~とある薄給死神と室長の報告書~


「室長あてで郵便が届いてますよ」

 学園祭が終わったふりかえ休日の月曜日、一級しにがみふくむねイリアの目の前に素っ気ない茶色のふうとうが置かれた。

「……イリア宛に封筒?」

 十日連続となるお昼ご飯のそうめんをズズッとすすり上げてから、イリアは封筒を置いたパオイ・マルベックを見上げた。

 相も変わらず、マルベックの胸が不必要にでかい。人間ねんれい手前ということもありやや垂れ気味ながら、見事なプロポーションをほこっている死神だ。

 イリアも、げんえき高校生グラビアモデルとして活動していることもあって、可愛かわいらしいそうぼうらしいプロポーションを持っている。ただし胸は死神の術式で作り上げたにせ胸で、本当はAカップの貧乳だったりする……。

「どこからよ」

 イリアが聞くと、封筒をひっくり返したマルベックが、差出人を読み上げた。

「幹部連帯からですね」

 幹部連帯──それはメルロー人生保障幹部連帯直属の特務室極東支部主任という、やけに長ったらしいかたきを持つイリアにとって上司に当たる組織だ。ちなみにマルベックもまた特務室極東支部所属で、イリアの部下に当たる。

めずらしいわね。本部のおっさん達がれんらく寄こすなんて」

 最後の素麺をすすり上げてから、イリアは封筒をようやく手にした。

「ボーナスの通知だったりしませんかね?」

 マルベックがはかない夢を口にする。

「イリアのグラビアモデルとしてのお給料も、あんたの講師としての給料も、全部上前をはねるくらいにこんきゆうしてるメルローが、ボーナス? 鹿な夢を見ないでよねぇ」

 イリアの言葉に、マルベックが「ですよねぇ」と肩を落とした。それだけでやや垂れ気味のぶさが、だるんとれる。その様子にイリアは舌打ちをかましてから、封筒に目をった。

「何にせよ、仕事が増えるだけって気はするけど……仕方ないわね」

 ビリビリと乱暴に封筒を引きちぎる。その雑な開け方を見たマルベックが、あきれた様子で口を開いた。

「また乱暴な」

「なによ」

ごうかいさって積極性につながりますよね!」

 ひとにらみしただけで、あっさりおべっかに変わるマルベックだ。

「ええと何々……げっ!」

 封筒から取り出した書類を読み、イリアは思わず息をんだ。その様子にマルベックが、身を乗り出してくる。

「ど、どうしたんですか? もしかしてクビ?」

「馬鹿言わないでよぉっ。四級のマルベックとちがって、イリアはメルロー人生保障には数少ない一級死神よ? クビになるわけないじゃない」

 マルベックを軽く睨んでから、イリアは再び書類に目を落とした。

「いい、よぉくその耳をかっぽじって聞きなさいよ」

「あ、はい」

「レストール家あとり候補一級死神リサラ・レストールのももぞの学園せんにゆうかつどうについての中間報告……日付的には明後日あさつてまでにってあるわ」

 読み上げた書類をマルベックに押しつけて、イリアは軽くため息をいた。

「今まで完全放置だったのに、急に報告書を寄こせだなんて……何かあったのかも」

「何かってなんですか?」

「イリアが知るわけないでしょう?」

「それはそうですけど……」

 しやくぜんとしない様子でマルベックが、押しつけられた書類を手に取る。

「で、コレどうするんです?」

「もちろんまとめて提出するわよぉ。幹部連帯のげんを取っておいて、損ないものぉ」

「でも明後日までなんですよね」

「うん」

「大変ですね、今からだなんて……」

「やっだぁ、もぉ。マルベックったら何を言ってるのよぉ」

 胸の前で両手をにぎり、イリアはニコリと微笑ほほえんだ。

「報告書を作るのは、マルベックに決まってるじゃなぁい

「えええぇぇっ!?

 マルベックが思いっきりのけぞり、乳房をブルンブルンと揺らす。それをイリアは睨み付けてから、すぐに笑顔を作り直した。