車内ではやたらテンションの高いポメ子と振袖さん。なぜか演歌を歌う振袖さんに合わせてポメ子がリズムをとっている。無駄に歌が上手いのはともかくなぜ演歌なのか?

「七緒さん……僕らはどこに向かってるのかな?」

「……」

「姉さんに聞いても教えてくれなかったんだよね。なにか聞いてる?」

「…………」

 ガン無視である。

 顔を合わせた時以上にだんまりを決め込む七緒さん。

 羽織さんも静かにしているんだけど、僕と目が合うと若干気まずそうに視線をらす。姉さんは鼻歌混じりで高速道路をかっ飛ばしてるし……なんだかものすごい疎外感を感じる。

 結局、誰に聞いても教えてもらえず、居心地の悪さを感じながら揺られること約二時間。

「……碓氷うすい軽井沢かるいざわ?」

 高速を降りたインターチェンジの看板にはそう書かれていた。

 それから大きな道を少し走らせ小道に入ると、辺りの景色が一変する。それまでの整備されていた街並みから一転──まるで森にでも迷い込んだかのような高い杉林に囲まれた。

 車の窓から外をながめていると、あちこちにコテージが目にまる。家族でレジャーにきている人もいれば、中には明らかに放置されているようなコテージもあったりした。

 そこから更に奥まで進んだところで姉さんは車を止めた。

「到着よ。みんな降りて」

 真っ先に車を降りる姉さんに続き、僕らも車を降りる。

 すぐに感じたのは、少し寒いと感じるほどの涼しさだった。ここの標高が高いということと、杉林に囲まれた場所というのもあるんだろう。もうすぐお昼だというのにもかかわらず、差し込む陽ざしも僅かで気温が低い。

 そして目の前には、やや大きめのコテージというか、二階建てのログハウスがあった。

「姉さん、ここって──」

「とりあえず荷物を降ろして中に入りましょ」

 僕らは姉さんにうながされ、車から荷物を降ろす。

 先頭を歩く姉さんは鍵をくるくる回しながら鼻歌交じりで上機嫌。ドアの前につくと、ドアノブにカギを差し込んでドアを開ける。

 姉さんに続いて中に入り──思わず声が漏れた。

「おお……」

 入ってすぐに広がるリビングは全てが明るめの木材で統一されていて、なんとも温かみのある空間に仕上がっている。窓のフレームまで木材でできていて、かれた絨毯じゅうたんも同色系の柄。空間の色調を損なわないように配慮されているのがうかがえる。

 そんな空間の中で一際ひときわ目を引いたのは、部屋の壁に備え付けられた暖炉だんろだった。

 よく映画の山小屋なんかで見かけるあれ。初めて見たけど……いいな、こういうの。

 僕と同じように言葉をなくす服部三姉妹と、リビングに入るなりテンションマックスで転がりまわるポメ子を眺めながら、姉さんは若干ドヤ顔をしながら口にする。

「ここが今日から私たちが泊まる場所だよ♪」

 ──え? 泊まる?

「このログハウスはね、うちの会社の別荘というか保養施設なの」

「会社の保養施設?」

 姉さんが社長を務めるオールハンドメイドの下着ブランドC─PEこと、クリエイティブ・パーフェクトエンブレイス。その所有物件ということらしい。

「いい別荘でしょ? 家電も一通りそろってるから長期滞在もOK♪」

 姉さんは胸(Cカップ)を張ってまたドヤ顔を浮かべる。

 でも、ドヤ顔したくなるのも見ればわかる。

 くる途中にいくつか見つけたそれよりも、一目で大きいその建物。外観は丸太で組み上げたログハウスにして中は広くて二階建て。広い庭にはバーベキュースペースもあった。

「姉さんの会社の保養施設はいいけれど、なんでみんなそろってこんなところに?」

 ここにきて、僕は改めて姉さんに尋ねる。

「あれ? 言ってなかった?」

「聞いてないよ! 家を出る時に聞いても教えてくれなかったし、七緒さんたちに聞いても教えてくれなかったし、どうせ姉さんが口止めでもしてたんでしょ?」

「テヘッ♪」

「やっぱりね……」

 姉さんはいつものように不敵な笑みで僕を見つめた。姉さんがこの手の顔をする時は、決まってよからぬことを考えている時。さすがにいつものことすぎてめ息も出ないよ。

「はい、これ」

 すると姉さんはカバンからA4用紙の束を差し出した。

 受け取って表紙に目を落とすと、そこには『ウエディング特集・企画書』と書かれていた。

「実はね、今度うちのビルでウエディング特集をする企画が上がってるのよ」

「ウエディング特集?」

「そう。うちの会社が運営しているビルはみんなも知っての通り、女性を美しくすることを目的とした多くのテナントが入ってるの。その総力を挙げて、女性にとっての晴れ舞台である結婚式の特集をしようってものなのよ」

