっとイリアの顔に、かんが広がる。そんなやりとりを、取り残されちゃってぼんやりながめていた良介は、ふと思った。

「あのさ、ちょっといいか?」

 声を上げた良介に、リサラ達の視線が集中する。

「公園が混雑するって件はどうなったんだよ」

 言いながら、良介は例年の混雑ぶりを思い出していた。確かに混雑するのだ。うえ公園やかしら公園といった花見のメッカほどではないが、桜の木の下なんて場所は、基本的に前日からでないと取れない程度には混雑する。

「…………」

 混雑問題を提起し、提起しながら思い起こしつつ、良介は観念していた。

「分かったよ。リサラと美菜の腕によりを掛けた弁当が食べられるんだ。夜通しの場所取りは俺がやる」

「いいの、良介くん?」

 すまなそうな顔を美菜がするので、良介は思わず微笑ほほえんだ。

「俺がこういうしようぶんだってのは、小さいころから知ってるだろ」

「うん、そうなんだけど……ごめんね」

「謝るなって」

「うん」

 しゆしように美菜が頷く。そんな美菜と違ってリサラは、さも当然といった顔だ。

「何よ?」

 ジロリとリサラが良介を見返した。

「いや、別に」

「……ま、春近しといってもまだまだ寒いから、を引かないように厚着していきなさいよ?」

 そう言うとリサラは机から降りて、鞄を取った。そしてり返ることなく、

「これ以上ないくらい、その舌とおなかを満足させてあげるから」

 ぶっきらぼうにリサラは宣言したのだった。


    ※   ※   ※


 春が近いとはいえ、夜はまだまだはだざむい。

 ぶっちゃけ、太陽が出ていなければ三月はまだまだ冬と同じだ。というわけで、夜の公園は冬だった。

「寒い……」

 運良くせんゆう出来た桜の木の下にブルーシートをいて、良介は座っていた。

 場所を探していた時やブルーシートを敷いていた時は、まだ良かった。人間、体を動かしているだけで少しは温まる。

 それらの作業がすべて終わって、ここに一人座っていると、みるみる体温をうばわれてしまうのだ。

「寒い……」

 もう何度目になるか分からない単語を良介がいた時だ。

「おーっす!」

 いきなり声をけられた。ギョッとして、縮こまっていた体から引きはがすように顔を上げると、そこにいるのはメルロー人生保障の四級しにがみにしてイリアの部下であるパオイ・マルベックだった。

 普段はせんじよう的なボンテージ姿だが、マルベックもやっぱり寒いらしく、カーゴパンツにダウンジャケットを着ている。

 ただ……。

「うぃぃぃ、ひっく。ウチのイリア室長がさぁ、良介くん一人じゃひどいから行けって、ぷはぁぁ、気分良くんでたのに命令しやがったわけよぉ」

 出来上がっていた。

 どうやら居酒屋からの直行らしい。しかも右手にはコップ酒、左手にはお酒やつまみが入っていると思われるコンビニのビニールぶくろだ。

「あ、これぇ?」

 良介の視線に気が付いたマルベックが、よろけながら袋を上げた。

「ほらぁ、桃園学園の臨時講師もやってるじゃない?」

 ただのっぱらいではなく、死神けいやくの解説など授業を受け持っている先生だったりする。

「お給料のほとんどはさぁ、メルローとイリア室長に取られちゃうんだけどねぇ。少しはへそくりしてるってわけぇ、えへへへぇ」

 ケタケタ笑いながら良介のとなりに、たおれ込むようにして座ると、ぐでぇと寄っかかってくる。

「もーさー、呑むだけが生きってヤツなわけぇ。男もいないしさぁ」

 外見ねんれいからすると間近なマルベックだ。

「お、そうだ。良介くんも呑む呑む? 呑んで、じゆうと化してお姉さんをおそったりしないのぉ?」

 さらに、でろーんと寄りかかってくる。

 ダウンジャケットしでも、マルベックのおっぱいがふくよかなのが分かる。それは、リサラ──はなかった、美菜のおっぱいと違って、良く言えばれてどこまでもやわらかい、悪く言えば張りが無く垂れている、そんなかんしよくだ。

「いやあの、そんなに酔うと……今夜ここでとうするような」

 良介の忠告なんて、アルコールけになったマルベックの脳みそには、まったく欠片かけらも届かない。そのしように、返ってきたリアクションは、一人で勝手にぐずぐずと泣き出すというめんどくさいものだ……。

