Tips3 ハンネス達の反省会
「一方的にやられたな……」
「私とエレノアさんなんてなにもさせて貰えませんでした……」
お通夜のような雰囲気のパーティーにラインとチェリーの呟きが重なり、さらに空気が重くなる……やっぱり俺は見惚れてなんかいねぇ! 断じて奴を許さん! …………けど、この空気をなんとかしねぇとな。
「おら! いつまでもしょげてんじゃねぇ! 反省会はじめんぞ!」
「ハンネス……そうだな、今は落ち込んでる場合じゃねぇよな!」
「そうですね、次こそは勝つために」
やっと元気を出しやがったか……そうだ、次の機会があれば確実に奴を仕留める。そのためにはなにが悪かったのか確認して次に活かさなければならない。
「まず俺達の敗因はなんだ?」
「それは……冷静さを失った事か?」
少し恥ずかしそうにラインが意見を言う……確かに最初の広場や地下墳墓でも俺達の内の誰かが冷静さを欠いていた……。
「確かにみんな怒ってたもんねぇ?」
そう言ってケリンは笑いやがるが……意外な事にこいつが一番冷静に対処してたかも知れねぇ。
「お前に指摘されるのは癪だが、確かにその通りだな」
「あぁ、ケリンにだけは言われたくなかったが」
「うぅ……悔しいです」
「私も焼きが回ったかしら?」
「不覚……」
「ちょっとみんな酷くない?!」
あんまりな言いようにケリンが吠え、みんなが釣られて笑う……やっぱりムードメーカーのこいつがいねぇとどうしようもねぇな!
「じゃあ他にも──」
《ワールドアナウンス:パーティー名レーナと下僕達が『始まりの街』・地下墳墓を初攻略しました》
《ワールドアナウンス:これより『始まりの街』・地下墳墓のボスが弱体化されます》
「──あ?」
なんだと? 地下墳墓の初攻略だぁ? ……………………嘘だろ?!
「……ハンネス、お前今すごい顔してるぞ」
「まさか先を越されるとはね……」
「レーナと下僕達だって、面白いパーティー名だね?」
「面白くねぇよ!!」
ちくしょう! なんだって先を越されちまったんだ! これがハロルド達のパーティーならまだ納得出来たけどよ……こんなふざけた……名前すら聞いたことのねぇ奴らに初攻略を獲られるなんて納得出来るか?!!
「許さねぇ……」
「あー……これはおこだね」
「そうね、激おこプンプン丸ね」
「うわぁ、古い言い方ですね!」
仲間達がなんか言ってやがるが今は正直それどころじゃねぇ! というよりもここで大人しく反省会なんかしてられねぇ!
「行くぞ……」
「……ハンネス、どこに行くつもりだ?」
どこだって? そんなもん…………。
「決まってんだろ?! ササッと地下墳墓を攻略して、レベリングだよ!!」
「うへぇ? マジか?」
「いいから行くぞ! 絶対に負けてたまるか!」
「確かに負けるのは悔しい」
ほら見ろ、無口なミラが自分から同意するくらいだ! お前らも悔しいんだろ? だって俺達は…………。
「……私も負けたままなんて、ゲーマーとして許せません!」
「そうね、悔しいものね」
「まぁ、そうだけどね?」
「そうと決まったら行くぞ!」
「その前にポーション類の補充な」
「……そうだな、悪い」
テンション上がったまま突撃するところだった……いつも冷静なラインが言ってくれなきゃ危ないところだったぜ……。
「じゃあ、補充してから突撃だ!」
「「おー!」」
俺の仕切り直しにみんなで応えてくれる……それに満足気に頷きながら攻略の準備を進めていく。
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「アイツら後で覚えてろよ……」
「まぁまぁ、面白かったからいいじゃない」
「良くねぇよ!」
こちらをニヤニヤとした表情でからかってくるエレノアに吠える……クソッ! ジェノサイダーの野郎…………!! 啖呵を切ってる最中に問答無用で殺しにくるか普通?! ありえねぇだろ!! しかもさらに腹立つことに神殿跡地にリスポーンした途端に他のプレイヤーから胴上げされちまった……!!
「そもそもなんで胴上げされなきゃならねぇんだよ!」
「そりゃ、殺られ方が芸術的だったからだろ?」
「ふざけんじゃねぇよ!」
ケリンの奴め、完全に面白がってやがる!
