「めんどくさい仕事を押しつけられるのが、部下の役割じゃない。イリアが満足する報告書が出来上がるまですいみん時間は、な・い・ぞっ

「そんなせつしようなっ。おにっ、あくっ、どう上司!」

 泣きそうな顔でマルベックが非難してくるが、イリアはニコニコと笑い続ける。

「あらぁ、マルベックってばイリアのこと、そんな風に思ってたんだぁ。だったらぁ、イリアも外道上司として、しっかりとひどいことしないといけないかなぁ

「ひぃぃぃぃぃっ、うそです、ごめんなさいっ。これ以上、酷いことされたら私死んじゃいます!」

 その場でマルベックが、ガバッと土下座してくる。

「なんだかイリアが、ホントに酷いことしてるみたいじゃない」

「いや、このアパートって室長が家主みたいな顔してるけど、私が家賃はらってるんですけど……」

「経費さくげんよ、経費削減」

「以前は、ガルダーブロウグ前に私を放置してげちゃったし……」

「部下の尊い自己せい精神をには出来なかったのよぉ」

「……はぁぁぁぁぁ。分かりました」

 何を言っても無駄と、マルベックがようやく観念したらしい。

「報告書は私が書きます」

「うんうん、イリアってばいい部下を持って幸せだわぁ」

「ただし……正直言って、私は何も知らないし、何が起きてるか全然なんで、教えて下さい」

「教える?」

「ええ。だって室長は、リサラさんとクラスメイトでもあるじゃないですか。当然、その動きを色々とあくしてるはずでしょう?」

「まあそれはそうだけど……」

 桃園学園二年B組に人間としてもぐり込んだリサラを調べるために、イリアもまた同じクラスに人間として入っているのだ。

 当然、クラスメイトってことになる。

 席も近いし、その学内での動向は確かにマルベックよりははるかにつかんでいた。

「と言っても、りようすけくん周りの出来事が多い気がするかも……」

 良介。

 リサラが人間界に存在し続けるためにかりけいやくを結んだ人間だ。

 イリアの目から見ると、正直ぼんじんだし、顔も並だし、リサラがびんぼうくじを引いたとしか思えない契約対象だ。

 ただ、色々なそうどうをリサラや良介と共にてきて思うのは、危機におちいった時の良介はどうもだんと違うのだ。

 不覚にもちょっと格好いいと思ってしまったことまである。

「そうね。リサラと良介くんの関係性なんて、幹部連帯が喜びそうな情報ではあるわねぇ」

 うんと、イリアはうなずいた。

「関係性って、ええと、どういうことでしょう?」

 マルベックがぽかんとした顔で聞いてくる。

「リサラがどんな人間と契約を結んでいるかってのを、校内の出来事とかからりにするのよ。仮契約とはいえレストール家の跡取りが選んだ人間よ。そのパーソナリティは、十分中間報告に相応ふさわしい情報になると思わない?」

「そうなんですか?」

「ええ、そうよ。それに、これは個人的なことだけど、絶対にリサラと良介くんの間には、この学園祭で何かあったものぉ」

 確信がイリアにはあった。

 学園祭が終わった時、リサラはもう長い付き合いになるイリアにして初めて見るほどに、どうようしていた。

 表面上は取りつくろっていたが、イリアにはリサラが今にも泣き出しそうな精神状態だってことが、はっきりと分かったのだ。

 そして良介も、そのおさなみのおおくらも、様子が変だった。

「美菜さんも良介くんには、気があるみたいだったし……何か、ええ、絶対に何かがあの三人にはあったはずよ」

「そうなんですか……」

「ええ、そうよ。だからこそ、今までの関係性を洗い出して報告するついでに、あの三人の関係も整理しておくことは、ふふ、意味があると思わない?」

「……ええと、それってもしかして野次馬こんじようなんじゃ」

「悪い? てか、マルベックだって興味あるんじゃない。もしかしたら、あのリサラがふられたかも知れないのよ?」

「それもう報告書と関係ない、完全に個人的興味なんじゃ……」

「一石二鳥よ」

「はぁ、まぁいいですけれど……」

 マルベックが、何かをあきらめたかのように頷いた。

「だったらイリアが見聞きしてることをアンタに説明してあげるから、さっさとノートとペンを持ってきなさい!」

「りょ、りようかいです!」

 マルベックがドタドタと動き出して、チラシの裏で出来たノートと、職員室でもらったというボールペンを持ってくる。

「そうね……まずは、桃園学園にしゆつきようが現れた時の話からかなぁ」

 イリアの言葉に、マルベックが「ああっ」と手をった。

「そういえば、そんな事件ありましたね。あれ、でもあのころはまだ室長はこちらに来てなかったような」

「そうよ。だからこれは伝聞ね。ただ……実はリサラと良介くんが原因だって聞いてるのよねぇ」

「あの二人が?」

「ええ。いい、実はね……」