「うわぁぁぁぁんっ、エロすけにまで無視されたぁ……うう、ちくしょう、呑むっ、もっと呑んでやる! おらぁ、呑むぞーっ、呑むったら呑むぞっ、イリアの腹に入る金なら、こっちで全部呑んでやるろぉぉぉ!」

 へそくりを飲みしろではなく、食費に回した方が……そう切実に思う良介だった。


    ※   ※   ※


「な、何なのよ、あれ……」

 しげみの中で、リサラはつぶやいた。

 別に好き好んで茂みに入っているわけではない。寒くて退たいくつしているだろうからと、差し入れの夜食とカイロを持ってきたところ、良介が何やら女性にき付かれているのを見てしまい、つい、か自分でも分からないけれど、茂みにかくれてしまったのだ。

 ついでに、何故か自分でも分からないけれど、そのまま茂みで良介と女性をかんし続けている。

「……ええ、自分でもホント何故か分からないんだけどね」

 だれに言うでもなく、自分で自分にじようきようを言い聞かせるリサラだ。

「って、なんだ……マルベック先生じゃないの」

 ようやく、良介にからんでいるのがマルベックだと分かり、リサラはホッと胸をなで下ろし、かけて顔をブルンブルンと振った。

「別に、相手がどうとか、誰とか、どうでもいいことだし。でもまぁ、結局良介はまだ寒い夜空の下に一人だけってことよね。マルベック先生は、なんだか一人で酒盛りしてるし」

 良介がいつしよに呑んでくれないと判断したマルベックは、確かに一人で飲んでさわいで……典型的な酔っぱらい行動をしている。

 良介は、そんなマルベックに再び巻き込まれないように、少しはなれて、ひまそうに星を眺めていた。

「まーしょうがないわよね。うん、このやさしい私がやっぱり差し入れを──」

 ブツブツ独り言を言いながらリサラは立ち上がり、再びしゃがんだ。

 だって、誰かが良介に近寄っているのだ。

「いや別に、私がわざわざ夜食を作って差し入れするのがばれたって、そりゃ問題ないんだけど、でもほら………………」

 リサラが考え込む。

「あ、そうそう。でもほら、まるで私が良介に使われているみたいで、ちょっとしゃくにさわるじゃない。それに良介だって、私みたいな女の子を使うおうへいな男だなんて思われたくないだろうし」

