第四章 暗躍
さて、学校から帰ってきて諸々の用事を済ませてログインです。
あれから数日が経っています。続きがしたくて堪らなかったんですよね。
「おはようございます、少し出てきますね」
「え、えぇ……」
宿屋の主人に挨拶しますが、こちらを怯えるように見るばかりです。一応返してはくれましたが……。
初日に泊まろうとした時拒否されたんですよね。だから指を二本ほど落としただけなんですけど完全に怖がらせてしまったようです……今後の課題ですね。
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さて宿屋から出たら隠密系スキルをフル稼働させます。一応私は指名手配されてる身ですからね。
今日はそのまま街をぶらつこうと思います。もしもの時のための逃走経路確保と『遊び』のためです。
改めて街を見渡すと近世東欧のような街並みでした。ワルシャワやブカレスト辺りを想像してくれれば丁度いいですかね? 領主の館はチラッと見た限りロシアっぽかったです、なぜでしょう?
異国情緒溢れる街並みを眺めながら歩きます。隠密系スキルを全開にしながら従魔達にも警戒して貰います。
観察する限りでは初日のような活気はなく住人達の顔も暗いですね。そしてなにより衛兵達が物々しい……二人一組ならまだわかるんですが、見掛けると必ず四人一組で行動してるんですよね。しかも見廻りの頻度が高い──確実に私のせいですね。
人目を避けるようにして路地裏に入っていきます。初日はやめときましたが、やはり道順覚えてマップに記録しておいた方がいいですからね。少なくとも損はしません。
路地裏に入って少しすると、表の眩い感じが無くなり完全にアウトローな雰囲気です。こういうのワクワクしますね!
そのままキョロキョロしながら歩いていると──
「おうおう、嬢ちゃん迷子かぁ?」
「おじちゃん達が道案内してあげようか?」
「俺達やっさしー!」
──チンピラに絡まれました。デブ、ノッポ、チビの三人組です。最悪です。路地裏の雰囲気に浮き足立って隠密と索敵が疎かになっていましたか、反省です……。
「なにか言えよ」
「ビビってんじゃね?」
「おじちゃん達怖くないか──」
まぁ、丁度いいですし今日の予定は変更です。
そのままデブの首を落として、残りの二人の両脚を逃げられないように切断します。
「「あ?」」
そのままチビの頭を踏み付けて、ノッポさんの顎を掴み壁に押し付けます。
「ぎゃああああ!!」
今ごろ状況把握が出来て痛みに叫んでますね。チビさんは頭を踏み付けてるので聞き取りづらいですが。
「少し五月蝿いです」
ガキャという間抜けな音と共にノッポさんの顎を外し、ガコンっという音と共にまた顎をつけ直します。
「





っ!!」
少しだけ静かになったところで尋問開始です。
「あなたに聞きたい事があるのですが」
「わ、わかった! なんでも言う! だから助けてくれ!」
「それは良かったです。ではここ最近変わった事はありますか?」
「……す、数日前に表の方で大事件が起きたらしくて、失業者が裏側に溢れてどこも治安が悪くなっちまった!」
「なるほど」
どうやら私が暴れた影響で『始まりの街』は失業者などで溢れ、表だけでなく裏社会の治安まで悪くなっているようですね。
「他にはありますか?」
「……そういった余所者を集めて新興組織のヤガン・ファミリーが勢力を拡大し始め、ここら一帯を仕切ってるムーンライト・ファミリーに喧嘩を売り始めて、それに対して報復に出てって感じで抗争が増えてる」
なるほど、裏社会は裏社会で大変なんですねぇ? まぁそれは別にいいです。
「では最後に一つ、そのムーンライト・ファミリーの所まで案内してください」
「っ! 待ってくれ! それは出来ねぇ! お前みたいなのを案内したら殺されちまう!」
「……そうですか、それは残念です」
どうやら案内してくれないみたいなのでコレはもう要りませんね。顎を掴んで固定し口の中に油をドンドン詰め込みます。
「?? っ! ガブッ!」
そのまま松明を食べさせてあげて着火します。人間篝火の完成ですね! 目からも火を吹いてるのが芸術点高いです。さすがノッポさんです。
「さてチビさん、あなたは今ここで殺されるのと後で殺されるの、どっちがいいですか? というよりどちらで殺されたいですか?」
そう言って足を退けてあげます。
「
、
が
だ! 案内ず
が
〜」
うわっ、涙と鼻水で汚いです。靴を地面に擦り付けて拭いておきます。
言質は取ったので、その辺にあった物干し竿をチビさんの襟首に引っ掛けそのまま移動します。
「どちらですか?」
「
ぢ」
いい加減に泣きやんでくれませんかね? 目が見えないと道案内出来ないでしょうから潰せませんけど、鼻ぐらいは削いでおくべきですかね?
