姉さんに急に振られてそう答えた僕。

 つられた訳じゃなく、本当に羽織さんらしい。そう思う。

「ありがとうございます」

 羽織さんは目いっぱいの笑顔でそう答えた。

「一通り終わったわね。じゃあ最後に、せっかくだから三姉妹揃って一枚撮りましょうか」

「いいね。そうしなよ」

 僕と姉さんにうながされ、三姉妹は祭壇へと上がる。

 中央に七緒さん。向かって左が羽織さんで右が振袖さん。三人は自然とその手を取り合った。

「はーい。じゃあ撮るわ──」

 まさにシャッターを切るその時だった。

「ちょっと待って──!」

 姉さんの声をシャットアウトする声が教会内に響く。

「え──」

 声のした方を振り返って、思わず絶句した。

「まだよ! まだ終わってないわ!」

 教会の入り口にはリサの姿。しかもどうしてか、リサはドレスを着ていた。

 なんともカラフルな派手な色合い。夏の象徴たる向日葵ひまわりをあしらった白と黄色のドレス。天真爛漫てんしんらんまんなリサらしいチョイスなのはいいけれど、ちょっと派手すぎやしませんか?

「ど、どうしたのリサ? それにその恰好かっこう……」

「知り合いのブライダルサロンにお願いして持ってきてもらったの。私に合う衣装がないなら自分で用意すればいい。事務所の許可がいるっていうなら個人的な撮影ってことにすればいい! 私だけ参加できないなんてつまんない!」

 リサは不満そうな顔で僕らに詰め寄る。

「それに、みんなしてドレスアピールとか抜け駆けもいいところ! ドレスを着たら私にかなうはずないんだから! 彰ちゃんどう? 私の方が似合うでしょ!?

 返答に困る質問は避けてもらいたい。

「……そうだね。リサもよく似合ってるよ」

「でしょー! もー彰ちゃんてば素直なんだから♪ なんなら今から式挙げる? 牧師さんつれてくる? 両親も連れてこようか?」

「えっ? 式? いやいや挙げないよ──ってリサ!?

 リサは僕の腕に自分の腕をからめて僕を壇上へと引っ張り上げる。

「瑞穂さーん。一枚お願いしまーす♪」

「待てーい!」

 当然のごとくカットインするのは振袖さん。

「横から割り込んであるじ様とツーショットを撮ってもらおうなど言語道断。ここは正妻たる私が主様と写真を撮るべきであり、昔の女の出る幕ではない。早々に離れろこの尻だけ女が!」

「だからなんであんたはいつもいつも私の邪魔をするのよ!」

 キャンキャン言い争うのはいいけれど、僕を間に挟んでするのはめてください。

 誰か止めてよ! なんて思っていると、僕らの間に割って入ったのは羽織さん。

「お二人共離れてください。ここだけは譲れません」

 まさかの羽織さんも参戦!? 止めてくれるんじゃなかったの!?

「助けて七緒さん!」

「…………はぁ」

 僕を見て大きなめ息をつく。

「まあいいわ。全員壇上に並んで。みんなで撮りましょ。ポメちゃんも一緒にね♪」

「はーい!」

「いやいや、止めてよ姉さん!」

 なんて僕のお願いが通じるはずもなく、祭壇の上でみんなぎゅうぎゅうに密着する。

「はーい。撮るわよー。はい、チーズ♪」

 響くシャッター音。

 相変わらずいがみ合っている振袖さんとリサ。

 羽織さんは僕の傍に寄り添い、七緒さんはちょっと離れてすまし顔。

 背が低くてポジションに困るポメ子は、なぜか僕に抱きかかえられるという謎写真が、この軽井沢旅行の最後の一枚にして、最高の一枚になったのだった。

 なんだか色々あったけど、最後に一言──神様、本当にごめんなさい。