やおら、お房が明るい顔で呼びかける。

「これで大丈夫なの。さ、早くお店に戻って明日の準備をするの」

「もういいのかえ?」

「いいの! だってお母さんにこう伝えたんだもの。『来年も四人で墓参りに来ます』って。毎年会えるんだから、きっと喜ぶの!」

 お房のその言葉に。

 九子は軽く目が潤むような優しさを感じて無性に嬉しくなった。

(フサ子は、己れをすっかり家族だと思ってくれているのだなあ……)

 亡き母に毎年報告する、そんな存在だと。

「ううっ……私の立ち位置が『姉』で固定されてる気がしますよう」

「うむ」

「お六さんもきっと私と六科さまを認めてくれますよう!」

「むう?」

 お雪が拳を握りそう言うが、六科からしてもお房からしてもお雪は家族であるものの、少々妄想癖を持つ姉とかそういった立ち位置の認識をしていた。

「そういえば……新六のやつは幽霊が見えるとか言っておったのう。盆になったら町のあちこちに霊が溢れておるとか。今度連れてきて、お六さんが居ないか見てもらうか?」

「いや。それは。いい」

 六科が珍しく強く否定した。強面の鉄面皮に、冷や汗をダラダラと流して手のひらを向けてくる。

「死んだお六の霊になにを言われるかわからんから……それはいい」

「そ、そうか……」 

 色々と亡き妻にトラウマがあるらしい六科は、彼女のことを想ってはいても死後に会いたいわけではなさそうであった。



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