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「兄貴! またヤガン・ファミリーの連中でさぁ! 今度は魔薬ですぜ!」
「またか! これで何件目だ?!」
クソッ! ツイてねぇ! アジトの隠れ蓑にしている表の酒場で飲んでいたところに、この部下の報告だ。
この前ここら辺を仕切る幹部に昇進したばっかだってのに、昇進二日目に表の方で大事件が起きて一気に裏社会の住民が増えた……。
それだけならまだしもその余所者を吸収して、ヤガンの野郎が勢力拡大してこちらに喧嘩売りやがった! 破門されたんだから大人しくしてろってのに!
「それで、被害は?」
「廃人になったのが数名とこちらの組員に重軽傷者が十数人でさぁ」
魔薬が絡んでるにしては被害は少ない方か……それよりも問題なのは──
「それよりもこれを機にこちら側に領主から捜査の手が伸びる可能性がありやすぜ」
「……わかってる」
ったく、次から次へと……割と大きな国が魔薬で国民丸ごと滅んだ経緯から大陸条約で禁止されてるってのに、そんな物に手を出したらこっちまで危ねぇじゃねぇか。
「今回はさすがに見逃せねぇ、俺も上に掛け合ってヤガンの野郎を潰す許可を──」
「──こんばんはー? お邪魔しますね?」
「──誰だ?」
バンッ! という扉を開く大きな音と共に声が掛けられる。
ったく誰だ? 女なんか呼んだ奴は? ここは売春宿じゃねぇんだぞ? 振り返りつつ文句を言おうとして──
「っ! 兄貴! ロランの野郎が!!」
振り返った先には美しい女が居た。しかしながらその手には、両脚を失い鼻を縫い付けられ、両目を穿たれた変わり果てた姿のロランが襟首を掴まれていた。
一緒に居たダンとノスリの姿が見えないが……望みは薄いな。
「てめぇ、ヤガンのとこのもんか?」
「? 違いますよ?」
なに? てっきり遂にカチコミに来たかと思ったんだがな?
「じゃあ領主の手先か? それとも他のファミリーのまわし者か?」
「どちらも違いますけど……」
「じゃあどこの誰でなにが目的なんだ!!」
クソっ! 落ち着け俺、部下がやられて腹が立つのはわかるが冷静になれ……普通に考えて成人男性三人を一人で殺せる女は異常だ。相手の出方をよく見ろ、そして隙を見てこの場に居る全員で掛かるんだ……そこまで考えてから周りの部下に目配せをする。それぞれ頷きや目礼が返ってきた。
「私はですね、ムーンライト・ファミリー? っていう所のボスに用がありまして」
「そいつは運が良かったな、ここのボスは俺だ」
「そうですか? そうは見えませんけどね……」
ここのボスは俺だ、嘘は言ってない。仮に看破を使われても大丈夫なはずだ。
「あぁそうなんだよ、話なら奥で聞くからついてこい」
「……まぁいいですか」
腑に落ちない様子で女が馬鹿正直についてくる──間抜けめ、そのまま酒場の中心よりコチラに来た時がお前の最期だ。痛めつけて背後関係を洗いざらい吐かせた後は売春宿に売り払ってやる。
女に背を向けてある程度進んだところで、部下にだけわかるように合図を出す。
「死に晒せ!」
「覚悟しろ!」
「三人の仇!」
それによって周りで待機していた部下が一斉に女に襲いかかる。
「運も悪ければ頭も悪い、素直についてくる方が悪いんだ──」
──振り返りつつそう言う俺が目にしたのは、三人の部下の首が飛び五人の部下の腕が落とされ、さらに三人の部下の喉に持っていたものだと思われる武器がそれぞれ生え、二人が店外に投げ飛ばされたところだった。
「──本当にツイてない」
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《レベルが上がりました》
《既存のスキルのレベルが上がりました》
さて、いきなり襲われたのを返り討ちにしたところでもう一回お願いしてみますかね?
