あとがき
二度目まして、山田まると申します。
この度は「おっさんがびじょ。2」を手に取っていただき、誠にありがとうございます。
一巻に引き続き、この巻も楽しんでいただけたならば何よりです。
…………と。
やっぱり5ページもある後書きに何を書いていいのか、スペースを持て余すまるなのでした。
みなさん一体何を書いているんだ……。
うんうん頭を捻った結果、ちょっとこの巻を書いている際に改めて気づかされたことを書いてみようと思います。
それは、WEB連載で薔薇姫を初めて登場させた回をアップした直後のことでした。
まるのところに、友人から、「クリノリン・レディが出てきてくすっとした」というメッセージが届いたのです。それに対するまるの返事は、「え? なんだっけそれ」でした。薔薇姫は「なんとなくそういうモンスターいそうだなー、見た目綺麗な貴婦人なのにドレスの中がクリーチャーとかなかなかインパクトあるなー」という感じで考えていたモンスターだったので、友人のそのコメントが凄く意外だったのです。そんなまるに対して、友人は呆れたように「兄ちゃんのケーキじゃないのか」と言いました。
兄ちゃんの、ケーキ。
その言葉に、まるははっとしました。
まるは以前その友人に、一度謎の無茶ぶりをしたことがあったのです。
「貴婦人のスカート食べたい」、と。
といっても、友人に貴婦人のスカートを引っぺがして来い、と頼んだわけではなく。名前は覚えていないのだけれども、貴婦人のスカートの形をしたケーキがあって、それをもう一度食べたい、という話をしたことがあったのでした。そしてその貴婦人のスカートの形をしたケーキこそが、「兄ちゃんのケーキ」だったのです。
兄ちゃんはまるの年の離れた従兄弟でした。小さい頃はまるの家のすぐお隣に住んでいて、まるで本当の兄弟のように可愛がってもらいました。そんな兄ちゃんはパティシエになり、一時期修行中だったのかやたら大量のスイーツをまるの家に差し入れてくれました。それはもう大量の。朝昼晩三食ケーキが食卓に並び、もはや主食は生クリーム、というかのような洋菓子攻めを喰らっている中、兄ちゃんが我が家に持ってきたのがその貴婦人の形をしたケーキでした。上半身は陶器で出来ており、下半身のドレス部分がフルーツ系のムースケーキになっていて、生クリームにやられていたまるにとってはそのあっさりとした甘さがとても美味しく感じられました。
だから、でしょうか。兄ちゃんの作ったケーキはいろいろ食べさせてもらいましたが、なんとなくまるの中ではその貴婦人のケーキこそが、「兄ちゃんのケーキ」だったのです。
兄ちゃんが亡くなったあと、兄ちゃんのケーキが食べたいなーと思うときに連想するのもそのケーキだったわけなのですが、残念ながらまるにはそのケーキの名前がわからず、兄ちゃんのオリジナルデザインだったのかどうかすらもわかりませんでした。それで友人相手に、「貴婦人のスカート食べたい」とわけのわからない要求をしてみたわけです。その結果、友人はそのケーキが「クリノリン・レディ」という名前であることを調べ、教えてくれたのでした。
そして、だからこそ友人は薔薇姫の描写を読んだ際に、「ああ、クリノリン・レディか」と思って笑ったそうなのです。
薔薇姫の設定を考えている時、まるの頭の中に「クリノリン・レディ」のことはありませんでした。
友人に指摘されて初めて「あ」と気づきました。
それで、改めて思ったのです。
まるの書く文章や物語には、これまでまるが経験してきた出来事や、見たもの、触れたものが反映されているんだなあ、と。
兄ちゃんが亡くなってからもう五年以上が過ぎ、少しずつ実家に帰っても兄ちゃんに会えないことにも慣れてきました。まるにとって、いないことに慣れるというのは、兄ちゃんのことを忘れていくような気がして、少しだけ複雑な気もしていましたが、友人の言葉はそうでないことを教えてくれました。
意識して思いだそうとしなくても、当たり前のようにまるの中に兄ちゃんと過ごした時間があるからこそ、薔薇姫というモンスターがまるの中で生まれたんだなあ、と思うとなんだか嬉しくなったのです。
いやまあ、兄ちゃんとの甘酸っぱい思い出を昇華した先が薔薇園のモンスターで、その上あの扱いだったのは我ながらどうかと思わなくもないのですが!
きっと兄ちゃんなら半笑いで許してくれると思っています。金縛りにあったり枕元に立たれたら反省します。
……と、ちょっと話がズレましたが。
きっとそれは、兄ちゃんだけでも薔薇姫だけでもなくて。
まるがこれまで出会い、言葉を交わしてきた人たちみんなに言えるんじゃないかな、と思うのです。
家族や、友達、そしてまるの書いたものを読んでくださる方々。
そういった人たちとの時間が積み重なった結果、まるは今このお話を楽しんで書くことが出来ているのだと思うのです。
そんなわけで、最後に改めて皆さまへの感謝を!
何故か着々と購入しては親族ご近所同僚等に配り歩いている両親。おっさんがびじょの売り上げの半分は身内なんじゃないか、と若干疑っています。でも、いつも生暖かく見守ってくれてありがとう。
一巻が出た際に、買ったよ、読んだよ、本当に書店にあったよまるさん夢じゃないよ、と報告してくれた友人、フォロワーのみなさん、ありがとうございます。おかげで二巻もこうして出すことが出来ました。
今回もまたひんひん鳴いてばかりいたまるを支えてくれた編集の稲垣さん、素敵なイラストで物語を鮮やかに彩ってくださった藤田さん、本当にありがとうございます。多くの人に支えられて、こうして「おっさんがびじょ。2」が一冊の本の形になりました。
そして、これまでまるの書く物語が好きだよ、と言って読み続けてくれている読者の皆さま、「小説家になろう」でのWEB連載を追いかけてくださったり、今こうしてこの本を手に取ってくださっているあなたに最大の感謝を!
これからも是非、まるを見守っていただけると嬉しいです、よろしくお願いいたします!