 へえ……確かにあのビルに入っているテナント全ての協力が得られれば、素晴らしい結婚式の特集が組めるだろう。それどころか、いっそプロデュースができそうだ。

「それでね、テナントの協力を得るために企画のプレゼンをする資料作成をしなくちゃいけなくて、ウエディングドレス姿の女性の写真も載せなきゃなのよね。まだ内々うちうちの企画段階のお話だから、プロのモデルさんを使うほどでもなくてね」

 姉さんがそこまで言ったのを聞いて、僕はなんとなくその先を察した。

「七緒さんにモデルをお願いしようってこと?」

 きっとそれが、これからウエディングドレスのモデルオーディションを受ける七緒さんの予行演習にもなる──姉さんにとっても七緒さんにとってもいい話だ。

「そういうこと」

 やっぱりね。

「だけど、それだけじゃなくてねー」

 ん? それだけじゃなくて?

「色々なパターンのドレスの写真を撮るから、振袖さんや羽織さんにもお願いしようと思って」

「え──?」

 思わず振り返って二人を見つめる。

 振袖さんはなぜか満足そうな表情を浮かべていた。さすが物怖ものおじとは無縁の性格だけあって、妙に目が自信に満ちているというか、なにかたくらんでいるようにも見えなくもない。

 だけど、羽織さんは違った。笑顔は笑顔なんだけど、僅かに不安そうな影が見える。

 それもそうだろう。羽織さんは性格的に、この手のことが得意とは思えない。

「もちろん二人は承諾済み。快く引き受けてくれたよー♪」

 噓──羽織さん引き受けたの?

「七緒の練習になるならこの上ないことであり、ましてやお義姉ねえ様の頼みとあらば、私が断る理由などありはしないだろう。将来的には私も着ることになるのだから、丁度ちょうどよい機会だ……」

 うっとり顔の振袖さん、誰とそんな機会を望んでいるのでしょうか?

 なんて、さすがに知らんぷりはできないか……たぶん僕なんだよなぁ。

「羽織さんもいいの?」

 心配になった僕は羽織さんに尋ねる。

「はい……私も、覚悟を決めねばなりません」

 そう言って唇をきゅっと引き締めながら『軽井沢……正妻戦争……負けられない……』なんだかちょっと不穏ふおんな単語が見え隠れしたけれど、ひとみの奥に固い意志が見て取れた。

「そんなわけで、三姉妹のウエディングドレス特集ってこと♪」

「理由はわかったけど、だからってなんで軽井沢?」

「撮影場所に軽井沢かるいざわ高原教会こうげんきょうかいを借りたのよ。結婚式といえば教会でしょ?」

「なるほどね……」

「明日の午後に教会を抑えてあるの。うちのスタッフが午前中にはドレスを持ってくるから、教会で合流して下見と衣装合わせ。撮影は六日目の最終日だから、そのつもりでいてね」

「六日も!? そんなに長く滞在するの?」

「ぶっちゃけ私の有給消化ってのもあるのよ。会社立ち上げからずっと働き詰めだったし~。暑いの嫌いだから避暑もねてってところ~♪」

 わざわざこんな遠出するんだから、どうせそんなことだろうと思ったよ。

 姉さんはとにかく暑がりで、夏場は室内における露出度がピークに達する。基本パンツ一枚とかどこの裸族だよって突っ込まずにはいられない。

 いい年の女性がこれでいいのだろか……誰かもらってくれない?

「それじゃみんな、改めてよろしくね!」

 姉さんは服部三姉妹にウインクしながら声をかける。

「はい。頑張ります」

「ぜひとも手伝いをさせていただこう!」

「……よろしくお願いします」

 三姉妹が各々おのおの返事を返す中、七緒さんは真剣すぎて表情が硬いくらいだった。

「部屋は三部屋あるから、三姉妹で一部屋と、私とポメ子ちゃんで一部屋。彰ちゃんは一人で部屋を使ってね」

「え? 僕だけ一部屋でいいの?」

 別に他意はなかったんだけど。

「あらあら~。誰かと相部屋がいいのかな~♪」

 みずから姉さんのからかいモードに追い打ちをかけてしまったらしい。

 ニヤニヤしながら僕に迫る姉さん……うぜぇ。ポメ子もびっくりするくらいうぜぇ。

「なんならご指名してくれちゃってもいいのよ? 振袖ちゃーん! なんか彰ちゃんが──」

「ちょっと待って!」

 ご指名させてもらってないでしょ! むしろ強制でしょ!

