そんなこんなでリサ登場。

 しょぱなから騒々そうぞうしい二日目にして、ビスチェ作成の締め切り当日──八月二日。

 午後にウエディングドレスの衣装合わせを控えた午前中だった。

「なぜ桃尻娘がここにいるのだ!」

 リサと対面するなり振袖さんの怒号が飛んだ。

「なぜもなにも、瑞穂さんから誘ってもらっただけですけどー」

「お義姉ねえ様! なぜこのような者を誘われたのです!」

「その方が楽しいじゃない? 色々と……うふふ♪」

 むきになって駄々をこねつつ異議を唱える振袖さんに、姉さんは意味深な笑顔で答える。

 ……嫌な予感しかしない。

「ですが──」

「落ち着いて袖姉そでねえ。せっかくの旅行なんだしさ、みんな一緒に楽しもうよ」

 やいのやいの抗議の声をあげる振袖さんと飄々ひょうひょうとしたリサ。それを面白がる姉さんと、振袖さんをなだめる七緒ななおさん。ポメ子は相変わらずマイペースにお菓子をむさぼっている。

 そんなこんなで僕らがやってきたのは、近くの河原だった。

 透き通る穏やかな清流に、耳をくすぐる野鳥の鳴き声。豊かな緑に囲まれたこの場所は、普段から川遊びやバーベキューなんかで使われている場所なんだろう。山沿いの道路から近く、ほどよく整備されている。川辺も石などはない綺麗きれいな砂地になっていて遊ぶにも安心だ。

 落ち着けそうな場所なんだけど、今はとても落ち着いていられる状況じゃない。

 なんでかって? 振袖さんが騒がしいのもあるけれど、みんな水着姿なんだよね!

「ああ……眼福がんぷくすぎて目がつぶれそう……」

 羽織さんに誤解をされて落ち込んでいた僕の憂鬱ゆううつな気分を吹き飛ばしたのは、色とりどりの水着。カラフルな布と白いはだの織り成す夏のコントラスト。

 降り注ぐ太陽の光と、ほんのり焼けた水着のあと──浴衣が夏の風物詩ながら、水着の痕は夏の名残なごりにして一夏の思い出の象徴。ブラジャーもいいけれど、やっぱり水着も捨てがたい。

 なぜなら水着は、僕の愛するおっぱいを支えるという意味でブラジャーに近しいものがあり、一言ひとことで言えば親戚みたいなものといえるからだ。

 だけど、そんな似ている下着と水着も実は大きな違いがある。

 どうだろう? みんなも男に生まれたならば、一度は下着と水着の違いについて考えたことがあるはずだ。『どうして下着は恥ずかしいのに水着は恥ずかしくないのか? 布面積は一緒だろ!』かくいう僕も、その疑問について一度真剣に考えたことがある。

 それは、長い歴史の中でいつの時代も男性を悩ませ続けてきた大きな疑問であり、いまだ解を見ない永遠の謎ともいえる。だからこそここで一つ、僕なりの考察を聞いて欲しい。

 結論から述べると、そこには二つの大きな理由がある。

 一つ目は構造的な違いについて──。

 そもそも水着は下着と違い、肌が透けないように生地が厚かったり、伸縮性に優れていたり、当然ホックもなく脱がないことを前提としている。ひものタイプの多くはファッション紐なんだ。

 だからみんなに現実を突きつけると、水着でポロリはまずありえない。

 事実、僕が中学時代に毎日一人でプールに通い続けても、一度もポロリイベントには遭遇しなかった……くそう。真実はいつも残酷なんだね。

 対して下着は、服に透けない様に薄く、肌触りの良さや吸湿性を重視。ホックもあるし紐パンは本物の紐。つまり、脱ぐことを前提として作られているんだ。でないといつか僕らが下着を脱がす機会に遭遇した時、脱がせにくいと困るでしょ?

 二つ目は女性の気持ちの問題というか、精神的な違い──。

 水着は見せるというか、魅せるためのものであり、下着は身体を隠すもの。布面積は一緒だとしても、その意識の差は女性にとってとても大きいらしい。

 つまり、見られること、魅せることを前提とした水着は恥ずかしくない。いうなれば、パンツとブルマの違い──そう「パンツじゃないからはずかしくないもん!」の精神。

 どうだろう? 少しは長年の疑問の解消につながっただろうか?

「彰ちゃんどう? 似合うー?」

 そんなわけで緊急開催! 夏の露出大会こと水着ファッションショーのトップバッターはリサ。

 普段着ている水色の改造制服と同じ水色のビキニ。細いホルターネックのチューブトップで胸元はあえて谷間を隠している。控えめな上半身とは裏腹に下はTバックとかありなのか。

 僕に背を向けて振り返りつつ横ピース。お尻にしか目がいかない。

「ふん。その程度の露出でいい気になるなよ桃尻娘!」

 パーカーを脱ぎ捨てて主張してきた二人目は、小さめの黒い三角ビキニの振袖さん。

 引き締まった細身のラインと圧倒的露出。この手のタイプは胸の大きさに関わらず女性の魅力を引き出す水着として優秀だけど、ちょっとボリューム不足は否めない。

 未だ僕のバストアップカリキュラムの効果がないのが申し訳のないところ。

 こうして胸のつつましやかな二人の水着を見れば、僕はがぜん期待してしまう──口にするまでもなく、服部はっとり三姉妹の妹二人に。

 ここからがお待ちかね、本命の登場です!

「なっ……」

 改めて七緒さんに視線を向けると同時、僕は思わず言葉をなくした。

 そう──現実はいつだって僕らのちっぽけな想像のはるか上を行くんだ。