あとがき



 この度は『ゴエティア・ショック』をお手に取っていただきありがとうございます。

 という形式張った表現になってしまいますが、謝辞を。

 元々の小説はインターネットにおいて公開させていただきました成人向けの作品ではありますが、その世界観とキャラクターを買われてこうして書籍化することとなりました。

 はっきり言って「やったことはないが、自分も書いてみたら意外とえっちな小説を書けるのではないか?」というちょっとした思い付きから始めてみただけの処女作でして、こうして書籍化するにあたっては数多くの問題もあり────これを機に、全編書き下ろしかつ上下巻同時刊行という凄まじく無茶に思える執筆の方を行わせていただきました。

 挿絵の方のお名前を聞いたときに「よっしゃあ! 筋肉質なイケメン描いてもらえる!」「よっしゃあ! いっぱい野郎を出せる!」「マッチョにドスケベインナー着させられる!」と大声で叫びました。欲望がだだ漏れでした。『せっかくの大熊先生なのに女の子を出さねえとは何事だ!』と読者の皆様から怒られそうなので、欲望はほどほどにします。嘘です。欲望のままに男も女も出します。

 さて。

 作者について話させていただくとしたら、作者は幼少期からライトノベルや小説に長じて読書や創作を行い────ということは全くありません。そもそも読書というものに大の苦手意識がある……或いはそれを植え付けられた側の人間です。

 そう、個々人の意見がオンライン上で可視化されるようになった現代において、千羽鶴と並んでかつの如く叩かれまくる例の存在────読書感想文によって、です。

 あるかわいい小学生の読図健人くんは、街の図書館で何となく捲ってみた本に心躍らされました。

 少年たちを主人公にしたいわゆるオカルト要素のあるもので、子供心にとても惹かれました。まだ、通学路の何処其処にある幽霊屋敷めいた人の出入りのないプレハブや、何となくどこに続いているか判らない路地に怖さを感じていた年頃で、繁華街の裏路地をショートカットするのに躊躇いを持たなくなった汚れた大人の読図健人さんとは別人です。

 そのまま夏休みを利用して既刊の全てを読み終え、ああこれからどうなっていくのだろうなあ……とか、子供が「かめはめ波」をするぐらい当然に小説の中の言葉を真似したり調べたりと、とても楽しい読書体験であったことを覚えています。

 それから、例によってあまり楽しくない課題図書の気乗りしない感想文を書く傍らで、その本の魅力を十分に人に広められるような、感想文とも紹介文ともつかないものを書き上げ、満足げに頷くと他の夏休みの宿題を大急ぎで終わらせ──絵日記をデタラメで取り繕って登校日を迎えました。

 そして、自信満々に提出したある日の放課後、先生は言いました。

 ──────もっとちゃんとした本を読んで感想を書いて、と。

 幼少期の読図健人くんはそれに大いに傷付き、泣き腫らし……たりはしませんでした。インドア趣味でしたが、魂は蛮族でした。鉄砲とか格闘技とかも大好きで、子供らしく上級生や同級生と殴り合いの喧嘩も少しはありました。未来の世界から猫型ロボットは来てくれないけど、そんなどこにでもいる少年でした。蛮族の幼体でした。ナメられたら○す、それに尽きると考えておりました。

 そして読図健人くんは堂々と、「この本は正当に出版されて図書館にも置かれている児童向けの書だ。改めるつもりはない」「自由な感想文を阻害するならなんのための自由だ。なら自由と謳うべきではない。己が用意した建前さえも保てぬ言葉に何の意義がある?」「そこまで決められるというなら、そも俺が書く必要自体がないだろう。そちらで全員分を用意すればいい」──と言ったかはまるで定かではないですが、というか多分そんなこと言える情緒は育ってませんが、なんにせよ全力で拒否しました。

 そして幼い彼は、「直さないなら放課後ずっと書き直させる」「直すまで残らせ続ける」「友達とも遊べなくなる」と先生に言われ、仕方なく泣き寝入りを………………しませんでした。外で遊ぶよりもゲームを好むインドアな少年でしたが、やはり魂は蛮族でした。

