
「ま、
決して暑いから、ということではないのだろう、しかし龍田は両手をぐっと握って、感情マークもぐるぐると混乱したような状態で俺の顔をじっと見る。
うむ……気持ちが先行してしまって勢い余って
隣で見ていた
「えっと……ひ、ひかり……じ、実は俺も──」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! やっぱり駄目でありますよぉ!」
「うおっ!? と、虎尾!? い、いや落ち着けって! こ、これは────わ、分かった! 分かったから押すなって!」
明らかにパニックになっている感情マークを示した虎尾が、半泣きになりながら俺の背中をグイグイと押して龍田から遠ざけようとする。
「確かに……今のは中々強力な破壊力を感じたわね……純粋という名の暴力とは恐ろしいもの……虎尾さんが焦る気持ちもよく分かるわ」
「何専門家みたいなこと言ってんだよ……と、虎尾落ち着け、もう終わったから」
「ううう……私は認めないでありますよ……」
「はー……や、ヤバい……
龍田が大きく息を吐いて椅子に座り込んでしまう、
「い、いやひかり、それ俺の
「へっ!? あ、あわわわわ……! ご、ごめん! ごめんね! あーもうやだ……こんなのに乗るんじゃなかった……恥ずかしいよ……」
龍田が机の上に突伏して足をバタつかせる、まあ無理もないというか……何でこうなったと言わんばかりの状況ではあるが……。
俺を壁際まで追いやってなおもぐいぐいと押してくる虎尾を何とか
今更言うまでもない話だが、事の発端はあそこで腕組みをしてその様子をまじまじと見てはメモを取っている
俺達は現代歴史文学研究会にて、相も変わらずダラダラとした時間を過ごしていたのであるが、あの女は唐突に『雅継くんに愛を伝えよう』という謎ゲームを提案。
当然ながら虎尾も龍田も俺も渋った反応を見せたのだが、『じゃあ私が一番雅継くんをスキということでいいのね』という北条の発言に対して他二名が謎の反発を見せ今に至る。
ただそれだけなら俺にとっては得しかないというか、
では、現場へと戻ろう。
「さあ次は虎尾さんの番よ、雅継くんにあなたなりの愛を伝えて見せて頂戴」
「ふぇっ!? い、いや、そ、そんな私は……」
「なら不戦敗ということでいいのかしら、それは非常に残念な話ね」
「あ……あう……ま、雅継殿……」
しがみついたまま離れない虎尾が、上目遣いで何かを言いたそうに俺の顔をじっと見つめてくる。
う……そんな目で見られても俺としては何も言えないんだが……というか近いし、ピッタリとくっつかれて
「と、虎尾、別に無理をする必要なんてないからな? 北条のいつもの悪ふざけなんか真に受ける必要はないんだし……」
「う……何でそんなこと言うでありますか……?」
あ、あれおかしいな……どうして逆効果になっているんですかね……。
頰を膨らませて不満げな顔をする虎尾だったが、何やら感情マークが決意の固まったような表情になると、パッと俺の
「ま、雅継殿……」
「お、おう……?」
「そ、その……い、いつもありがとうございまする、わ、私のことを気にかけて下さってその……凄く有り難いと言いますか……」
頰をぽりぽりと
もじもじしている姿が妙に可愛らしく、見ているこっちも気恥ずかしくなってくるというか、虎尾のこういう一面は珍しいので照れ臭くなってしまう。
「と、特に体育祭の時は雅継殿には本当に助けて
虎尾の気持ちのこもった言葉が今まさに放たれようとし、思わず身構えてしま────っていたのだが、何だか様子がおかしい。
「────と、虎尾? どうした? お、おいまさか……!」
「……気を失っているわね」
立ったまま気絶するって……それだけ虎尾にとってこれは心的負担が大き過ぎたということなのか……畜生、北条の犠牲者がまた一人増えてしまった……。
「ひかりさんも、虎尾さんも中々純粋さが
「い、いや……も、もう別に良くないか? 北条はわざわざやることでもないし……」
「やだ、私も雅継くんにスキって言いたい」
「やだて」
俺の思いも
いくら彼女の全自動スキンシップを食らい続けているとは言っても、相手は学校一の美女中の美女である、こんなもん慣れる
「ま、雅継くん」
「は、はい……」
「あ、あの……」
「?」
「…………」
うん? おかしいな、北条にしてはいつものようなスマートさを見せてこない。
それどころか何だか緊張すらしているように見える……やっぱりもしかして──
「──やっぱり我慢出来ない……今日ぐらい、いいわよね」
「は? 何言って──ぬぐおっ!?」
途端、北条が俺の身体へと突っ込み、ガッチリとホールドしたかと思うと、そのまま山頂の澄んだ空気を吸うかの
「スー……ハー……スー……ハー」
「ぐ……! し、しまった……!」
「ああ……雅継くんの匂い、雅継くんスキ……」
「情緒の感情を捨てやがったな──く、こ、これは──……ん?」
発作でも起こしたのかと疑ってしまうほどの北条のダイレクトアタックに身動きが取れずにいると、
「へ──? と、虎尾さん……?」
「北条殿だけではその……バランスが悪いでしょうから……日頃の感謝を込めて……」
「日頃の感謝を込めてバランス取ることとかある……? いっ!?」
目をぐるぐるとさせ支離滅裂状態な虎尾に意識が向いていると、あろうことか今度は左腕にも同じような重みが乗っかってくる。
振り向くと、そこには顔を真っ赤にさせた龍田がしがみついているのだった。
「ま、まだ……さっきの返事……も、貰ってないから……」
「は、はい……?」
な、何だ……これはどうなっているんだ……何故俺はこんな可愛い三人に囲まれるような状況になっているんだ……。
しかも彼女達は力を緩めるどころか更にぐいぐいと俺との距離を詰めてくる、ぷ○ぷよだったら今頃消滅しているだろう……何言ってんだ俺。
お、おかしい……いつもの北条の悪ふざけがどうしてこんなことに……。
「雅継くん」
「雅継殿」
「ま……雅継くん」
「ぐぐ……」
じわじわと体温が上がってくるのが身体で分かる……そうか夏のせいか、この暑さが全て悪いんだ、だから皆こんなことになってしまっているんだ、そ、そうに違いない。
こうなれば……ええいままよ! ──と俺はそっと目を閉じて、身体の節々に当たってくる柔らかい感触にだけ意識を集中させ、外界の情報を全てシャットアウトする。
穏やかな風が部室内へと流れ込む……本日も現代歴史文学研究会は平穏なようだ──
「…………」
──いや、これ誰かに見られたら