「今度は素直に話を聞いてくれますか?」
「……あぁ」
質問をしつつ襲ってきた内の一人を解体して遊んでいると、素直に頷いてくれました。最初からそうしてくれると手間がないんですけどね?
「うわっ、意外と腸って白っぽいんですね……」
「頼む。話をするし出来るだけ便宜を図るから、それ以上俺の部下を痛めつけるのはやめてくれ……」
「? 痛めつけ? ……まぁ、はい。遊ぶのはやめて話をしましょう」
「……助かる」
そのまま今度こそ奥の部屋に案内されます。途中ボス(暫定)の護衛でしょうか? 何人かついてきますが、みんな一様に私を化け物でも見る目で見てくるんですよね……父を思い出すので殺したくなります。
「……お前ら客人をジロジロ見るんじゃない」
「すいやせん」
さすがここのボスですね、気が利きます。これは人事査定プラスですよ。
「ここだ、入ってくれ」
「お邪魔します」
通された部屋は路地裏から入る場所にあるとは思えないくらい清潔感に溢れ、調度品もそれとなく部屋を彩り上品な感じでした。無駄に飾り付けてないのは評価高いです。
「そこに座ってくれ」
「では遠慮なく」
おおう、沈むようなこの感触……そしてどこからか現れた女の人が紅茶とお茶菓子を出して下がっていきます。
こういったところからムーンライト・ファミリーの財力が窺えますね。反社会勢力ってやっぱり儲かるんでしょうか?
「それで話ってなんだ?」
「この街の領主になりませんか?」
「……すまん、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」
おや? ちゃんと喋ったつもりだったのですが……。
「……削ぎましょうか?」
「ま、待ってくれ! 聞こえてた! 聞こえてました!」
いきなり冗談を言うだなんて。
「意外とユーモアがあるんですね?」
「ハハッ、そうだろ?」
でもあんまり言い慣れてなさそうですね、笑顔が引き攣っています。
「そ、それで領主にならないかとは? もっと詳しく説明して欲しい」
「そうですね。実は私、表で盛大に暴れて指名手配されちゃったんですよ」
「……お前だったのか(ボソッ)」
「そうなると表で堂々と買い物も出来ませんし、施設も利用出来ません。実際に宿に泊まるのに主人の指が二本犠牲になりました」
「……」
「『遊び』なら別にいいんですけど、そんな気分じゃないのにしないといけないのは楽しくないと思うんです。時間も無駄に取られますしね」
「……」
「なのでこの際ですから自分に都合のいい傀儡を作ろうかなと思いまして、どうです?」
「……待ってくれ、俺一人で判断出来る事じゃないしすぐには決められない。お前さんが本気で言ってるのもわかるが時間をくれ」
「そうですか、それでは残念ですが待ちましょう……ただし期限は一週間後です」
「わかった」
時間は掛かるそうですし、本当に渋々といった感じですが引き受けてくれました。良かったです。
「あとそれともう一つ」
「……まだあるのか?」
「えぇ、まだあるんです。出来れば性能のいい装備品や調薬に使う道具と素材が欲しくてですね」
「地下の倉庫にあるのを好きなだけ持っていってくれ……」
おお、太っ腹ですね! これは好感度高いですよ?
