「おかえり~」

「ただい……なんでいるんだよ……」

 胡桃の様子が豹変してからというもの、胡桃は俺の下校後、やたらと俺の部屋に勝手に現れるようになった。

 胡桃は俺のベッドに入ってスマホをいじっている。俺、学校から家に帰るまで結構早いはずなのに、なんで胡桃の方がいつも先に着いてんだろ……。あと、家に上がるのは百歩譲って良しとして、なんでいっつも俺の部屋いるんだ……。

「なんだよ今日は……」

「いや、なんとなく。家だと妹二人がゲームしててうるさいし」

 ちなみに恵麻は週に何度かある部活でいない。家庭科部らしいが、恵麻の通う中学の家庭科部は駄べり部と言ってしまって差し支えない。

「また恵麻に鍵貰ったの?」

「いや? もう合鍵ある」

「合鍵!?

「莉太のパパとママがくれた。いつでも莉太と恵麻ちゃんに会えるようにって」

「そ、そうなんだ……いつの間に……」

 胡桃が部屋にいる時、俺はいつもデスクチェアに座ってラノベを読むようにしている。普段はこの時間、椅子ではなくベッドの上で読んでいるというだけで、別に胡桃がいるから特別そうしているって話でもないが。

「あんたの好きなラブコメみたいでいいでしょ? 帰ったら幼なじみが部屋にいるの」

 声に振り返ると、胡桃は壁の方に寝返りを打ちながらそう言っていた。

 見れば胡桃は、いつも俺が使っている布団を抱き枕のようにぎゅっと抱いている。胡桃が帰ってから布団に入ると、いつも胡桃の匂いがするんだよな、あれ。

「……まあ」

 俺が漏らすように返事をすると、胡桃はその返事に反応して、こっちに寝返りを打ってにまっと笑った。

「へ~、あんたも満更でもないんだ~」

「い、いや!? 俺は別にお前が帰ったらいるのが嬉しいとかそんなこと言ってるんじゃなくて! ただラブコメにおける幼なじみとの日常描写こそを評価しているわけでバフッ──!

 枕が飛んできた。あの、俺の枕なんですけど。