 そして、家族も蛮族でした。

 そのことで小学校に怒鳴り込んだり殴り込んだりしない程度の理性を持った蛮族でしたが、「よく言った。それでこそ武家の誉れじゃ」「負けは死ぞ。背を見せて逃げるは恥ぞ。斬り結べい」「そう言うたなら終いまでそう振る舞えい」と言ったかはやはり定かではありませんが──多分似たような言葉は言った──無事に読図健人くんの意見は家族会議で承認され、そこから日々残される放課後が続きました。

 その後どうなったかは残念ながら定かではないのですが、多分負けたと思っていないあたりは意見を曲げずに最後までいたのでしょう。負けはしつこく記憶する蛮族でした。

 大人となった今では先生も随分と面倒な生徒に引っかかったなあ……と同情する気持ちもありますが、反骨の心は消えておりませんでした。いわゆるパンクでした。サイバーパンクを書くことになったのもそういうのに関係しているかは定かではありませんが、とにかく先祖代々戦っている蛮族でした。そしてこの度、そんな蛮族の家系から小説でお金を稼ぐ変わり種が生まれました。

 なので、登場するキャラはどいつもこいつも割と蛮族です。サイバーバンゾク小説です。

 願わくば、一応は全年齢向けで売られているこの小説を読書感想文に書くような猛者が現れず、この世のどこかで友達とのボール蹴りもできずゲームもできず連日学校に残される生徒が生まれず、そして小学校というウサギ小屋に侵入した蛮族の幼体を前に書類仕事も何もできずに見張り続けなければならない不幸で文化的な先生が現れないことを。

 そして全年齢対象にした以上、SF……すこしふしぎ……ならぬ少しファ◯クされるんじゃないかなドキドキするな、という創作体験を通じてヒロインやヒーローのピンチに性癖が歪む少年少女が現れることを。

 更に望みがあるとしたら、もっと気軽にサイバーパンクでその手のゲームや小説が出る世の中になってくれたら嬉しいな……という感じです。

 格好いいですからね、サイバーパンクガジェットと少女。フィーチャー感溢れるスケスケ衣装。えっちなピチピチボディスーツのイケメン。格好いいですからね。いいね?


 お忙しい中で、「この設定でいいですか?」「作者の人何も考えてないと思うよ」「なんてこと言うの読図ちゃん……」とか「野郎にドスケベバニースーツをですね」「男に」「ドスケベバニースーツを」「ドスケベバニースーツを?」「ドスケベバニースーツを」「大熊先生にそれを頼めと……?」「ドスケベバニースーツを」とか「急がないんでプロットとかのご用意をしていただけたら」「判りました明日出します」「明日」「明日出します」「明日」とか、小説の話の傍ら惑星ルビ○ン焼きや惑星ベジ○タの国民的追放もの漫画やオンラインに星の数ほどあるPC向け個人製作ゲームの話を交えて根気よく雑談やアイディア出しにご協力いただいた編集K様。

 やたらと男性の筋肉量ばかり気にして、サイバーパンクなのに細かいこと何にも考えてない作者に「このロゴはこれでどうでしょう?」「こういう小物でよろしいでしょうか?」「他に設定はありますか?」とドンドンと問いかけて美麗な設定画や装備を絵にして表現して頂いた大熊猫介様。表紙の背景までの描き込み、本当に嬉しいです。

 「全年齢で売り場に置けないよこれ!?」とは言わずに置いていただけた書店様、誤字脱字の訂正やあんまり何も考えずにワードやルビが二転三転する作者を根気よく正してくださった校閲者様、夏休みの宿題もくやと言わんばかりに仕上げられる小説を形にしていただけた製本社様、めちゃくちゃサイバー・アイキに乗り気でレーベル初の上下巻分冊にゴーサインを出していただけた出版社様……。

 在りし日の人生初の公表小説に挿絵をつけてくれた友人のTくん。

 それと、投稿二日目にして支援絵をくださり、今回の刊行に際してイラストを寄稿してくださった朝凪様。

 そして、「嘘だろ? 成人向けじゃないなら買ってもしょうがないじゃん……」とは言わずに手に取っていただいた皆様。

 この場を借りて、改めてお礼を申し上げます。

 また新たなるエピソードでお目にかかれる日をお待ちしております。