「それは嬉しいですね、ありがとう存じます」
そう言って席を立ち、早速向かおうとしますが──
「待ってくれ、最後に一つだけ聞かせてくれ」
「? なんですか?」
「お前さんは待っている一週間、どこでなにをするつもりだ?」
そうですね、ポッカリ日が空いちゃいますもんね。なにをしましょうか?
「うーん……そうですね、ヤガン・ファミリーでも潰しといてあげますよ。報酬の前払いって事で」
「……そ、それはありがたいが、まだ協力するとは決まった訳じゃないぞ?」
「……断るんですか?」
あれ? あれれ? 良い雰囲気で終わったと思ったのに私の思い込みですか……残念です。本当に残念ですが──
「──次のあなたに期待しましょう」
──そう言って短剣を振りかぶります。
「ま、待ってくれ! 協力しないとは言ってないだろ?! 絶対協力するように上に掛け合うから! だからお願いだ!」
「やっぱりボスじゃないじゃないですか。いっても幹部あたりですかね? まぁ、協力してくれるなら興味ないですが……」
「う、嘘は言ってない!」
「知ってますよ。まぁいいです……一週間後楽しみにしてますね?」
そう言って私は部屋を出た後、地下の倉庫に赴き中に納められていた物を根こそぎ持って帰ります。
地下倉庫まで案内してくれた人は顔を引き攣らせてましたが、文句を言ってくる事はありませんでしたね。
今日はここら辺でログアウトしましょう。明日からは調薬スキルのレベル上げと並行して、ヤガン・ファミリーを潰していきます。
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「……兄貴良かったので?」
「……仕方がない、俺もお前もまだ死にたくないだろ?」
「それはそうですが……」
たった今まで話していた相手が居なくなり、ドッと疲れが押し寄せてソファーの背もたれに凭れかかる俺に、部下が心配の声を掛けてくる。
それに対して返事をしながら、この事をどうやってボスと他の幹部連中に説明し、協力を取り付けるか頭を悩ませていると、女を案内していた部下の一人が帰ってきた。
「兄貴……」
「奴の様子はどうだった?」
「終始機嫌が良さそうに鼻歌歌ってましたよ」
「……そうかい、羨ましいもんだぜ」
こっちはお前のせいで胃が痛いってのによ……。
「それで? 奴はなにを持っていった? もちろん確認してたんだろ? 今は少しでも奴の情報が欲しい」
「それが……」
「……なんだ? まさか確認し忘れた訳じゃねぇよな?」
歯切れの悪い部下を苛立ちながら問い詰める。
「そういう訳じゃなくてですね、その……」
「なんだ、勿体ぶらず早く言え」
「……そぎ」
「あ?」
「根こそぎ持っていきました……」
「……なんだって?」
「ですから倉庫の中に納められているものを根こそぎ、それこそ明かりを灯すための燭台まで全部……」
そうして俺はあまりのストレスに気絶した。勘弁して欲しいぜまったく……。
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《調薬スキルのレベルが上がりました》
さてと、レベル上げはこのくらいでいいですかね?
あれから二日間ずっと調薬スキルのレベル上げをしていましたが、そろそろヤガン・ファミリーを潰しに行きましょうかね? 約束もした事ですし。
「では行ってきますね」
「ふぁい……」
挨拶をすると前歯のない宿の主人が見送ってくれます。一度挨拶すら返さず目線も合わせない日があったので前歯抜いたんですよね。とても可哀想です。
とにもかくにも出発です。まずは路地裏の奥を目指しましょう。
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さて、調薬スキルのレベル上げ中にやって来たムーンライト・ファミリーの使いの方によると、ここの角を曲がってまっすぐ行った先にヤガン・ファミリーの本部があるらしいですね。
「あっと、すいません」
曲がり角で危うく人とぶつかるところでした。もうすぐ敵地ですし気を付けないといけませんね。
「待ちな嬢ちゃん、ここから先は一般人立ち入り禁止だ」
「そうなんですか? それは面倒臭いですね……」
うーん、どうしましょうね? サクッと殺っちゃいますか?