 うんうんと、なつとくいったのか何度もうなずくリサラだ。

 ただリサラがそんなことしている間に、新たなひとかげはもう良介とせつしよくしていた……。


    ※   ※   ※


「良介くん」

 いきなり名前を呼ばれて、良介は思わずね上がってしまった。あわてて振り向くと、そこにはよく見知ったおさなみの姿が、星空をバックに立っていた。

「……美菜か」

「うん、私です」

 ニコニコと笑いながら美菜が、良介の横に座る。両足を横にずらして、ブルーシートにぺったんと女の子座りだ。

「何しに来たんだよ?」

「来たらダメかな?」

「そりゃそうだろ。夜中に女の子が一人で歩くなんて、不用心にもほどがあるぞ」

 けいたい電話のデジタル表示は、もう二十三時を刻んでいる。立派な夜中だ。

「心配してくれるんだ」

「当然だろ。ってか、昔っから美菜は、どんくさいっていうか、危なっかしいからな。いつだって心配してきたぞ」

「ブランコから落ちたり、すべり台の階段をはずして落ちたり?」

 美菜が良介の顔をじっと見て、微笑む。特に意識している相手でなくても星空の下、並んで座っている女の子にじっと顔を見られたら……ドキドキしてしまう。

「…………」

「……ん?」

 美菜がしようしながら、だまった良介の顔を「どうしたの?」って顔で見る。ずかしい。ものすごく照れくさい。

「あ……いや……」

 良介は、気恥ずかしさから全力でげるためにも慌てておくの底をり返した。

「そ、そうそう。あと犬にえられて、おしっこらした時とかさ。確か、あの時に飛び込んだトイレって、ここの公園の公衆トイレだよな」

「…………はぁ」

 いきなり美菜がため息をく。

「な、なんだよ」

「こんな時に、よりにもよってそんな思い出を言わないでいいと思う……」

 非難がましい目をされてしまった。

「わ、悪い……」

 頭をいて謝った良介に美菜が、微苦笑しながら袋を差し出す。

「はい、これ。差し入れ」

「え?」

「コンビニで買ったおにぎり。もう、おなか減ってるかなって思って」

 場所取りのために良介は、夕方四時に食事をした。あれからもう七時間はっている。

 ──グゥゥゥゥ。

 てきされると、なおに反応する健康的な胃袋だ。

「ありがとな」

「いいえ、どういたしまして」

 おにぎりを食べ出した良介に、美菜がうれしそうに笑ったが、同時に背後から声が飛んでくる。

「はいはい、アピールタイムは終わりですわよ」

 キュール・ゼリアだ。

 フワリとくりいろでウエーブが掛かったかみく。

 リサラの従妹いとこの死神で、お人形のような可愛かわいらしさを持った少女だ。ただし、いささか腹黒い。

 それを証明するかのように、いつの間にかひっくり返っているマルベックを、ペイッと横に押しやってしまう(半分ブルーシートから落ちた)。そして空いたスペースに、美菜とは逆側の良介の隣に座る。

「いい星空ですわね。明日あしたはきっと晴れですわ」

 かなり寄りうようなきよで……。


    ※   ※   ※


(ああっ、キュールまで……な、何をしてるのよっ!)

 リサラはさけんだ。心の中かつ茂みの中でだ。

 当然、良介達にはそんな叫びは届かない。

(ゔゔ……私も中に混ざろうかしら。で、でも、美菜がもう夜食の差し入れしちゃったみたいだし、今から出すのってなんかけよね……)

 自分の荷物をにぎりしめ、リサラは深くなやむのだった。

 良介の姿をじっと見ながら……。


    ※   ※   ※


「キュール、お前まで来たのかよ」

「ニュアンスがみようちがいますわね」

 キュールがしやべっている間に、一緒に来ていたカエサルが、柔らかくて座りやすかったのかマルベックの腹の上におしりだけ乗っけてあしを前にほうり投げる。ぐぐぐっとマルベックがうなるが、誰も気にしない。

「キュールとカエサルと美菜さん、三人一緒に来たんですわ」

「え、そうなのか?」

 美菜を見ると、うんと頷く。

「カエサルがいれば、安全でしょ?」

 良介の家の番犬にして、朝ヶ谷町内犬社会の頂点に立つジャーマン・シェパード、それがカエサルだ。

「ま、アイツがいればな」

「キュールもいるんですけれど」

 おもしろくなさそうにキュールが、ほおふくらませる。まだ見習いしにがみのキュールだが、その実力は、転がっているマルベックを優に上回るものだ。

「キュールの強さは言うまでもないからな。でも、美菜を送ってきてくれてありがとな」

 良介がそうフォローすると、キュールがさらにむすっとしてしまう。

「キュール?」

 良介がキュールの顔をのぞき込んだ時だ。ペタッと頬に何か押し付けられる。

「あっつっ!」

 熱い。すっごく熱くて、良介は慌てて顔を引っ込めた。

「あはははははははは」

 何かを押し付けたキュールが、嬉しそうに笑い声を上げる。

「なにすんだよっ!」

「はい、差し入れですわ」

 ぶくろをした手がびて来た。両手でしっかりとかんコーヒー(HOT)を握っている。

「え、これ、俺に?」

「だって寒いでしょう?」

「あ、ああ」

 コクンと頷いて良介は缶コーヒー(HOT)を受け取り、すぐに熱くてお手玉してしまった……。

「あっつ、あちぃっ」

「学習能力を身につけた方がいいですわよ、まったく」

「ほらでも、裏表無いっていうか、素直に行動するタイプだから良介くん」

 あきれた顔をしたキュールに、美菜がフォローを入れる。

よつきゆうにストレート、つまりケダモノってことですわよ、それ」

「悪かったな……」

 手袋を持ってない良介は、缶コーヒーを持つためにそでを手の平まで伸ばした。

「いやでも、温かいものはマジでありがたいな」

「あら、でしたらお礼は行動で表して欲しいものですわね」

「行動って言われてもな……ええと、かたでもめばいいのか?」

「もっと簡単なことですわ。そうですわね、この寒空の中を歩いて来た女の子はどうなると思います?」

「どうなるんだ?」

 分からずに美菜に聞いてみた。

「え……ええと、くしゃみが出る? はっくち」

 ホントにくしゃみが出てしまった美菜だ。

「いや、それはキュールが言いたいことと違うんじゃないかな……」

「あら、しいですわよ」

 キュールが答える。

「…………ますます分からないぞ」

「まったく。いいですか、女の子ってのは寒さに弱いんですのよ?」

「はぁ」

「つまり、寒空の中を歩いた女の子の体は冷え切っているってことですわ」

「なるほど」

 そこまでは理解出来ても、ならそのために何をすればお礼になるかが良介にはさっぱり分からない。