「……嫌?」

「う、ううん! 嫌じゃない……!」

 たけうちさんのきやしや身体からだの感触が腕全体に伝う。ほおの辺りが触れてもいないのに竹内さんとの近くなった距離を感じてくすぐったい。どこか奥ゆかしさを感じる甘い香りがこうを擽る。

 そして近くなったのは、きっと物理的距離だけではなくて。

『3、2、1』パシャッ。

 画面には、お互いの気持ちが全面にあふれるような笑みをぎこちなくも浮かべた二人の姿が映し出された。

なかくん、心臓の音すごいね」

「……ごめん、緊張、してて──」

「ゆずもだよ……!」

 竹内さんは、写真を撮り終えても俺の腕を放さなかった。

「──ゆずも、ドキドキしてる……!」

 竹内さん、それって、もう──。



「え~、田中くんめっちゃ可愛かわい~……♡

 竹内さんはずっと撮れた写真にうっとりしながら、デコレーションブースに移ってタッチパネルで写真をデコっていた。

「いや俺男だし、可愛くても仕方ないよ……」

「じゃあ、カッコイイ!」

「そんなこと人生で誰にも言われたことないって」

「えー、田中くんカッコイイのに」

「わ、わかったわかった……恥ずかしいからやめて」

「あはは! やっぱ可愛い!」

「竹内さん、からかってるでしょ!」

「バレた?」

 会話の途中、竹内さんは一枚だけ自分を白く塗りつぶし、可愛いうさぎの似顔絵を描き始めた。

「どうしたの? その写真」

「あ、これ? なんでかゆずだけエフェクト外れて盛れなかったの。せっかくだから絵描いた!」

「へえ、竹内さん、ナチュラルでも可愛いのに」

「……なかくんだってナチュラルにそういうこと言う!」

「いや、俺のはからかいじゃなくて本心だって!」

「余計に恥ずかしいよ! ふふ、はい、出来た!」

 そしてプリントアウトされた写真を、たけうちさんは俺にくれた。

「これ、田中くんにあげるね。ゆずはスマホに保存したからもう持ってるし」

「いつの間にそんなことしてたんだ……じゃあ遠慮なく、ありがとう。あ、なるほど、あっちにハサミあるのか」

 鏡が貼ってあるカウンターの上に、ハサミが置いてあった。

 俺が写真を切り分けていると、スマホを確認する竹内さんは「あっ」と声を出す。

「みんなカラオケ出たって、もうすぐ降りてくるらしい」

「そっか。じゃあわかりやすいところで待ってようか」

 切ったプリを財布の中にって、俺たちはプリのブースを出た。

「はぁ、もう終わりかぁ。田中くんと二人で遊ぶの、めっちゃ楽しかったなぁ」

「俺もだよ。俺、クラスメイトとこうやって遊ぶの初めてで正直不安だったけど、竹内さんと一緒だとそういうの全部忘れられるくらい楽しかった」

「……ねえ、田中くん」

 竹内さんは、大量に獲得したお菓子の入った袋の持ち手をモジモジといじりながら、上目遣いで聞いてきた。


「今度さ……またどこか二人で遊びに行かない……?」


『Cはキミのことが好きなんだろ? なら日頃の態度で一目瞭然だよ。きっとキミが好きでしょうがないというオーラがあからさまに出ているはずさ』

 ──こんなの、決まりでいいじゃん。

「ねえ、竹内さん……」

 彼女のことを改めて恋愛対象としてみると、大きく胸が鳴った。

「……なあに?」

「竹内さんに、聞きたいことがあって……」

「──うん?」

 俺は、ポケットのスマホに手をかけた。

 もう言うだけ。聞くだけ。そしたら、俺は──。


……?」


 途中聞こえた声に虚をつかれ、俺はその続きを言葉にすることなくぼうぜんと口を開けた。たけうちさんではなく、その奥にいる彼女に視界のピントが合った。

………………胡桃くるみ?」