(まあ、現代でもやっておることを少々冷静になって考えると恥ずかしいリフレの店で、いい年したオッサンが女の子に抱きつかれたり添い寝されたりで金払っておるのだから、影兵衛程度のアレはいつの時代も珍しくないのかもしれんが……)

 可哀想に。モテないんだな。そう認識すると九子は途端に優しい気持ちが生まれた。こんな趣味が殺人のドブ野郎がモテるはずもないのだからと納得もする。

「よしよし……」

 頭を撫でてやる九子。

「うえっ皮脂がっ」

「椿油だっつってんだろ!」

 戯れるようにやり取りをする二人を見て、男たちは血涙や鼻血を垂らして歯を食いしばっていた。


 影兵衛の願い事は想像以上に全員へとダメージを与えたのだ。同時に彼らは魂レベルで結束し、誰が提案したということもなく全員が決意した。

(もし次に願いを叶える権が与えられたら、影兵衛のあれを無効化しよう)

 自分よりも大切なことがあるのだと彼らは気づき、一つ大人になるのであった……



 それから暫くの間。

 影兵衛はちょくちょく九子のところにやってきて膝枕をねだり、お房や石燕などの女たちから不評で呆れられる場面もあったものの、満喫していたのだが……。

 次の宴会にて他の男たちが全力で的当てしてキャンセルされた。

「やったああああ!」

「俺たちの勝利だあああ!」

「愛を取り戻せ!」

「ちっ! クソが! 無駄に団結しやがって弱者男性ザコオスどもがよォ!」

 悪態をつく影兵衛と喝采をあげる皆に、九子が戸惑った顔をした。

「そんなに必死にならんでも……」

 彼女が指を立てて皆に告げる。

「別に膝枕ぐらい暇なときに頼んでくるのならば、してやるのだが」

「……」

「……」

「…………」

 意味深な沈黙をして男たちは顔を見合わせ、次の者が的を当てて『男に体を気安く触らせるの禁止』を九子に願うのであった。