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どうやら包囲は脱することができたようだった。人外のダークエルフ、森を知り尽くした存在であるシーナが全力疾走を可能な限り続けたのだから、それなりに距離も稼げているだろう。というか一直線に進み続けたせいで山間部を抜けてしまった。
眼前には、
「どうするよ? あんま人里には入んねえほうがいいか?」
「時間の問題だろうけど、今はまだメリットのほうが上回ると思う。入るなら今のうちだとも言えるな。あそこでいろいろ仕入れよう」
「おっけー」
申し訳程度の高さの外壁を乗り越えてシーナは町に侵入し、人気のない林で
この町に一軒しかないと言われれば信じられるような、駐車場の広いコンビニに入り、ATMで下ろせるだけの金を下ろす。シーナが携帯と一緒に財布も精霊樹の中に保管できるようになっていてくれて助かった。無論、この動きも
ついでに新聞をチェックする。全紙一面で報じている騎士団襲撃テロの記事の中には、まだ自分の名前は見つけられなかった。昨日の今日ではさすがにそこまで情報が出回っているわけではない、ということか。実働的に動いているのは、さっきのような特別任務を帯びた一団のみで、町の警察官たちが色めき立つ指名手配などはされていない……と判断してよさそうだ。
しかしそれもやはり時間の問題。動くなら今で、しかも今後のことを見越して動かなくては。
というわけで、変装することにした。
やたら大きな
「へへー、知ってるぜ? こういう黒眼鏡とかで変装するんだろ」
「二人でグラサンは逆に怪しすぎるかもな……とりあえずシーナの髪は目立つから、帽子とか買ってみようか。野球帽とか多分似合うよな」
「むー。あたしの髪についてダメ出しされたか今?」
「正確には、シーナの髪は
「そ、そうか……任せるわ……」
いつだか髪の短くなったシーナと服を買ったときのことを思い出した。せいぜい一週間前の出来事のはずなのに、随分昔のことのように感じる。
店の違いのせいか、あのときよりも少しだけ気軽だ。お出かけ用の衣装ではなく生活に密着した普段着のようなものをこうして二人で選ぶというのは、それはそれで楽しい。まるで新婚夫婦や
結局シーナにはいつものブレザー制服から、活動的な帽子とスタジャン姿になってもらった。下半身はタイトなミニスカートで、相変わらず
先程のコンビニではなく地元民憩いのスーパーで食料や水、日本の物流網に感謝しつつのタピオカミルクティーを買った。近場のベンチで目立たないように栄養補給。
だがそれらを消費しきるより前に、
「
「──そうか」
さてどうするか。変装が効いていれば一目でバレるということはないかもしれないが、永遠に隠し通せると思うほど楽天的ではない。
そのとき、座っているベンチにほど近い場所にあるバス停に、一台のバスが停車するのが見えた。並んだおばあちゃんたちが時間をかけてゆったりと乗ろうとしている──
ああ、そうだ。俺たちは、自由だ。
だから
「あれ乗ってどっか行ってみるか?」
「おー。いいねぇ」
行き先表示は
それでも全然構わない。
彼女が笑っているのだから、きっとなんとかなるだろう。