最近は時代劇もあまり放送されなくなりましたから、「お奉行様」と聞いてもピンとこない方も多いかもしれません。
奉行とは武士の役職の一つで、何か専門的な政治業務を行う、現代で言う「なんとか大臣」に近いです。例えば勘定奉行ならいまの財務大臣、作事奉行なら国交大臣のような感じです。
ただ、中でも遠国奉行や町奉行という、幕府の直轄地を支配する奉行がありました。これは今で言う知事のような役回りで、強力な権限が与えられていました。ちなみに町奉行といえばたいてい江戸を支配する江戸町奉行のことを指します。江戸市民が「お奉行様」と呼ぶのは本来町奉行だけです。
町奉行というとお白州での裁きがあまりに有名で、裁判官みたいな役職なのかと勘違いしてしまいますが、実はあのお裁きは町奉行のごくごく一部の仕事にすぎないのです。
極端に言えば百万人という人口を抱える江戸市民一切の生活を取り仕切るのが町奉行の役目です(東京都知事)。江戸で起こる町人がらみのすべての事件は民事刑事を問わず町奉行が関わります(家裁から最高裁判所までの所長)。刑事事件なら事件の捜査、摘発、逮捕も仕事ですし(警視総監)、伝馬町の牢屋敷も町奉行の支配下なので犯人の拘留も担当しています(刑務所所長)。
さらに江戸町火消も町奉行の傘下にあります(消防署長)。江戸に集まる宿場や道の管理も仕事です。当時全ての情報は街道を歩いて手紙を通して運ばれていましたから、当然その管理も町奉行の仕事です(郵便局)
とまあざっと上げただけでもこれだけの仕事が町奉行の双肩のしかかっていたわけで、とにかく無茶苦茶忙しいお役目でした。
これは日本各地の重要な都市に配された町奉行も同じです。長くなりましたが今回出てきた阿部正音さんにもこれらと似たような仕事が回ってきたわけです。
本来だったらのんびり五月とお話しているような時間はないはずなのですが、まあそれはあの人の性格ということで。
右記にならって神奈川奉行、外国奉行兼任の阿部正音さんの仕事をざっと上げてみると、
・神奈川県知事
・横浜市長
・神奈川県警察本部長
・神奈川消防署署長
・神奈川で起きる事件の捜査、裁判
↑この辺は町奉行と同じですが、他に外国奉行として、
・税関
(当時横浜には運上所と呼ばれる神奈川奉行の出先機関があり、そこが横浜での貿易一切の管理をしていました。外国の通貨との両替や貿易支払いの決済事務なども担当していたので、簡単な銀行のような役割もありました)
・外交官
(当時外国奉行は何人もいて、それぞれが色々動いて交渉を担当していたのですが、特に重要なのが神奈川にいる外国奉行でした。ほとんどの外国公使館の管轄をしていたためです。何か事件が起こると最初に呼び出されるのも神奈川の外国奉行です)
・神奈川、特に横浜の防衛、攘夷志士によるテロ対策。
(当時横浜は最も攘夷志士に狙われた街の一つです。幕末は京都が有名ですが、横浜でも数多く殺傷事件が起きていました)
エトセトラエトセトラ……とまあ、このような重要な仕事が阿部正音さんには任されていたのでした。
長々といろいろ書きましたが、要は阿部正音さんは物凄く偉い役職についていたということがわかって貰えれば嬉しいです。もちろん本来は五月にとって、雲の上のようなお役職の人です。
歴史関係でもう一つ。本編内で薩摩弁でしゃべっている箇所がありますが、自分が適当に訳しただけなので全然正しくないと思います。鹿児島の方ごめんなさい!
歴史の話話ついでに百合とは全く関係ないのですが、来年は漫画「風雲児たち」がドラマ化されるそうですね。今からすごい楽しみにしています。「風雲児たち」はとにかく面白くかつ勉強になる歴史漫画なので、あの世界観がどのように映像化されるのかワクワクしています。自分もとても影響を受けました。
さて、最後になりましたが御礼を。編集の中村様。今回も編集作業ありがとうございました。二巻は校正にも時間がかかってしまい大変申し訳ないです。誤字脱字を減らしたい。
イラストの大嶌様、今回も美麗なイラストを本当にありがとうございました。今回は日本人がごそっと増えて黒髪率が高いのにみんな魅力的なキャラクターに仕上げて下さって感謝しかありません。五月のドレスも大変素敵にデザインしていただけて嬉しかったです。
それでは、今回も最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
ちゃいな