「わかった! 僕は一人部屋でいいよ。その方が都合もいいし」

「あらそう。残念♪」

 姉さんは口に手を当てて含み笑いを浮かべていた。

「じゃあ、荷物を部屋に運んだら手分けして準備しましょ」

「準備? なんのですか?」

 七緒さんは荷物を手にしながら姉さんに尋ねる。

「きまってるでしょ。夏といえばバーベキューよ!」

 姉さんは声高らかに宣言した。

「じゃあみんな、後でリビングに集合ね」

 姉さんがそう告げると、各々荷物を抱えて階段を上っていく。

「彰ちゃん、ちょっといい?」

「んぐあ! ちょっと──えりを引っ張んないでしょ!」

 なぜか僕だけ居残りさせられた。

 姉さんは三姉妹が階段を上ったのを確認すると、声のトーンを落として口にする。

「七緒さんのビスチェの件、締め切りは明日だけど進捗しんちょくはどんな感じ?」

「問題ないよ。事前に採寸できていたのが大きかった。後は刺繡ししゅうだけ」

「そう。ならよかったわ」

「てか姉さん、ビスチェを作るよう僕に指示したのはこのためだよね?」

 僕が尋ねると、姉さんはしてやったりな顔で笑った。

「まあね。でも、うちの会社でウエディング特集をするっていうのは前から決まっていたことなのよ。たまたま七緒さんの受けるオーディションがウエディングドレスのオーディションに決まったから、だったら練習がてら七緒さんにお願いした方がいいと思ってね」

「なるほどね。たまたまってのも凄い偶然だけど」

「偶然というか、どうなんだろうね。数あるオーディションの中から七緒さんが自分で選んだのよ。『ウエディングドレスのオーディションがいいです』って。なにか思うところでもあったのかしらねー」

 ふと羽織さんのウエディングドレス姿が頭をよぎった。

「でもね……」

「でも?」

 お気楽な姉さんが少し真剣な表情を見せた。

「七緒さん、最近少し元気ないのよ。夏休みに入った辺りからかな。オーディションに向けて練習は一生懸命やってるんだけどね……気晴らしのために連れてきたってのもあるのよ」

「そうなんだ……」

 努力の甲斐かいあって解禁されたオーディションへの参加。

 できることなら万全の状態でのぞんでもらいたい。

「彰ちゃんもその辺を気にかけてあげて」

「うん。わかった」

「お願いね。あの子、私には弱音を見せないのよ。上手くフォローしてあげて」

 姉さんは僕の返事を聞いて安心したのか、階段に足を向ける。

「姉さん──」

 そんな姉さんを、僕は呼び止めた。

「どうして僕を黙って連れてきたの? 前もって教えてくれれば、もっと急いで完成させることもできたのに」

 僕が姉さんに尋ねると。

「気晴らしをさせたかったのはね、七緒さんだけじゃなくて彰ちゃんもよ」

「──僕も?」

 思いがけない返答が返ってきた。

「最近らしくなく、辛気しんきくさい顔してたでしょ? 驚かせれば少しは元気出るかと思ってね。それでみんなにも彰ちゃんには行き先を言わないように裏口を合わせてたのよ」

「……」

 さすがに見抜かれていたか。

「青春に悩みは付き物だけど、相談できる人はいないと思っているのかもしれないけれど、支えたいと思ってくれている人は意外といるものよ。そんな人たちに心配かけすぎないようにね」

「うん……」

「それと彰人ちゃんの部屋だけど、ビスチェを作るために必要な作業道具は会社から持ってきて揃えておいたから。普段家で使ってるやつより本格的な道具を用意したから、創作意欲も作業効率も上がるんじゃない?」

