~独身死神は妄想が得意~


「室長、今のって全部室長の妄想ですよね」

 ノートに書きつづっていた手を止めて、イリアが顔を上げる。

「え……あれぇ、イリアってば声に出してしやべってた?」

 マルベックの言葉に、イリアは思わず口に手を当てた。全く欠片かけらも意識せずに喋ってしまっていたのだ。

「まぁ、私が知っているはんで言えば、本当にありそうな妄想というか、ある意味かんぺきなシミュレーションでしたけれど」

 ノートについつい書いてしまったイリアの妄想をながめつつ、マルベックがたんそくする。

「もういっそ、これも報告しちゃいましょうか」

「うーん、そんなに完成度高い?」

「ええ、見てきたようなってのは、まさにこのことですよ。たまくんとおおひらくんとの会話の辺りとか、もうパーフェクトです」

「ああ、あの二人……」

 三年A組の玉野ひかるに、二年B組の大平みのる

 ある意味、りようすけと並んでももぞの学園の有名人だ。かなりのイケメンで金持ちである玉野は、その実、内面はかなり残念な男だった。リサラや良介とからむようになって、以前の最低さは消えつつあるようだが、それでも内面が女好きのエッチであることは変わっていない。

 大平は、元々良介とは親しい友人で、玉野が作った校内フェティシズム愛好家秘密結社『マンコカパックパーティー』の現会長である。

「でも室長が、そんなに玉野くんと大平くんのことを知ってるなんて、正直意外ではありますね」

 そう疑問を口にしたマルベックを、イリアは鼻で笑った。

「どこに特異者が居るか分からないじようきようだったのよ? 目立った人間のことを、ちゃんとマークしておくのは当然じゃないのぉ。それが出来てないから、マルベックは無能なのよ」

「め、面と向かってひどい……」

「上司がイリアじゃなければ、とっくにクビにしてるところよ、もうっ」

「がんばります……ぐすん」

「期待しないで期待してるわよ」

 机にしたマルベックを見つつ、イリアはすぐに思考を彼女から移した。

「クリスマスがああだとして……バレンタインデーだったら、どうなのかしらね」

 人間界の男の子にとって、最大最強、そしてさいきようなイベント、それがバレンタインデーだ。みんなチョコレートを求めるもうじやと化す。

 そんなイベントで、良介は、リサラは、どう動くだろうか。

「はい!」

 マルベックが勢いよく手を挙げる。

「なによ?」

「今度は私がシミュレーションします」

「……ふうん、いいじゃない。アンタがどこまで人間観察出来てるか、しっかり判断してあげるわね」

「任せて下さい。そうですね、バレンタインデーってことなら確実に……」