また別の日、俺は父ウェリタスの工房へとやってきていた。
目的はチェーンソーの性能報告や意見書の配達。それに加え、プライベートな案件をひとつだけ
(プライベートと言えばプライベートだけど)
どちらかと言えばこちらが本命のような気がしないでもない。
なにせこれは──。
「おっとと」
考え事をして行き過ぎるところだった。いつものイケメンたちに挨拶をして、早速俺は工房の奥へと向かう。そこではウェリタスが魔導エンジンを調整していて、俺の姿を認めると工具を置いてにこりと笑った。
「やあ、ローラ。いらっしゃい」
「うん。また来たよ、父さん」
こちらも微笑み、俺は差し出された椅子に腰を下ろして鞄を置いた。そこから書類を渡していくと、ウェリタスはさすがの優秀さでそれに素早く目を通していった。
「ふむふむ。もう少し大きいものと小さいものが欲しい、と」
「特に大きい方を欲しがってたよ。もっと威力や刃渡りが欲しいんだって」
「さすがノックス・レギオンだね。普通は取り回しの良さが求められるんだけど」
「あの軍団に限っては、ほとんど全員パワー・イズ・ジャスティスだからね」
「頼もしいと言えばいいのかな?」
「どうだろ」
苦笑し合う俺たち。あの軍団の兵士たちのことを思い出しながら、しかし、すぐにその団長のことを思い出して相談した。
「そういえばルウナがちょっと危なっかしいんだ」
「危ない? どんな風に?」
「あの体でチェーンソーを振り回すでしょ? なんかたまに足元がふらついているように見えて……」
それは間違いなく事実だった。そもそも成人用、軍人用に発注しただけあって初期タイプは未成年には大きい。それをぶんぶん振って使うため、見ようによってはルウナがチェーンソーに振り回されているようにも見える。
「もうちょっと、あの子に適したものがあればいいんだけど……」
急にこのようなことを言われても困るだろうか? 相談したあとで少し心配になってしまったが、幸い、父の引き出しは常人のそれとは違っていた。
「ルウナ姫殿下の専用チェーンソー。なるほど、それは確かに必要だろうね。おそらく土木工事よりも戦闘に使いたがるタイプだろうから……」
スケッチブックを取り出すウェリタス。そこには様々なアイデアが描かれていて、そのうちのふたつを彼は広げて見せて言った。
「うん。この剣状か
「杖? チェーンソーをロッドにしちゃうの?」
「子どもがよく振って遊んでいるだろう? あの『魔法の杖』のようにするのさ」
「ず、随分と物騒なおもちゃになりそうだけど……」
穏やかに微笑む父は至って真面目なようだ。近々完成するだろうチェーンソーロッドに、俺は早くも背筋をぶるりと震わせるのだった。
「大きいものと小さいものはすぐにできると思うよ」
「すごいね。相変わらず仕事が早いや」
「というより、もう作ってあるんだ」
「もう!?」
「なんだか興が乗っちゃってね。色々試作してみたんだ」
「ひえええ……!?」
真に才能ある人とはこういった手合いのことを言うのだろう。
我が父に畏敬の念すら覚えた俺は、同時に「この人しかいない」という強い気持ちも固めていた。鞄を引き寄せ、そこに入っていた最後の資料を
「あの、さ」
「なんだい、ローラ?」
「そんな父さんを見込んで、作ってもらいたいものがあるんだけど……」
いよいよプライベートの案件を取り出す俺。その資料に書かれた部外秘の文字に、ウェリタスはわずかに驚きの表情を見せるのだった。