「ふん、もういいから反省会すんぞ!」
「はいはい」
ぐぬぬ……仲間達がまだニヤニヤしてるのが気に入らねぇが、言っても無駄だって事がわかるからさらに腹が立つ! ……確かに俺が傍観者側だったら面白かったかも知れないけどよ……。
「それで一番の敗因はなんだと思う?」
開口一番にエレノアがそう聞くがそんなもん──
「──足手まといが居たからだろ?」
悔しい事に足手まといが居なければ勝てたとは断言出来ない……だが一番の敗因でもあるだろう。
「……確かに三回とも、ジェノサイダーちゃんってば周囲の人間を平気で盾や武器にするもんねぇ?」
「私の支援も完全とは言えませんでしたしね……」
ケリンとチェリーの指摘通りだな。あの野郎……平気でプレイヤーやNPCを利用しやがるし、バフなどの支援も上手く出来てはいなかった……。
「あの子のPSも異常だからねぇ……」
「大抵、なにかをする前に邪魔されたりするからな」
本当に異常だよな……なにかリアルで武術でも習ってたのか? だがラインも一応剣道してたはずだから、それにしても異常すぎるな。
「……本当に人間なのかしら」
「クエストでもないのに、NPCがあんなにアグレッシブだと色々問題だろ」
「まぁ、そうよね」
確かにシステムAIによって完璧な操作をされているNPCだって言われたら納得しちまうかも知れねぇな……特に軍用AIはハンパないらしいからな。
「……なら、こっちはゲーム的に強くなるぞ」
「どういうことだ?」
「レベルを上げて、クエストやシナリオを攻略して、新しいスキルやレアな装備をゲットして、クラスも進化させて、PSを上回る圧倒的なデータの差で殴る!」
そうだ、どうせPSでは勝てないんならそれを補って余りある『ゲーム的な強さ』を手に入れればいい!
「確かにゲーマーらしい」
「だろ? ミラもそう思うよな?」
「確かにその方法が勝機もありそうだな」
「なにより私達ゲーマーらしいです」
そうだよ! 俺達はゲーマーなんだ、わざわざ相手の土俵に立つ必要はねぇ! 俺達のやり方で強くなって倒してやる!
「よっしゃ! レベリングと攻略に行くぞ!」
「……レベリングしかないのか」
「昔から言うじゃない? …………レベルを上げて物理で殴るって」
「ケリン、それは少し違う気がするぞ?」
「細かい事はいいんだよ、要は強くなってアイツに勝つ!」
今に見てろ? お前が今どこでなにをしてるか知らんが、いずれはぶっ倒してやるよ!!
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「ちくしょう、また負けた!!」
「まぁまぁ、まだレベリングの最中だったし仕方がないだろ?」
憤慨する俺をラインが窘めてくるが……悔しいものは悔しいんだよ!! 確かにレベリングの途中だったし、偶発的遭遇だったけどよ!!
「それに仲間が居るなんて聞いてねぇ!!」
「まぁ、それは確かに」
「すごくバフかけてましたし、上手かったですよね……私も見習わなきゃ」
今度会ったら勝つって意気込んでたのに、出鼻をくじかれちまった……。
「今回は割と早くやられちゃったわね」
「……悔しい」
初っ端からヒーラーであるチェリーがやられてしまったのが痛かったな、アレがなけりゃもう少し持ったかも知れねぇ。
「ハンネスのスキルで体勢崩したと思ったら変な挙動もしたしな」
「ありゃなんのスキルだ? 反則だろうが!」
「反則じゃないわよ」
エレノアが苦笑するが……アレはないだろ! まるで誰かに引っ張られてるみたいに!!
「……そういえばケリンが静かだな?」
「そういえばそうだな、どうした?」
ラインの言葉にいつもヘラヘラしてるケリンが今までまったく喋ってなかったと気付く。気になってケリンの方を向くと──
「──お前どうした?! 顔が真っ青だぞ!」
「……大丈夫ですか?」
「長時間プレイしすぎて酔っちゃった?」
あんまりな顔色の悪さに思わず叫んでしまった……みんなも心配してケリンの周りに集まってくる。
「確か、最後に残ったのお前だったよな? ……奴になにかされたのか」
ラインの質問に固唾を呑む……もしそうであるならば絶対にあの女を許しはしない! 見ればみんなも顔を強張らせ、ケリンの答えを待つ。
「……いや、大した事じゃないんだけど」
「? じゃあなにがあったんだ?」
「……ちょっと自分の口では説明したくないから動画送るね」
そうしてケリンから送られた動画を見れば──
「──これは酷い」
ミラが一言感想を述べるが……そんなもんじゃねぇ! 女にはこの痛みが、恐怖がわかる訳ねぇ!! 俺はラインと二人で内股になりながら、そっとケリンの肩を抱くのだった…………いや、本当に災難だったな、マジで…………。