「わかった。部屋に行って確認してみるよ。ありがとう」

「じゃあ、よろしくね♪」

 姉さんはそう言って、二階へと上がって行った。

「ポメ子、僕らも部屋に荷物を置きに行くぞ」

「…………」

 絨毯で転がりまわった後、ずっと伏せているポメ子に声をかけるんだけど返事がない。

 身体を起こすと、ポメ子は幸せそうな笑顔でよだれを垂らしていた。

「ポメ子起きろ。部屋に荷物置きに行くぞ」

「んん……彰ちゃん。ごはんまだ……?」

「ご飯は途中のパーキングで食べただろ? 焼きまんじゅうを五個も……」

 軽井沢にきてまでマイペースなポメ子。結局僕はポメ子をおんぶして姉さんの部屋へと連れて行った。軽井沢にきてまでポメ子の世話かと思うと、出だしから溜め息がでる。

 旅行早々いつもの日常に、なんだか現実に引き戻された気分だった……。


ω


 こうして始まった、昭和の避暑地の代名詞こと軽井沢旅行。

 各々部屋に荷物を置いた後、僕らは一度リビングに集まって役割分担を決めることにした。

 姉さんとポメ子と羽織さんは一緒に食材の買い出しに地元のスーパーへ。

 振袖さんはそのきたえられた肉体から放たれる女子力(物理)を活かして焚火たきび用の薪割まきわり

 七緒さんは鉄板などの道具の準備を分担することに。

 ちなみに僕は残った二人のお手伝い。まあ、いわゆる雑用ってやつですね。

 力仕事の薪割が振袖さんの仕事とかナイスキャスティング。彼女ほど力仕事が似合う女の子もなかなかいない。しかも本人は一人ノリノリでおのを振り下ろしている。

「振袖さん、追加の丸太を持ってきました」

「ありがとうお前様。そこへ置いておいてくれ」

 斧を振り下ろしている姿は似合っているんだけど、どうしてか着物姿のままなんだよね。

 襟元から片腕を抜いて肩まであらわになり、僕のすすめた純白のブラジャーがもろに見えている。薦めておいてなんだけど、だから着物には和装下着でしょうよ。

 しかも斧を振り下ろすたびに上目遣いで視線をチラチラよこすんだけど、まさかセクシーアピールか? いやいや、筋力アピールの間違いだろ。どうかそうであってくれ。

「さすがに動きづらいでしょ? 着替えとか持ってこなかったんですか?」

「着替え? 着替えもなにも、私は制服と体操着以外は着物しか持っていないのでな。さすがに旅行にきてまでそれらを着るのはおかしいだろう」

「それはそれで一定の需要があるかもしれませんよ」

「ん? それはいったいどういう意味だ?」

「なんでもないです」

 いやほら、『観光地の女子高生』とか、ちょっと響きが甘美すぎる気がしない? 見知らぬ土地の旅行先で出会った女の子との一夏のアバンチュール。いいね。最高だね。

「やっぱり振袖さんは洋服に興味が持てませんか?」

 この質問は、振袖さんの育った環境や今の立場を考えればイエスだろう。

 だけど──。

「いや。そんなことはないぞ」

 予想していた返事とは違った。

「むしろ着てみたいとすら思っている」

「本当ですか?」

「ああ。お前様にブラジャーを薦められてから着けるようになり、やはりこれは洋服用の下着なのだなとつくづく思う。胸元をめる着物にはやはり合わない」

「だったらなんでブラジャーしてるんですか……」

「理由など一つしかないだろう」

「なんです?」

「お前様が私のために選んでくれたからに決まっている」

「なっ……」

 思いがけない剛速球が飛んできて、思わず面を食らった。

 振袖さんはいつも恥ずかしげもなく想いを口にしてくれる。鈍感ではいられないほどに。

「洋服デビューについては私も考えがある。いくら呉服屋の娘といえど、経営者といえど、視野が狭いままではいられない。よそのかまで飯を食えという言葉もあるように、一度異なる文化に触れてみるのも必要だろう。それに、お前様に洋服姿を見て欲しいという気持ちもある」

「なんていうか……そう言ってもらえると光栄です」

 なんて、返事を返すだけで精一杯だった。

「さて、仕事に戻ろう。お前様は七緒の手伝いをしてやって欲しい」

「はい。なにかあれば呼んでくださいね」

 僕は振袖さんの言葉に甘え、運んできた丸太をそばにまとめてその場を後にした。

 七緒さんはというと、庭の一角にあるバーベキュースペースにアウトドア用のテーブルと椅子いすを並べている最中だった。重い荷物を一人で準備させてちょっと罪悪感。

「僕も手伝うよ」

「……」

 おお……ガン無視だよ。

「なにをすればいいかな?」

 心が折れかけながらもう一度尋ねると、七緒さんは近くに置いてあった箱を指さす。

 中を開けると、そこには食器や料理器具が入っていた。ログハウスのキッチンから運んできたんだろう。これをテーブルに並べろってことだよね?

 僕はそれらを準備しながら、恐る恐る七緒さんに聞いてみる。

「七緒さん……怒ってる?」

「……」

「車の中でおっぱいをエアバッグ代わりにしたのを怒ってるの?」

「…………(怒)」

 七緒さんのこめかみがピクリと動くだけで、やっぱり無視である。

 いやまて。一度や二度じゃ、聞こえていなかった可能性も捨てきれない。

 もう一度──。

「七緒さん。透けて見えるピンクのブラジャーも可愛いね──ひぃ!?

 僕の手元めがけてフォークが飛んできた。

「ちょ──あぶないでしょ!」

 やっぱりちゃんと聞こえてるじゃないか!

