「はい、どうぞ。れいに撮れたと思います」

 そう言って見せられた、スマホの画面には――俺の頰にキスをする、シャルの写真が映っていた。

「ありがとうございます……!」

 シャルは嬉しそうにスマホを受け取り、すぐに操作を始めた。

 どうやら、待ち受けにしたようだ。

 花音さんと神楽耶さんの前で、キスをしてくるなんて――相変わらず、だいたんなことをしてくれる……。

「俺にも送ってもらえるかな?」

「はい、もちろんです……!」

「ありがとう」

 チャットアプリでシャルが写真を送ってくれたので、俺も同じように待ち受けにした。

 写真なんて全然撮ってこなかったので、正直凄く嬉しい。

 これからもずっと一緒にいるだろうし、これからはたくさん撮っていけたらいいな。

「それでは、急いで準備をしてきます……!」

 写真で満足したらしく、シャルはリビングを出ていった。

 出かけることにも納得しているようなので、これでよかったんだろう。

 ただ――もう少しだけ、待ってほしかった。

「――かわいくて甘えん坊のお嫁さんで、よかったですね?」

 この、ニコニコ笑顔の花音さんに、俺一人がからかわれることになるのだから……。

 その後、シャルは準備をして、花音さんと一緒に出かけた。

 まだお店も開いていないような早い時間なので、よほど遠くに行くんだろう。

 俺としても、はちわせをする心配がないので有難い。

「さて、していたせんたくものをたたんで、そうをしておくかな」

 下着に関してはノータッチを言い渡されているのだけど、それ以外は俺が任されている。

 服は風呂場に干してあるので、それを取り込めばいい。

 それにしても……このお風呂場も一般家庭より大きいと思うので、もともと住んでいた人もお金持ちだったようだ。

 よくそうも大きいし、これなら大人二人でも余裕で入れる。

「…………」

 一瞬、シャルと一緒に入る姿を思い浮かべてしまうが、他の人の目がある以上難しい。

 クリスマス、どうすればいいんだろう……?

 俺が住んでいた部屋は今も残っており、かぎも持っている。

 二人きりになって落ち着くには、やっぱりそこがいいかもしれない。

 ホテルなんて、行けるわけがないし……。

 そんなことを考えながら、俺は洗濯ものを畳んでいった。

 六人分もあるので、結構大変ではある。

 乾燥を終えた洗濯機の中にはタオルやくつしたなどはあったが、下着だけが綺麗に全て取り除かれていた。

 神楽耶さんがあらかじめ取ったんだろう。

 まぁ俺も変な疑いがかからないので、そちらのほうが助かりはするのだけど。

「――おはよう、頑張ってるわね」

 少しして、エマちゃんを抱っこしたソフィアさんが起きてきた。

 元々起きていたようだけど、エマちゃんが目を覚ますのを部屋で待っていたんだろう。

「おはようございます。エマちゃんも、おはよう」

「おは、よう……」

 エマちゃんは眠たそうに目を手で擦りながら、日本語であいさつを返してくれた。

 こうして日本語で挨拶をする習慣を身につけたので、もう挨拶だけならちゃんと日本語を話せるようになっている。

「ロッティーのプレゼントのために頑張っているのよね、ありがとう」

 エマちゃんにはわかってほしくないのか、ソフィアさんは日本語で会話を続けてきた。

 まぁエマちゃんは寝ぼけていてまだ眠たそうなので、日本語で話していても気にしないようだけど。

 気が付けば、ソフィアさんの胸に顔を押し付けていた。

「お礼を言われることではありませんよ、俺が勝手にしているだけなので」

「ねぇ、どんなプレゼントをあげようとしているの? 花音ちゃんに聞いても、本人から聞いてくださいって言って、教えてくれないから」

 ソフィアさんは期待したようにワクワクとしながら、俺の顔をのぞき込んでくる。

 さすがにソフィアさん相手でも、花音さんは約束通り黙っていてくれたようだ。

 恥ずかしいのであまり知られたくないことだけど、ソフィアさんに聞かれてすことはできない。

「その――」

 ここには現在三人しかいないのだけど、俺は念のため耳打ちをする。

 内容を聞くと、ソフィアさんは優しい笑みを浮かべた。

「そう……とても素敵だと思うわ」

 花音さんの時もそうだったのだけど、意外と肯定をしてくれた。

 普通なら、背伸びするな、とか、学生らしいものにしろ、と言われてもおかしくないのに。

 俺の周りは理解してくれる人ばかりで、本当に有難い。

「喜んでもらえますよね……?」

「ふふ、絶対喜ぶわよ。喜びすぎて、明人君が押し倒されてしまうかもしれないわね」

 ソフィアさんは楽しそうに声を弾ませながら、ウィンクをしてきた。

 さすがに、押し倒されることは――――――ないとも言いきれないな……。

 結構押しが強くて、積極的なところがあるし。

「それにしても、すごいわね……高校生で、その発想に至る子がいったいどれくらいいるのかしら?」

 感心したように、あごに手を当てながらソフィアさんは見つめてくる。

「あはは……背伸びしている自覚はあります……」

「うぅん、年齢なんて関係ないわよ。明人君の覚悟が伝わってくるし、立派だと思う。生まれ育った環境によって、早熟してしまった子だとは思ってたけど……本当、いい意味で子供らしくないわね」

 ソフィアさんは凄く好意的にめてくれる。

 付き合っている彼女の母親に、こうして肯定してもらえるのは嬉しいことだ。

 一瞬、おじさんと言われているのか考えたけど、話の流れ的に違うだろう。

 内面の話をしているのだし。

「そんな明人君だからこそ、ロッティーも甘えられるんだろうね」

「それはよかったです」

 シャルがどう思っているのかはわからないけど、甘えてくれるということは、やっぱり甘えられる相手として見てくれているんだろう。

 彼氏として、光栄なことだ。

「それじゃあ、朝ご飯食べるわね」

「あっ、エマちゃんには俺が食べさせますよ」

 俺は既に食べ終えているため、ソフィアさんが食べている間に食べさせることができる。

「ありがとう、任せるわね」

 エマちゃんを差し出され、俺は落とさないよう慎重に受け取った。

『エマちゃん、起きて』

『んん……?』

 ポンポンッと肩を優しめに叩くと、エマちゃんは眠たげな目で俺を見上げてきた。

 話している間にまた寝ていたので、眠たくて仕方がないんだろう。

『ご飯だよ?』

『ん~、いい……ねんね……』

 食い意地を張っているエマちゃんにしては珍しく、まだ寝たいようだ。

『仕方ないわね……もう少し、寝かせておいてくれるかしら?』

 無理に起こすのは良くないと思っているのか、寝かせるようお願いされてしまった。

『そうですね、後で食べさせることにします』

 この状態では、ウトウトしながら食べることになるだろう。

 それよりは、目が覚めてから食べさせたほうがいい。

『私は、食べたら行かないといけないから……』

『えぇ、大丈夫です。お仕事頑張ってください』

 仕事があるのだから仕方がない。

 元々この後は俺が面倒を見る予定だったのだし、何も問題はなかった。