幕 間 忍び寄る足音(ギルアン視点)



 ギルアン・テーレンはパーティにき飽きしていた。

 しかしいずれ父親の仕事を引きぐためには人脈作りも重要だ。だからいやいやながら皇宮のパーティに参加していたのだが――。

(クソッ、おれにはこんなことをしているひまはないのに……っ)

 ギルアンは一か月前にゆく不明になったおさなじみのマリーをさがしていた。もっとも幼馴染と思っているのはギルアンだけで、マリーは彼をけているのだが。

 ふいに、大広間で一人の女性と目が合う。彼女の瞳が驚きに見開かれた。

(……マリー? いや、違う。あの女は確か――)

 皇太子カルロの婚約者マリア・シュトレイン。

 しかし時折目にしていたマリアと今の彼女では明らかに雰囲気が異なっていた。その青い瞳にどこか怯えが混じっているように思えたが――。

(いや、気のせいだろう)

 エマに連れられて去って行くマリアの後ろ姿を見ながら、ギルアンは頭を振る。

 マリアは悪い意味で有名人だった。十年前にカルロ皇子の純情をもて遊び、婚約者の地位を得たくせにコロリと別の男――それも海賊王にれんした。おとこまさりな性格で、見た目以外はマリーと少しも似つかない。

(初めてパーティでマリアを見かけた時はマリーとそっくりなことに驚いたが……本当に中身は別ものだったな)

 容姿は好みだが、性格がどうしても受け付けない。ギルアンが好むのは嫌がっていても最終的には自分に従わざるを得ないあわれで可愛かわいい女だ。実際にマリアとも何度か直接言葉をわしたことがあるが、話すたびにそう感じた。

(フン、見た目が似ているだけの女はどうでもいい。絶対に見つけ出してやる……。マリー、お前は俺のものだ……!)

 そういらちながら、怯えた様子のきゆうが差し出したグラスを乱暴に取ってワインをあおった。