「なんで無視するのよ」

 七緒さんはようやく僕に視線を向けて口を開いた。

「僕が無視? いやいや、車の中でも今も、無視したのはキミの方じゃ……」

「メールの件よ」

 七緒さんはそうつぶやくと、不満そうな顔で口をへの字にした。

 ああ、そうか。七緒さんがこんなにも不機嫌なのは、僕がメールを数日放っておいたせいか──って、当たり前だよね。結構な日数放置したわけだし。察しが悪すぎだろ僕……。

「ごめんね。なんて返していいかわからなかったんだ」

「本当に? 無視したわけじゃないの?」

「うん。返さなくちゃとは思っていたんだけど、忙しいのもあってさ……」

 僕が頭を下げると、七緒さんは小さく呟く。

「嫌われ……思った……」

「え? なに?」

 怒りから一転して落ち込む声のトーンを拾いきれない。

「ごめん。よく聞こえなかったんだけど……」

 僕が聞き返すと、七緒さんは小さく鼻をすすり──。

「なんでもない。それより、織姉おりねえとなにかあったんでしょ?」

 七緒さんはメールで送られてきたメッセージと同じ台詞せりふを口にした。

 こうして面と向かって言われても、なんて返していいか言葉に迷う。

「ふーん……やっぱりなにかあったのね」

 そんな僕の状況を察してか、七緒さんは確信的にそう言った。

 メールをしたのに連絡がなければ、僕になにかがあったと察するだろう。それくらいには僕らの仲は深まっているはずだし、七緒さんはその辺の察しがいい方だと思う。

 そうでなくても、七緒さんは羽織さんの様子からなにかを察したのかもしれない。今はもう以前の羽織さんだけど、あの日の羽織さんは明らかに様子が違ったんだから。

 羽織さんの様子がおかしく、僕と連絡が取れない……気づく理由としては充分すぎる。

「そんなことよりさ」

 だけど僕は、バレバレなのに話をにごした。

「聞いたよ。ウエディングドレスのモデルオーディションを受けるんだってね」

「……瑞穂みずほさんに聞いたの?」

「うん。そのチョイスにはちょっと驚いたよ。理由でもあるの?」

「別に……たまたま目に留まっただけ。でもまあ……女の子ならあこがれるでしょ?」

「なるほどね。お嫁さんは女の子にとって夢のゴールみたいなものだって聞くしね」

「そう。そんな感じよ。別に深い意味はないけど……」

 七緒さんにとって直近の夢はモデルになること。

 その先にも夢が続いているのだとしたら、それは誰かのお嫁さんになることだったりするのかな。うん。女の子らしくて可愛いんじゃない?

「応援してる。七緒さんはなにも気にせず、オーディションのことだけ考えてよ」

 結局僕は、七緒さんに事情を話さなかった。

 七緒さんの質問から逃げた訳じゃなく、僕なんかに余計な気を使わせたくなかっただけ。

 僕は、七緒さんがどんな想いでオーディションに臨んでいるかを知っている。

 僕は、七緒さんが今までどれほどの努力をしてきたかを傍でずっと見てきた。

 だからこそ、僕のことなんて気にせずにオーディションに集中して欲しい。

 僕と羽織さんの間にあったことはいまだ僕の頭の中でモヤモヤしていて、あの言葉の意味をきちんと理解できているかもわからない。そんな状況で七緒さんに気を使わせたくなかった。

「僕にできることならいくらでも協力するよ。そういう約束だし、僕ら二人の夢をかなえるための第一歩──一緒に頑張ろう」

 僕は目いっぱいの笑顔を七緒さんに向ける。

「……うん。ありがと」

 七緒さんはどこかに落ちない表情を浮かべた。

 だけど、それ以上踏み込んではこなかった。



 僕ら居残り組の準備が一通り終わった頃、姉さんたちは大量の食材を抱えて帰ってきた。

 僅かに日がかたむきかけた夕方過ぎ。晩御飯に丁度いい時間。

 料理の得意な七緒さんと羽織さんが食材の下ごしらえを終えると、振袖さんの仕切りでバーベキューは始まった。

「ポメ子殿、そんなに肉ばかり食べてないで野菜も食べようではないか!」

「うん! わかった!」

かたよった栄養は胸の発育にもよくないとあるじ様に教わっただろう」

「うん! 教わった!」

 みんなで火を囲みながらスタンディングでバーベキュー大会。

 トングを手にする振袖さんはポメ子のお皿に野菜をどんどん放り込むんだけど、比率的にあまりにもお肉の量が少ない。そのせいか、徐々にポメ子がご機嫌ななめになっていく。

 そう。実はポメ子がなんでも食べるのはお菓子だけであって、野菜は苦手なんだよね。

 結果、ポメ子は食べきれない野菜を僕のお皿に放り込み、ポメ子が野菜を食べきったと勘違いした振袖さんは更にお皿に野菜を追加する。その光景がまるで早食いわんこそば大会。

 おかげで僕はまだ一切れもお肉を食べていないんだけど……。

 しばらくすると、振袖さんが姉さんに呼ばれて(酒の相手に呼ばれて)ようやくわんこそば大会は終了。ちなみに姉さんはもうビール五缶目。食べずに飲んでいるのはいつものこと。

