「よもや初見で全て躱されるばかりか反撃まで貰うとはな……」
うわ、めっちゃ偉くて強そうな方が出てきましたね……とりあえず確認しましょう。
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重要NPC
名前:アレクセイ・バーレンス Lv.55
カルマ値:175《善》
クラス:爆炎騎士 セカンドクラス:金剛騎士 サードクラス:火炎魔術師
状態:普通
備考
バーレンス辺境伯・長子
バーレンス辺境伯領・騎士団長
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……強すぎなのではー??
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「ふぅ……」
ひっきりなしに来る部下からの報告に対し命令を飛ばし続け、さっきやっと落ち着いたところだ。
「お疲れじゃな?」
「こうも混乱が大きければ仕方ありません」
早期に詰め所に対する爆破は陽動だとわかったのは幸いだが、それによる市民の混乱の方が問題だった……。
たった半月前に三桁に届く建物が被害に遭う大火災を経験したばかりなのに、そこに複数箇所同時爆破だ。その混乱を抑えるためむしろそっちに手を多く取られた……。
「ふむ、まぁ陽動とわかっただけ良しとしよう。して敵の本命はやはりここか?」
「……おそらくは」
明確に交戦があったのは貴族街と下町を隔てる門が破られ、内部に侵入者があってからだ。詰め所の方で何者かと戦闘行為をしたという報告は来ていない。
敵は陽動と戦力の分散を狙って詰め所を爆破し、確実にここに迫ってきている。
「戦況の方はどうじゃ?」
「……そちらも芳しくありません。差し向けた兵士はほぼ壊滅状態かと」
最初は部下からの報告に耳を疑った。貴族街を守る兵士の戦闘力は下町の比じゃない。それこそ私自ら鍛え上げた軍隊だ。
それがほぼ鎧袖一触で薙ぎ払われているなど信じられる訳がない。
「ふむ、お主は出なくてよいのか?」
「ご心配なく。ギルドを通じて冒険者達にも応援を頼みました。それにどうやら渡り人達が自主的に前線に向かっているようです」
「そうか……」
元々ジェノサイダーちゃん……だったか? 渡り人の間でそう呼ばれている指名手配犯も、確か同じ渡り人という情報がある。もしそれが本当ならば当然とも言えるが素直にありがたい。
そうやってさらに父である領主と今後の対応を相談していると──
「報告! 領軍、冒険者、渡り人共同戦線はほぼ崩壊しかかっております!」
──泣きそうな顔の部下がそう報告にやってきた。
まさか戦線が崩壊するとは……仕方あるまい。出来れば父上の側を離れたくはなかったが……。
「……父上、出ます」
「そうじゃな、行ってくるがいい」
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そうして駆け付けた現場は酷い有様だった。お世辞にも人の街とは思えぬ惨状で、見渡す限り人の死体で溢れていた……。
「……」
少し目を見開き、驚きの表情をしている目の前の女がこれを作り出したのだろう。たった今この俺の秘技を初見で躱し、あまつさえ反撃までしてみせた事から、女だからとか見た目で侮る事はない。
第一、街に悲劇を齎し、俺の部下を含め大多数の善良な人間を殺傷したのだ。今さら手心を加えるなどありえん! むしろ全力でもって屠ってやる!!
「……よく見たら領主の息子じゃないですか」
「? それがどうした……?」
なんだ? 領主の息子ならどうしたと言うのだ?
その言葉を発したと同時に奴の表情が消え、軽かった雰囲気が重くなる……。
「ならどうあれ殺さなくては……」
「っ!」
──速い!!??!?
まだ相手を見くびっていたか。奴の評価を上方修正しながら首を狙った突きを最小の動きでもって躱し、カウンターで斬り払う──!!!
「シッ!」
それすら躱され、反撃される。奴の持つ短刀が執拗に首を狙い、それを避け、時に防ぎつつこちらも大剣を振るう。
こちらの大上段の一撃を短刀の刃を当てながら逸らし、目潰しを狙ってくるがそれを裏拳で弾く。
それによってバランスが崩れた相手を斜め下から斬り上げるが、奴は膝を曲げて回避しながらこちらにガラス片を投擲してくる。
「……思いの外やりづらい」
すばしっこい動きでこちらの動きを躱し、短刀による攻撃に投擲を織り込んでくる……。
短刀による攻撃が全て急所狙いなのはわかりやすくていいが、それ故に無視出来ない。そこに目潰しや行動阻害を目的にした投擲による攻撃……ハマるとここまで厄介だとはな。
この攻防で大きな怪我はないが、いくつかのかすり傷を貰ってしまった……最後に血を流したのは何年前だったか……。
「仕方ない、街中では使いたくなかったが……」
すでにこの区画は廃墟になっている。この上さらに破壊されたところで変わりはしないだろう。
「私に全力を出させるだけでなく、本気にさせた事……後悔したまえ」
▼▼▼▼▼▼▼
お偉いさんにそんな事を言われてしまいました。こちらも相手の防御が堅くてなかなか攻めきれてないのですがね?
まぁ愚痴を言ったところで──
「『身体強化・爆炎獅子』」
──おや?
「『身体強化・羅刹金剛』」
──これは?
「『ハイエンチャント・グローリープロミネンス』」
──なかなかに?
「『宣誓・我が敵を討つための剣』」
──まずいのでは?
