幕 間 マリーの行方(ギルアン視点)
ギルアンはマリーの行方が分からず苛々としながら、下町をドシドシと重たい体を
(マリー……あの女、いったいどこへ行ったんだ)
娼館はスカーレットの不正が
(
(女は無能なんだから
だからギルアンは娼館が好きだった。十年前に父親に連れて行かれたスカーレットの店でマリーと出会い、そのあまりの
(
ギルアンはマリーを妻にしてやっても良いと考えていた。だが女好きだから愛人は常に十人は囲うつもりで、そのことにマリーに異議を唱えさせるつもりはない。
何度も来たマリーが住んでいた娼館を見上げてギルアンがため息を落とした時、
その顔にギルアンは見覚えがある。
(確か……ベティって言っていたか? マリーと仲が良かった……)
いつもマリーをかばうように立ちふさがっていた
(いや、もしかしたらマリーの行方を知っているかもしれないな)
そう思い直して、ベティに声をかけた。
「よお、元気にしているか?」
ユサユサお
「何だい、テーレンのお
「そうつれない
ベティが両手に持つ
「もうスカーレットの店も終わりだからね。他のお姉さん達も出て行ったよ。あたしもこれが最後の荷物だ」
ギルアンは「ふうん」と
「マリーがどこへ行ったか知らないか?」
「知るわけないだろう。たとえ知っていたとしても、あたしがあんたに教える義理はないさ」
顔を
「良いじゃないか。これは
ベティは舌打ちして、お札を引っ張り出してギルアンの胸に押し付けた。
「いらないよ、あんたからの
そうベティは文句を言っている。
(これは
ギルアンは
「これからどうするつもりなんだ? 娼館はなくなっただろう」
ただの雑談でそう尋ねたギルアンに、ベティは肩をすくめる。
「さてね。もう娼婦はこりごりだから、どこかの仕立屋で雇ってもらえたら良いんだけどね」
ほとんどの平民は
ギルアンは
(そういえばマリーは
スカーレットにこき使われて、何か針仕事をしていたのは知っている。女の仕事に興味がなくて深く知ろうともしていなかったが。
(
そう思い、そちら方面を
仕立屋を調べていくうちに、ギルアンは街で新しくできた【仕立屋フェアリー】の噂が広まっているのを聞きつける。
(ベールに隠された女主人なんて
(【織姫】か……そういえばスカーレットは【織姫】を抱え込んでいるという話は有名だったな)
ギルアンはあまり興味のないことだったために流してきたが、そういえば
(待てよ。そういえば……【織姫】が姿を消したのとマリーがいなくなった時期が同じだ)
そして同じお針子という職。ギルアンはその二つの
(まさか【織姫】がマリーなのか……?)
あまりに
ふと先日の皇宮でのパーティでの
マリア・シュトレイン。マリーとそっくりの女性。そしてエマ・シュトレイン伯爵令嬢がスカーレットの店を破産に追い込んだという話。それらが全て
(まさかマリーはマリアの
まったく分からないことばかりで、ギルアンは自室で頭を
(【仕立屋フェアリー】に行ってみるか)
そう思い立ち、ギルアンは一番街のその店に行って店番をしていたベティと再会した。
「いらっしゃいませ~」
「お前……ここに就職していたのか。じゃあマリーもここにいるな?」
ギルアンはつぶやき、ますます
「な、何言っているんだい! 変なことを言うんじゃない! マリーなんていないよ! この店の主人はメアリー様なんだから!」
ベティはそう
「なっ! おい!」
「もう閉店なんだ。すまないが、もう来ないでくれ!」
ベティがそう乱暴に言うと、店内にいたお客も残念そうな表情で出て行く。
(メアリーもマリーも、元は同じ名前じゃないか)
別の名前という扱いをされているが、由来は同じだ。
(マリーはきっと、ここにいる)
ギルアンは強い確信を持って、手下に【仕立屋フェアリー】を見張らせることに決めた。