石燕が地図と共に、目印として主だった宿の位置を書いてくれていた。

 まず二人が通りかかったのが布田五宿と呼ばれる、現代でいうところの調布市あたりだった。

 おおよそここで日本橋から五里ほど進んだことになる。国領宿に始まり下布田、上布田、下石原、上石原宿を合わせて五宿が近くに並んでいる。

「む、新六や。ちょいと待て」

「なんです?」

「近くに多天だてん神社じんしゃがあるから参拝していくように、と石燕の注釈が書いておった」

「急ぎ旅なのに⁉」

「いやな、ここで祀られているのが少彦名すくなひこのみこと菅原道真すがわらのみちざねでな。少彦名命は温泉の神だそうで、菅原道真は己れも名前を勝手に拝借した天神だ。一応賽銭でも投げていこう」

「温泉の神さま……そうですね。挨拶しておかないと」

 というわけで二人は神社に寄って参拝もした。九子はともかく、新六は信心深い方だ。なにせ神が実際に見えるときだってあるのだ。

 少彦名命は芋に乗るぐらいの小さな神だ。日本神話では大国主と共に旅をして温泉を見つけたり秘薬を作ったりしていた。案外異世界人だったのかもしれない。

 神社で賽銭を入れて拝み、先を急ごうとする新六に九子は神社の裏にある森を興味ありそうにチラチラと見ていた。

「どうしたんです?」

「ここの神社の裏にゲゲゲの鬼太郎の家があるという設定だったなあと思い出してのう」

「お知り合いですか?」

「居たら仲良くしておかねばな」

 勿論居なかったのであるが。作中の設定でも鬼太郎が生まれたのは昭和の時代である。

ともかく二人は小休憩をして旅を再開した。



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