「『宣誓・我が民を護るための盾』」
全ての強化が終わったらしき偉い人は、全身から青白い炎を吹き出し、顔は鬼の如く真っ赤な凶悪顔で、立っている周囲の石畳が融解しており、状態が──
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重要NPC
名前:アレクセイ・バーレンス Lv.55《+25》
カルマ値:175《善》
クラス:爆炎騎士 セカンドクラス:金剛騎士 サードクラス:火炎魔術師
状態:
爆炎獅子《STR上昇:特大・AGI上昇:特大》
羅刹金剛《VIT上昇:特大・最大HP上昇:大》
属性付与《攻撃に火炎属性:特大》
宣誓:守護神《STR上昇:極大・VIT上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
備考
バーレンス辺境伯・長子
バーレンス辺境伯領・騎士団長
バーレンス辺境伯領の守護神
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……やはり強すぎなのではー?????
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これは……なかなかに不味い状況と言えるでしょう。
近づくだけでスリップダメージがありそうな見た目してますし、迂闊に近づくのは悪手でしょうね……。
まぁ超絶強化の代償にこの状態は三十秒と少ししか持たな──
「っ?!」
──一瞬にして距離を詰められ左腕を斬り飛ばされてしまいました。まったく前兆すら見えませんでした。
咄嗟にカウンターを放ち首筋を浅く切り裂く事は出来ましたが、左腕を犠牲にしたにしてはしょっぱい結果ですね。
「ジィィィイヤァァァア!!!」
……この人大丈夫ですか? ちゃんと理性残ってます? 左腕を咥えて即座にその場から離れ毒煙玉を置き土産です。
「がァッ!」
うわ、あの人、突撃の衝撃で煙を吹き飛ばしましたよ……これは、無理に倒そうとせず時間稼ぎや短縮を狙っていった方がよさそうです。
──なので積極的に周りで佇んでいるプレイヤー達の群れに突っ込みます。
「っ?!」
「ちょっ?!」
「ジェノサイダーちゃんマジ容赦ない……」
「散開しろ! 巻き込まれるぞ!」
いいえ、逃がしません。退路を三田さんの《聖壁》と火薬玉の投擲、影山さんたちの《影縫い》で大体の足止めをします。
全員とはいきませんが大多数をその場に留め、積極的に盾にします。
「ググッ!」
やはり読み通り部下の生き残りやプレイヤー達まで巻き込まないだけの理性は残っていますね。まぁちゃんと剣を振れているのですから理性がないとおかしいのですが……。
プレイヤー達を盾にしつつ自作ポーションで左腕をくっ付けます。三田さんの光魔術による回復と回復効果促進とリジェネ効果がつくポーションも追加で飲んでおきます……ちゃんと動くようですね、良かったです。
「まったく困ったものです……」
逃げ回りながらあちこちに毒煙玉をばら撒いていきます。
最初からこっちが不利だったというのにこの超絶強化はないですよね。作戦通りにいくとよいのですが──
「おい! 騎士のあんちゃん、俺達プレ……渡り人は死んでも生き返る! 遠慮なくやれ!」
「そうだ! 躊躇せずやれ!」
「俺らごとやれ!」
──さらに不利になりましたね、余計な事を……。
「俺ごとやってくれ! へへっ、お前との冒険楽し──」
「ジィッ!」
あ、ふざけてた方が巻き込まれてリスポーンしていきましたね……って、悠長に観察してる場合ではありませんね、ものすごい勢いでプレイヤー達を巻き込みながら突っ込んできます。
火薬玉や毒煙玉を投擲して目くらまししつつ、大きく横に逸れます──が腹を切り裂かれてしまいましたね。
「ものすごい勢いでポーション類が消費されていく……調薬スキルを取得してて良かったですね」
盾にならないのならばせめて武器になれとばかりに、プレイヤーに火薬玉などを仕込んで投擲します。
もちろん迎撃されますが関係ありません。一秒にも満たないですが三田さん達の魔術でも一瞬なら足止め出来ます。その間に出来るだけ距離を稼ぎつつまた投擲です。
「俺らがジェノサイダーちゃんの武器になっている件について」
「その前は盾にもなっていたし意外と優秀なのでは?」
「最終兵器俺達」
近づかれれば短刀でいなして、逸らし、受け流して凌いでいきます。
突進と共に放たれる突きを、刃をたて半身になって躱し、急ブレーキからの振り返りの勢いを乗せた薙ぎ払いを地面に伏せて回避し、その低い姿勢のままアキレス腱を切り付けます……が効いてるのかイマイチわかりませんね。
「グガァッ!」
っ! ヤバいです、ここにきてスピードが上がりました。こっちは戦場に居る人数が減って称号の効果が落ちているというのにこれでは──
「はぁっ!!」
──刹那の瞬間に放たれる斬撃を、気合いの咆哮をもって自身に喝を入れ、半ば意地で受け流します。
「……ふぅふぅ」
腕が痺れますし息が切れてきました。あちこち切り裂かれながら耐えています。致命傷じゃなければいいやという感じですね。もう持ちませんよ、まだですかね?
「シッ!」
「ガァッ!」
「フッ! ハッ!」
「ググゥ!」
突きで肩を、薙ぎ払いで腹を、振り下ろしで右腕を、逆袈裟で太ももを、回転斬りで頬を切り裂かれながら紙一重で弾き、逸らし、流して、避ける──
「なるほど、これかヤムチャ視点」
「なにしてるのかまったくわかんねぇ」
──が、左脚を斬り飛ばされてバランスを崩したところに突撃されます。
……あぁ、これは避けられませんね。走馬灯のように鬼の形相をした騎士団長が突っ込んでくるのを眺めます。
これは私だけでなく井上さん達まで死んでしまいそうですね……。