……でも確か、シャルは通販で買う時は代引きではなく、ソフィアさんから渡されているクレジットカードで買っていると言っていた。

 クレジットカードの明細を見れば、専門店で物をたくさん買っているのはわかるはずだけど――シャルが何を買っているかまでは、チェックしていなかったのかもしれない。

「まぁ、買うにしても……ほどほどにね」

 結局、ソフィアさんも許してくれたようだ。

 ほどほどにって……実際どれくらいの量があったんだろう?

 気にはなるが、この流れで聞くことなんてできない。

「あーくん……」

「うん、安心して。誰も責めたりなんてしてないから」

 俺は、姉貴分や彼女の母親が見ている前で、涙声で甘えてくるかわいい彼女を甘やかし続けるのだった。



「――ここが、新しい家ですか……」

 新居は、俺たちが住んでいたところからさほど遠くなかった。

 というか、普通に歩いていける距離だ。

 だけど、家は思っていた以上に大きかった。

 さすがに豪邸というほどではないが、二階建ての一軒家である。

「お部屋も広いですからね。まずは、明人とシャーロットさんのお部屋に行きましょう」

 花音さんは笑顔で案内をしてくれる。

 中に入ると、玄関やろうは普通の家と変わらない広さだった。

 その分、部屋が広いようだ。

「――壁をぶち抜いている感じですか?」

 他の部屋と比べて俺たちの部屋だけ異常に広く、部屋の形的にも少しいびつになっているので、そう思った。

 キングサイズと呼ばれていた大きいベッドに、二人分のタンスと一台の大型テレビ。

 他にも、俺の身長よりも大きくて横長のほんだなや、勉強机とが二つずつ揃えてあり、ソファやクッションもある。

 そして押し入れもちゃんとあるにもかかわらず、まだまだスペースに余裕があった。

 ちなみに、家具はどれも高級ブランドものっぽいのが揃えられている。

「さすが、察しが良いですね。これだけ広ければ、いちゃつき放題ではありませんか?」

「別に、スペースは関係ないと思いますが……」

 ニコッと笑みを向けてきた花音さんに、困ったように笑いながら返す。

 だけど、シャルは俺と別の捉え方をしたらしい。

 顔を真っ赤に染めて、両頰を手で押さえながら何やら一人悶えていた。

 いったい何を想像しているんだろう?

「同人誌によって、想像力がずいぶんと豊かになっているわね……」

「まぁまぁ、よろしいではないですか。二人とも知識がないよりは、片方でも知っていたほうがスムーズですよ」

 何やらソフィアさんがシャルを見つめながら溜息を吐いたが、花音さんが楽しそうに笑いながらフォローをしている。

 あちらはあちらで、いったいなんの話をしているのだろうか?

「元から日本文化に影響されて、漫画やアニメが大好きなのは知っていたけど、いつからああいうのに手を出していたのかしらね?」

「母親として心配になるのはわかりますが、深くお気になさらなくても大丈夫だと思います。結局は明人が相手になるだけですので、あの子ならシャーロットさんにどんなことをされても受け入れますよ」

 うん、本当にいったいなんの話をしているんだ……?

 花音さんが生暖かい目を向けてきたので、すごく気になる。

「――お嬢様の前でわいな姿を見せた場合、わかっていますよね?」

 そして、後ろに回り込んできた神楽耶さんに、何か冷たいものを首筋へと当てられる始末。

 今の間に、俺が悪かったことは一切ないと思うんだが……?