「どうしても通りたいってんなら……へへっ、わかるだろ?」
「あ、もう面倒臭いので殺りましょう」
「あ? なんだ──」
手始めに手足を切り落としてダルマにします。そのまま騒がれる前に、口に調薬スキルで作成した火薬玉を詰め込みます。
ポーションを掛けて止血もしておきましょう。途中で死なれては面白くありません。
「

っ?!」
身を捩って無駄な抵抗をする彼を担ぎ上げ、そのまま助走をつけてヤガン・ファミリー本部まで投擲スキルで投げ飛ばします。
彼は放物線を描いて飛んでいき──ドッガ━━━━ン!!!
──建物の窓を突き破ったところで爆発四散しましたね。見れば蜂の巣をつついたような騒ぎです……当たり前ですね。
この混乱に乗じ強行突破します。後ろを振り返っていた門番二人の首を落として門を蹴破り、前庭を駆け抜け、途中すれ違った人は──さーちあんどですとろい、です。
「お邪魔しまーす」
玄関を火薬玉の投擲でぶち抜きそのまま突入。目の前に広がる光景は大きな階段があるエントランスホールのようですね?
色んな所からワラワラ人が湧いて出てきますが関係ありません。ムーンライト・ファミリーの人から渡された見取り図の通りにボス部屋目指して突き進みます。
「この女っ! 止まれ!」
「舐めた真似してくれやがったな?!」
槍を突き込まれますがそれを半身になって躱し、むしろ槍を掴んで引き寄せます。
「っ!」
そのまま喉に刃を捩じ込んで殺し、飛んできた矢の盾にします。
「死ねっ!」
振るわれる長剣をクルリと躱し、手首を掴んで握り潰します。
「がぁっ?!!」
相手が武器を手放したので、それを掴み上階に居る弓使いへ投擲、頭を貫きます。
そのまま隙だらけの元長剣使いの首を落として蹴り飛ばし、後方に居た魔術師にシュートです。
「がっ!」
怯んだところで一気に接近し喉を掻き切ります。
「囲め! こいつただもんじゃねぇぞ!」
「ムーンライトの手先か?!」
合っているような? 違うような? まぁ返事の代わりに仲間の死体を投擲でプレゼントです。
避けるにしても迎撃するにしても一動作必要ですからね、その隙に接近しておきます。
「舐めやがっ──」
叫ぶ大男の口に短剣を突き入れ上顎から後頭部まで貫き、そのまま引き摺って盾にしつつ階段を駆け上がっていきます。
その際に大男が持っていた斧を投擲し、一番離れた所に居た女性──恐らく神官職──の頭をカチ割っておきます。
「く、来るなぁ!」
錯乱した弓使い達が散発的に放ってくる矢を大男の死体で防ぎ、突っ込んでくる槍使いの股間を蹴り上げ前のめりになったところで人中を穿ち、倒れたところで頭を踏み砕き、同時に左右から挟み撃ちにせんと刃を振るってきた短剣使い達の攻撃を跳ねて躱し、空中で大男の死体を弓使いへ投擲し、空いた両手を片方の短剣使いの肩に乗せ、その持っていた短剣を横から首に差し込み、肩に乗せた手を軸に回転──捻じ斬ります。
そのまま重力に引かれるように落下し、もう一人の短剣使いの頭に刃を差し込み捻ってから抜きます。
「化け物……」
「ヒィッ!」
……そんな目で私を見ないでくれませんか?