「やっと野菜地獄から解放された……」

 ほっと一息ついた頃には、すでにあみの上から肉がなくなっていた。

 僕はスーパーの袋からお肉を取り出しながら七緒さんに声をかける。

「七緒さんはお肉食べないのかい?」

 七緒さんはさっきから僕の隣で野菜をつまんでいて、お肉を一切れも食べていない。

「……ダイエット中です」

 そう言って、僕の隣からすっと離れて距離を取る。

 朝の時ほどではないけれど、まだご機嫌はあまりよろしくないようです。

 さっき話をした時も濁しちゃったし、一度ちゃんと話さないといけないかもしれないな。そうは言っても、いったいなんて話をしたものか……。

 そんなことを考えながら、とりあえずお肉を焼こうとトングをつかんだ時だった。

「創真君、私が焼いて差し上げます」

 声をかけてくれたのは確認するまでもない。羽織さんだった。

 羽織さんは先ほどまで七緒さんがいた場所に立って僕に手を差し伸べる。

「うん。ありがとう」

 僕は羽織さんにトングを渡す。

 あの日以来──つまり夏休みに入って以来、こうして言葉を交わすのは初めて。

 羽織さんはやっぱり何事もなかったかのようにいつもの笑顔。僕らを包む空気はこんな時ですらいつもと変わらず穏やかすぎて……なんだか逆に不安になってしまった。

 なんだろう……あの言葉は、僕の考えすぎだったんだろうか?

 そんな考えが頭をよぎる。

「創真君。この度は誘っていただいてありがとうございました」

 お肉の焼けるいい音がするなか、羽織さんはそう呟いた。

「いや、誘ったのは姉さんで、僕は今日の今日までなにも聞かされていなかったんだよ。まさか羽織さんと振袖さんも誘われていたなんてね。お礼なら僕じゃなくて姉さんに言って」

「そうですね。ですが、瑞穂さんに誘っていただけたのも、私たちが普段から創真君と懇意にさせていただいているからです。そう思えば、創真君にもお礼を言うべきかと思いました」

 そう言われると返す言葉がない。素直に受け止めておくべきだろう。

「モデルを目指す七緒にとってもよい経験になるはずです。本当にありがとうございます」

 ここまでストレートに感謝を述べられると、なんともむずがゆい気持ちになる。

 しかもその表情は、先日のような決意に満ちたものではなく、やっぱり僕のよく知る女の子のそれだったりして……僕は『あの言葉』の意味をどうとらえていいかわからなくなってしまう。

「羽織さんと振袖さんもモデルを引き受たんだよね?」

 僕は当たり障りのない言葉を返す。

「はい」

「余計な心配だったらごめん。羽織さんはこういうの、あまり得意じゃないと思うんだけど……引き受けてよかったの?」

 そう尋ねると、羽織さんは僅かに苦笑いを浮かべた。

「創真君のおっしゃる通り、私は確かにこの手のことを得意としません。ですが今回は、引き受けたのではなく私が自らやりたいとお願いをしたのです」

「え──」

 あまりにも意外すぎる一言に、一瞬理解が追いつかなかった。

 羽織さんが自分から申し出た?

「そうなんだ……」

 びっくりしすぎてそんな言葉しか口からでない。

「もちろん不安はあります。ですが、できる限りのことをやりたいと思っています」

 その瞳には、並々ならぬ決意が窺えた。

「……大丈夫だよ。前にショップで見せてくれた羽織さんのウエディングドレス姿──凄く似合っていた。羽織さんならきっと大丈夫」

 羽織さんがどんな想いでモデルを引き受けたかはわからない。

 だけど、この言葉は本心だ。あの時の羽織さんは凄く綺麗きれいだった。

「僕にできることがあれば手伝うよ。頑張って」

「でしたら……」

「ん?」

「でしたら……一つ、創真君にお願いがあるのです」

「お願い? いいよ。なんでも言って」

 そう答えると、羽織さんは手をとめて僕に向き直る。

 その頰は、燃える薪の火を受けてか、少しだけ赤く染まっていた。

「この旅行中に、ぜひ私と一度──」

「デートをしようではないかお前様!」

 そんな空気をぶち破って乱入してきたのは振袖さん。

 現れるなり思いっきり僕に抱きついてきた。

「いきなり絞め技を決めないでください! ていうか姉さんの相手はいいんですか!?

「瑞穂お義姉様なら気持ちよさそうに眠ってしまわれたぞ。ほら」

 振袖さんが僕に抱き付きながら指を差す。そこには飲みすぎてつぶれた姉さんと、おなか満腹幸せそうな寝顔を浮かべながら姉さんに抱き付いているポメ子の姿があった。

 ああ……家のリビングでよく見る光景だ。

「そんなことよりもお前様、先日の約束、忘れてはいないだろうな!」

「約束……と言いますと?」

「まさかお前様! 忘れてしまったとでも言うのか!?