きもめいじておきます……」

「よろしい」

 俺の返事で納得してくれたらしく、神楽耶さんは離れていった。

 卒業後は姫柊家に入ることが決まっていても、彼女の俺に対する扱いは変わらない。

 一生、このままな気がする。

「あーくん……」

 シャルが、クイクイッと俺の服のそでを引っ張ってきた。

 見れば、熱っぽい瞳で上目遣いをしてきている。

「どうしたの?」

 俺は息をみながら、物欲しそうな顔をしているシャルの目を見つめ返す。

 なんとなく、何を求められているのかわかる気がするが……。

「…………」

 シャルは、俺の腕に顔をグリグリと押し付けてくる。

 多分先程の妄想で、スイッチが入ってしまったんだろう。

 甘えたくて仕方がないようだ。

「……明人、私たちは別のお部屋を見てきますので、少しゆっくりしていてください。お荷物は、まだまだ届きませんからね」

 花音さんが優しい笑みを浮かべながら、話しかけてきた。

 シャルの様子に気が付いて、二人きりにしてくれるようだ。

 引っ越しの荷物は、姫柊家の執事さんたちが持ってきてくれるようなのだけど、どうやらわざと遅らせてくれるらしい。

 何から何まで、有難かった。

「それじゃあ、明人君、ロッティー。また後でね」

 ソフィアさんも、寝ているエマちゃんを抱えながら笑顔で出ていった。

 もちろん、神楽耶さんも二人に続いて部屋を出ていく。

 おかげで、この部屋には俺とシャルだけになった。

「あーくん……」

 二人きりになれたことで、再度シャルは物欲しそうな顔を向けてきた。

 荷造りで離れ離れになっていただけでなく、精神的に参っていたので仕方がない。

「目をつむって」

「あっ……はい」

 ほおに手を添えると、シャルは嬉しそうに目を閉じてくれた。

 素直で本当にかわいい。

 俺はシャルのあごに下から指を当て、ゆっくりと自分の顔をシャルに近付ける。

「ちゅっ……」

 唇を合わせると、シャルのしっとりとした柔らかい唇の感触が伝わってきた。

 そして――。

「あむっ……んっ……」

 すぐに、シャルは舌を俺の口に入れてきた。

 待ちきれなかった――とでも言わんばかりに、グイグイときている。

 なんなら、足に踏ん張りを入れないと、シャルに押し倒されそうなくらいだ。

「あーくん……しゅき……」

 のぼせているのか、シャルの呂律ろれつがおかしくなっている。

 目もトロンッとしており、熱があるのかと思うほどに顔も赤い。

 そんな姿も、いとおしかった。

「うん……俺も、大好きだよ……」

 舌を絡ませながらシャルを抱きしめ、優しく頭をでる。

 普段消極的なのに、こういう時グイグイとくるギャップは、俺に刺さってしまっていた。

「ぷはっ……はぁ……はぁ……」

 息が苦しくなったんだろう。

 シャルは口を離し、肩で息をする。

 しかし――。

「もういっかい……」

 一度で終わる気はないようで、呼吸が整わないうちに俺に口を近付けてきた。

「待って」

「…………」

 ストップをかけると、シャルはお預けを喰らった仔犬のような目を向けてくる。

 かわいすぎて頭がおかしくなりそうだ。

「立ったままだとしんどいから、いったん座ろうよ」

 そう言って腰を屈め、シャルの背中と足に手を回す。

 そして――ゆっくりと、抱き上げた。

 いわゆる、お姫様抱っこだ。

 前にした時の反応で、シャルがこれを喜んでくれるのは既にわかっている。

「あーくん……困ります……」

 だけど、シャルの反応は俺が思っていたものとは違った。

「えっ……?」

「こんなことされたら、気持ちが抑えられなくなっちゃいます……」

「…………」

 なるほど、言わんとすることはわかる。

 わかるんだけど――既に、ストッパーはいていないような……?

「誰も見ていないから、気にしなくていいよ」

 ツッコミたい言葉はグッと呑み込み、シャルを抱き上げたままベッドへと腰を下ろす。

 横向きになっているシャルは、ベッドに足を下ろし、俺の首に手を回してきた。

 そして――。

「んむっ……ちゅっ」

 先程と同じように、舌を絡ませてくる。

 キス魔の彼女は、俺が許した以上もう止まらないかもしれない。

 俺も、花音さんたちから声をかけられるまで、やめるつもりはなかった。

 かぎをかけずに座ってしまったが、今更立ち上がってかけに行くのもどうかと思う。

 せっかくのふんを、壊したくないのだ。

 花音さんたちならドアノックをしてくれるだろうし、前みたいにキスに没頭していなければ気付けるはず。

 そう思って、シャルとキスを続けていたのだけど――

『――おにいちゃん、どこぉおおおおお!』

 目を覚まして俺とシャルがいないことに気付いたエマちゃんが、涙目で飛び込んできたのだった。


 ……なるほど、こうきたか。