「イライラするんですよ……」
「っ!」
彼らではもう『遊び』ません。殺します。
硬直した一人の目に指を突き入れ脳まで穿ちます。そのまま床に叩きつけ潰しておきましょう。
「に、逃げろぉ!」
「わぁっ!!」
「逃がしませんよ」
三田さんの光魔術の《聖壁》で退路を塞ぎ、影山さん達の闇魔術の《影縫い》で足を縫い止め、麻布さんの風魔術の《風刃》で喉を裂いて、私が山田さん──短剣──を振るい敵を殲滅していく。
数分もする頃にはエントランスホールには肉塊と鉄の匂いのする液体しかありません。
「……さっさと済ませてしまいますか」
用が済んだのでその場を後にし、このファミリーのボスが居るであろう部屋へ向かいます。
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「親分早くしてくだせぇ! 戦線が持ちません!」
「わかっている! あとこれだけでいい!」
クソっ! 今まで順調だったのにどうしてこうなる?! なにが起きてるんだ?!
クソ親父にムーンライト・ファミリーを破門されてから虎視眈々と復讐の機会を狙ってきた。
油断も隙もなかったはずだ。慎重に事を運び少しずつバレないようにムーンライト・ファミリーのシノギを奪い、バレない程度に組員を拉致して情報を吐かせ、時には買収し、幹部の一人をこちらの息の掛かった奴にする事も出来た!
最近街で起きた事件の影響でさらに勢力を拡大する事も出来た。後は今までの行いを続けながら小競り合いをし、機を見て本部に強襲を仕掛けるだけだったのに!! どうして上手くいかない?!!
「よし! 逃げるぞ!」
敵がムーンライトの者かそれともさじ加減を間違えて領主の尖兵が来たのか、そのどっちかはわからんが、向こうに渡ってはまずい帳簿や資料といくつかの貴金属を手にし、側近に用意が出来たと振り向いたところで──
「どちらに行かれるのですか?」
──さっきまですぐ側に居た側近の首を片手に女が隣に立っていた。
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《レベルが上がりました》
《スキルポイントを獲得しました》
《カルマ値が下降しました》
《既存のスキルのレベルが上がりました》
《レベルが一定に達したスキルがあります 進化が可能です》
《称号:人種キラーを獲得しました》
《山田さんのレベルが上がりました》
《影山さんのレベルが上がりました》
《麻布さんのレベルが上がりました》
《三田さんのレベルが上がりました》
《井上さんのレベルが上がりました》
これでヤガン・ファミリーの本部は終わりですね。後は残った日数で支部を潰していけば完全に終わりです。
「皆さんもお疲れ様です。特に麻布さんと井上さんはそれとなく動作の補助大変助かりました。ありがとう存じます」
『──!』
『ヴゥ!』
『……! (バッサバッサ!)』
『がァ!』
『イィ!』
「ふふ、元気なようでなによりです」
さてとこの館を探索して良い物がないか物色してから帰りましょうか。それが終わったら今日はもうログアウトですね。
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さて、あれから約束の一週間が経ちましたね。その間に私はヤガン・ファミリーを完膚なきまでに潰しておきました。名簿にあった幹部から上は全員首を塩漬けにしてありますし、これなら文句は出ないでしょう。
「お邪魔しまーす」
そのまま一週間前にも立ち寄った路地裏の酒場に入っていきますが……皆さんこちらをすごい勢いで二度見しましたね。
「お前さんか……こっちだ、ついてこい」
「わかりました」
この前の人ですね。言われたとおりに素直についていきます。まず裏口から外に出て、細い路地の途中の建物の中に入り、二階から洗濯物を干すために渡された通路を通り反対側の建物の屋上へ渡り、一旦そこからまた外に出て、回り込んでからまた同じ建物に入り、二階に上がったと思ったら地下に降り、そのまま地下通路を通っていくと扉が現れました。
「……随分と入り組んでいますね?」
「やましい事があるからな」
そのまま扉を開いて中へ入ります。そのまま連れられて奥に進み、一際豪華な一室の前へ着きます。
「親父、エレンだ! 例の女を連れてきた」