 驚きから一転、振袖さんは瞳をうるうるとうるませながら悲壮感に満ちた表情を浮かべる。

 いや……僕は忘れてはいないんですけど、できれば振袖さんに忘れていて欲しかった。

「コスプレ衣装作成を手伝う代わりに、夏休みに入ったら私とデートをする約束だったではないかぁ……」

 それを言ったら羽織さんとも約束をしてるんだよね。まだリクエストはないけれど。

「いやーもちろん覚えてますよー」

 若干雑に返すと、振袖さんの表情がぱっと明るくなる。

「ありがとうお前様!」

「んぐあ!? ちょ──お願いだから本気で抱きしめないで! 折れる折れる!」

 これがおっぱいの大きな女の子だったとしたら、折れるほど抱きしめられる痛みと押し付けられるおっぱいの気持ちよさを差し引きして耐えられる。

 痛みと気持ちよさの等価交換というか、むしろ気持ちいいなら痛くされてもいい。

 だけどこれは耐えられない。ご褒美ほうびのないむちじゃMは快感を覚えないんだよ。

 いつもなら振袖さんの暴走を沈静化してくれる羽織さんも、こればかりは言い返せない。

 唇をきゅっとすぼめながら『殿方の奪い合い……ライバルは姉……火曜サスペンス劇場』とか、なんだか不穏な空気に満ちた三段活用。ちょっと目が座っているのが心配……。

「はぁ…………」

 少し離れて僕らを見ていた七緒さんが、わざとらしく大げさに溜め息をついた。

 目を向けると、さっきまで野菜だけ食べていたのに今はガツガツお肉を食べながら僕をにらむ。

 ……やめてよ。そんな瞳で睨まれたらゾクゾクしちゃうじゃん。

 いや──そうじゃなくて、そんなにお肉食べまくって大丈夫?

 ダイエットって言っていたのは、モデルとしてボディラインを気にしてのことだと思うんだよね。ほら、七緒さんてお尻のサイズがナイスラ・フランスじゃん?

 その食べっぷりは、まるでスイッチが入ったようにすさまじい。

「甘いものは別腹だから!」なんて、過食の言い訳の常套句じょうとうくでも言い出しそうな勢いだけど、そもそもお肉はデザートじゃない。お肉をむさぼる姿はまるでポメ子の再来か?

 やけ食いのように見えなくもないけれど……うん。気のせいってことにしておこう。

 触らぬ神にたたりなし。触らぬ尻に冤罪えんざいなし。女の子の触れちゃいけないところっておっぱい以外にもたくさんあると思うんだよね。主に体重の話題とかさ。

 結局、振袖さんの拘束はしばらく続き、羽織さんが言いかけた言葉を聞けないままバーベキューは終わりを迎えた。

 僕の最後の仕事が姉さんとポメ子の部屋への運搬とか、やってることが自宅と変わらない。

 なんだか初日から凄く疲れた……。


ω


 バーベキューの片づけを終えて部屋に戻った僕は、さっそく作業に取りかかる。

 なんの作業かなんて言うまでもなく、七緒さんに渡すビスチェの仕上げ作業。

「よし……」

 机に向かい、姉さんが用意してくれていた作業道具に目を向ける。

 それにしても凄い。さすがにプロが使っている道具だけあって、ミシン一つとってもめちゃくちゃ高性能。細かな道具まで含めても、僕の手持ちの道具が物足りなく感じるほど。さすがにテンションあがっちゃうでしょ。

 僕は道具を一通り堪能した後、ビスチェを手に取って眺める。

 おっぱいを収めるカップは一ミリのずれもなく、胸元をより美しく魅せてくれるだろう。

 そのおっぱいを支える縁の下の力持ちたるアンダー部分と、ウエストまでの美しいラインを演出するコルセット部分には、ワイヤーをいれて補整力を強くした。

 身体のむくみに合わせてきつさを調整できるように、フロントジッパーにして背中はひもにしたのもこだわりだったりする。これならどんな状況でも対応できる。

 完璧のできといっていい。後はレースの刺繡をほどこすだけ。

 そう──服部家の家紋にして、三姉妹の象徴たる紫陽花の花を。

「紫陽花の花か……」

 改めて紫陽花の花言葉を思い出す。

『高慢』『貴方は美しいが冷淡だ』『辛抱強い愛情』『ひたむきな愛情』

 その意味は、変わることを恐れない女性の器用さと、一途いちずに想う深い愛情を表している。

 美しさの本質とはなにかを考えさせられる言葉であり、事実──僕は三姉妹と過ごす日々の中で何度もその言葉の意味を実感し続けてきたはずだ。

「……」

 はからずも羽織さんの顔が目に浮かんだ 。

 終業式の日、僕に『胸をさわってください』と言ってくれたあの表情は、いつかの春祭りで見せてくれた真剣な表情と同じ。その言葉の裏に透けて見えた羽織さんの想いは、人に恋をしたことのない僕でも気づかずにはいられない。

自惚うぬぼれすぎなのかな……」

 思わず疑問が口から漏れて手が止まる。

 頭の中でぐるぐる考えながら進める作業が順調なはずがない。

 でも、真偽はともかくとして──。

「羽織さんがモデルか……羽織さんにもビスチェを作ってあげたいな」

 そう呟いた時だった。

「彰ちゃーん。お風呂空いたから入ってきたらー?」

 ノックもせずに入室してきたのは姉さんだった。

 お風呂上がりのラフなパンツスタイルで牛乳片手に一気飲み。随分すっきりした顔をしていて、ついさっきまで酔っぱらっていた人には見えない。お風呂入ってさっぱりしたからかな?

