幕 間 深まる疑心(カルロ視点)
皇宮の政務室にて、カルロは跪く諜報員から報告を聞いた。
「何? マリアが仕立屋を?」
思わず、カルロは驚いて聞き返してしまう。
「はい。ジェシカ・グッドフェロー子爵令嬢がマリア様の作ったドレスを宣伝してまわっており、社交界で評判になっております。【織姫】の再来か、と噂されるほどです。しかしマリア様であることは伏せられているようで、オーダーメイドドレスを作るために貴族女性の邸に行く時でもマリア様は顔をベールで隠していらっしゃいます。現在は店舗の準備を進められており、一番街で工事がされています」
カルロは顎に手を当てて難しい表情で唸る。
「信じられません……それは本当にマリアですか?」
(僕が知っているマリアとはあまりに違う……マリアなら武器屋や道場の方がまだ納得できるが)
マリアが密かに仕立屋を始めたと諜報部員から聞き、カルロは驚きを隠せない。しかも犬猿の仲だったはずのジェシカとの仲も良いようだ。
(そういえば、先月のパーティでもマリアは様子がおかしかった)
体調が悪いのかと思い花束を贈ったが、伯爵家から御礼状が届いただけだ。日々の政務の忙しさもあって気に留めていなかったが。
「それでは、マリアは今日も仕立屋の仕事を?」
「いえ、今日は妃教育のために皇宮にいらっしゃっております」
そういえば、マリアは週に三回ほど妃教育のために皇宮を訪れていたのだ。今まで興味が湧かなくて一度も会いに行ったことはなかったが。
「そうですか……。なら、会いに行ってみましょう」
今までそんなことしなかったのにしてみたくなったのは、パーティでの彼女の様子を思い出したためかもしれない。
「僕の方でも探りを入れてみましょう。引き続きマリアのことを調べてください。いったい何が彼女を変えたのか」
「はい! 現在もさらに詳しい事情を調査中です」
そう言って諜報員は深く礼をした。