「……入れ」
この人エレンさんというのですね、何気に初めて知りました。エレンさんが中へ声を掛けると渋い声が入るように促します。それに従いエレンさんが扉を開けて中に入っていきます。それに続き私も入室します。
「……その女か」
「えぇ、そうです」
値踏みするように見られますが、こういう視線は嫌いじゃありません。少なくとも私の価値を見ようとしてくれている証拠ですからね。
「ふん、幹部に成り立てだからビビったんだろ? お前には気概というものが足りない」
「……そうかい」
なにやら喧嘩腰の方がいますが仕方ありませんね。ヤクザな人は面子が大事とどこかで聞いた事があります。貴族と一緒で常に見栄を張り、隙を見せた相手のマウントを取らないと死んでしまう生き物なのです。
「女一人に親父や俺達の手を煩わせやがって。なんなら俺がこの女を始末して──」
「──よせ」
「……親父?」
おや? なにやら不穏な空気になりかけたところで親分さんが止めましたね。まぁ止めなかったらあの人の首は胴体と泣き別れしてましたけど。
「その女に手を出すな、それは人間じゃない」
「……親父が言うのであれば従いましょう」
そう言ってこちらを睨みつけるに留めます。どうやらここの親父さんは部下から大変慕われているようですね。
「いつまで立っているんだ、そこに座りなさい。話を聞こう」
「それでは失礼して」
やはりソファーはふかふかですね。そのまま私が座ったのを合図に綺麗な女性が紅茶とお茶菓子を用意して去っていきます。教育が行き届いているようで感心ですね。
「それで話とは?」
「エレンさんから聞いてないのですか?」
「お前さんの口から聞きたい」
なるほど、道理ですね。本人の口から聞かないと後からシラを切られるだけですから。
「私が指名手配されてるのはもうご存じだとは思いますが、そのせいで不自由を被っているんですよ。街中を堂々と歩けないのは別に構わないんですけど、施設を利用出来ないのは面倒臭いんです」
「それでワシらに領主になれ、と?」
「えぇ、そうです」
「お前さんの要求には無理がある。なると言って簡単になれるものではないし、第一なれたとしても次は国から討伐軍が来るだけじゃ。そこらへんはどうする?」
ちゃんと考えているようで安心ですね。ここですぐさま頷くようでは用はありません。
「まず領主の子供と妻を全員殺します。その後にエレンさんあたりを隠し子だなんだと理由をつけて後継者に据えます。要は正統性があればいいのですから家督を簒奪してしまえばよいのです」
「そう上手くいくとは思えんがな?」
「大丈夫です、実行は全てこちらでやります。あなた方には物資の提供と成功した後の諸々の処理、そして領主として便宜を図ってくれればそれでいいです。万が一失敗した場合は素知らぬ顔をしてればそれで構いません」
「ふむぅ……」
別に失敗してもいいんですよねぇ? 国の討伐軍が来ても次はそれを鑑賞するか飛び込んで引っ掻き回すだけですし、なんなら討伐軍の司令官だけをひたすら殺し続けるのも面白そうですね?
「……お前さんを放っておくとなにやらさらに不味い事態になる気がするのぉ。わかった協力しようではないか」
「そうですか? ありがとう存じます」
協力を無事に得る事が出来ましたね、なによりです。
「……その前にヤガン・ファミリーを潰したと言ったな? そこのボスの首はあるのか?」
「? これですか?」
そう言って私はヤガンの首の塩漬けをテーブルの上に載せます。
死んだ時と同様に間抜けな表情をしています。こんな物がどうしたんでしょうね?
「……」
「まさか本当に……」
「お腹痛い、胃薬どこだっけ?」
周りがざわめく中、エレンさんは胃薬を探しています。大丈夫でしょうか? 胃が悪かったのですね、そうは見えませんでしたが……。
「……バカ息子め」
「親父……」
「確かにヤガンの首だ。報酬の前払いも貰った事だし協力を約束しよう」
「本当ですか? それはなによりです」
「この後はどうするね?」
「この後一旦休みます。明日細かい準備を終わらせて明後日にはもう決行です」
「随分と性急だな。あいわかった」
「では、私はこれで」
「エレン、送っていきなさい」
「……はい」
そのままエレンさんに来た道を案内され酒場で別れてから、宿屋に帰還しログアウトです。