「お風呂は一つしかないけど、女の子たちには彰ちゃんの後で入るように言ったから」

「うん。わかった。そうするよ」

 こんな気分の時はお風呂に入って一度リセットしてしまうに限る。

 僕は仕上げ作業中のビスチェを机に置き、着替えを持って部屋を後にした。



「おお……凄いなこれ」

 脱衣所で全裸になった僕がドアを開けると、そこは露天風呂だった。

 さすがに大浴場ってほどでもないけれど、かなりの大きさがある。十畳くらいのスペースに広がる岩の浴場で、湯気がただようなんとも風情のある露天風呂。

 僕は身体を洗ってさっそく温泉にかる。

「ふぅ……」

 少し熱めのお湯に感じたけれど、徐々に体が慣れてくると丁度いい湯加減。肩まで浸かってお湯を顔にかけると、あまりの気持ち良さと解放感に声が漏れた。

 平地と比べてかなり標高が高いせいだろう。頭上に広がる星空は空気がんでいて美しく、今にも落ちてきそうなくらいに近くに感じる。

 訳もわからず連れてこられたけれど、きてよかったな……。

 なんて、姉さんに感謝の一つもしかけた時だった。

「やはり風呂は温泉に限るな!」

「──!?

 ばかでかい声が脱衣所で響いた。

「三人揃ってお風呂に入るのは久しぶりですね」

「いつ以来かな? 小学校とか?」

 温泉に入って身体は温まっているはずなのに、僕の背筋が凍りついた。

 起きている出来事を察した瞬間──姉さんへの感謝が一瞬にして怒りに変わる。

 またか! またこのパターンか! 姉さんにすすめられてお風呂に行ったら女の子とバッティング。僕の家でお風呂に入っている七緒さんとはち合わせした時とは違うけどまたハメられた!

 なんて思いながら息を潜める。

「先に行くねー!」

 ガラリと開いた戸からテケテケ走ってきたポメ子がそのまま温泉にダイブ。

「ぶはっ!」

 思いっきり上がったしぶきが僕の顔に直撃した。

 なぜ身体を洗ってから入らない!

「あれ? 彰人君?」

 濡れた顔を手でぬぐうと、そこには首をかしげる全裸のポメ子。

 小学校以来、久しぶりに目にするポメ子の全裸はあの頃となにも変わらない。リアス式海岸を思わせる断崖絶壁だんがいぜっぺき。おっぱいの神に慈悲はないのか。

「彰人君も一緒に入りたかったの?」

 ポメ子は不思議そうに首をかしげる。

 先に入ってきたのがポメ子で助かった。さっさと出て行ってもらって僕が入っていることを七緒さんたちに伝えてもらえばセーフ──と思うと同時、二度目のガラリ。

 ヤバい──僕はとっさにポメ子を摑んで岩陰に隠れた。

「さて、湯加減はどうだろうか」

 目の前に広がる眼福な光景。おっぱいのボリュームは三者三様。だけど、そのプロポーションの素晴らしさに、僕は見てはいけないと思いつつも目が離せなかった。

 ぱだかで身体を隠そうともしない振袖さん。おっぱいのボリュームはつつましいながらも、武道をたしなんでいるせいか全体的に引き締まった細身のライン。

 七緒さんは身体の前をタオルで隠しているけれど、はみ出す横乳は隠しようがなく、その我儘わがままボディはなんとも女性の魅力が溢れている。モデルを目指して毎日ストレッチを始めたおかげか? 二センチくびれたウエストを僕の煩悩ぼんのうノ目は見逃さない。

 そして──中でも僕の目を釘付けにしたのは羽織さんだった。

 大きめのタオルを身体に巻いて鉄壁の守りを敷いているけれど、その線の細さは隠しようがない。まさに究極的と形容していいバランス。

 身体のバランス指標ことゴールデンカノンに当てはめれば、その全てが理想的な数値を示すに違いない。三姉妹きってのトータルビューティー。日本人女性の理想体形にして僕の理想。

 あまりの美しさに僕の煩悩スカウターがぶっ壊れそうな美的指数だ。

 僕に絶賛視姦しかんプレイされているなんて思いもしない三人は、こちらに背中を向けて身体を洗い始める。その背中がまた色白で艶めかしい。目が離せないよ!

 しばらく眺めていると、不意に羽織さんが立ち上がり、こちらに向かってきた。

 まずい──僕は温泉を堪能するポメ子を連れてさらに岩陰に回り込む。

「彰人君どうしたの?」

「頼む! 黙っててくれ!」

 僕は小声で叫んでポメ子の口を押さえる。