御庭番おにわばん、と呼ばれる役職は本来『広敷伊賀者ひろしきいがもの』という名称であった。

 広敷とは屋敷や城の大奥を指し、ここに関する役職を持つ武士を『広敷ひろしき用人ようにん』と呼ぶ。御庭番もその役職の一つであり、大奥周辺──即ち、将軍のプライベートな住居の警備を担当する。

 基本的に江戸城勤めの武士であっても、将軍とお目見えし、言葉を掛けてもらうには様々な手続きが必要である。だが住居の警備や監察を行う広敷用人となれば、緊急に将軍へと報告する事案が考えられるため、彼らに関しては直接将軍へと言葉を交わすことが認められていた。

 吉宗がまどろっこしいのでそう決めたのだ。彼は前例の多くを廃止した。

 新六は温泉奉行ながら御庭番も兼任しており、温泉の事業関係も含めて吉宗へ毎日のように報告をあげていた。

「──ということがありまして」

「ふむ」