第二章 地下墳墓探索
さてと、戦果の確認も終わったので本格的に探索しますが、どうやら敵です。
『オァヴ……』
どうやらただのゾンビのようです──うっ、臭い! 臭いです! ここにきてリアル描写にした弊害が出てしまいました。
「……なるべく近づきたくありませんね」
なので松明を手に持ち、口に油をいっぱいに含んでから一気に噴き出します。まぁ火吹き芸ですね。
『……ぅヴ』
予想通り弱点のようですがあんまり効果は高くないですね。近接の方が早いのでサクッと殺してしまいましょう。時間を掛ける方が問題です。
《新しく曲芸スキルを獲得しました》
い、いらない……いや! きっとなにかに役立つはずです! 曲芸スキルを信じるのです!
「ふぅ……というかこれ、松明持たずに探索したら暗視や夜目などのスキル手に入りませんかね?」
このゲームはプレイヤー次第な割合がすごくありえそうです。明かりなしで攻略していきましょう。
▼▼▼▼▼▼▼
だんだんと慣れてきて足下くらいならボンヤリと見えるようになってきましたね。
そんな事を考えていますと風切り音と共になにかが飛んできました。
「っ!」
危ないです、少し反応が遅れていたらダメージを受けていました……が、どうやら向こうからお目当てのモンスターが来てくれました。
====================
種族:リビングデッドソード Lv.7
状態:普通
====================
一応『テイム』を発動してみますが失敗に終わります。まぁそうですよね、先に力の差を見せつけろって事ですよね。
「フッ!」
なので短剣で再度飛んできた奴を打ち落とし、再び飛び上がる前に踏み付けて阻止し、思いっきり柄で殴り付けます。
『──! ──!』
「どうです? 服従する気になりましたか?」
念のためさらに五発ほど殴り付けてから再度『テイム』を発動します……今度は成功ですね、ステータスを確認しておきましょう。
====================
名前:未定
種族:リビングデッドソード Lv.7
状態:普通
スキル欄
『浮遊Lv.3』『武具憑依Lv.4』『隠密Lv.1』『暗視Lv.3』『不意打ちLv.1』『闇魔術Lv.4』『切断強化Lv.2』『精神状態異常無効Lv.-』
称号欄
レーナの従魔:レーナの従魔となった証。主人から受けるバフの効果が上昇《小》
====================
ふむ、『武具憑依』ですか……私が考えていた事の後押しになりそうなスキルですね、試してみましょう。
「……この短剣に憑依出来ますか?」
『──』
元の錆びた片刃の剣が崩れて消え、代わりに状態が憑依となりました。
どうやら憑依した状態だと武器の耐久値を合わせたものがモンスターの最大HPになるようです。攻撃力も同様ですね。
この短剣は初期装備なので実質不死身ですね、まぁ初期装備なので攻撃力もお察しですが。
「後は名前ですね」
しかしながら私のネーミングセンスなどあってないようなもの……どうしますか。
「……もうあなたの名前は山田さんで」
『?! ──! ──!』
なにやら抗議されているようですがサクッと無視します。
====================
名前:山田さん
種族:リビングデッドソード Lv.7
状態:憑依
====================
「無事登録されましたね」
『──』
心なしか哀愁漂う短剣を持ち探索再開です。
▼▼▼▼▼▼▼
あれからしばらく進み、宝箱なんかも見つけましたが不審なくらいにモンスターに遭遇しません。パーティーを組める最大人数が従魔や召喚獣含めて六枠なので、あと四体のモンスターをテイムしたいところですから、出てきてくれないと困るのですが……。
『──! ──!』
「? どうしましたか山田さん?」
なにやら山田さんの様子がおかしいですね? なにかあったのかと思ったら──
「──そういう事ですかっ!」
足下からいきなり攻撃を受けました。危ないじゃないですか! 怒ったところでしょうがありませんけどとりあえず敵の確認です。
====================
種族:シャドウ Lv.7
状態:普通
====================
お目当てのモンスターその二でしたので溜飲をいくらか下げましょう。
それよりも確か山田さんは暗視スキルを持ってましたね。だから逸早く気付けたのでしょう。
「さて、この暗い所では厄介な敵ですから山田さんが頼りですよ」
『──!』
了承するように柄が震えそのまま身体が引っ張られます。それには逆らわずむしろ引っ張られる方へ渾身の突きを放ちます。
『ヴゥッ!』
ビンゴですね。そのまま周りに新たに取り出した松明を転がし他の影と遮断し閉じ込めます。
「さてと早く諦めてくれるといいんですけどね?」
そのままゆっくりとシャドウに近づき松明で滅多打ちにします。
これでもかというくらい滅多打ちにします。
やがて動かなくなったところで《テイム》を発動します……成功ですね、山田さんよりも楽でした。
「さてと、ステータス確認です」
====================
名前:未定
種族:シャドウ Lv.7
状態:普通
スキル欄
『影潜りLv.3』『影移動Lv.2』『隠密Lv.1』『暗視Lv.3』『不意打ちLv.1』『闇魔術Lv.4』『魔術強化Lv.2』『精神状態異常無効Lv.-』
称号欄
レーナの従魔:レーナの従魔となった証。主人から受けるバフの効果が上昇《小》
====================
「……とりあえずあなたの名前は影山さんで」
『ヴゥッ?!』
「さ、影山さん、早く私の影に潜ってください」
『ヴゥゥ……』
本当に渋々といった感じで私の影に潜ってくれました。彼には私が近接で戦ってる間に魔術を撃って援護して貰いましょう。
====================
名前:影山さん
種族:シャドウ Lv.7
状態:憑依
====================
おや? 私の影に潜る事も憑依の一種なんですね? ……どうやらプレイヤーのHP等とは共有はされないようですが、気配察知などのスキルでは捉えきれないようですね。高レベルの看破を持っていたらわかりませんが……。
まぁそれはともかく今のところ順調と言っていいですね。探索は大分奥まで来ましたし、既にお目当てのモンスターを二体テイムしましたし、この調子でガンガン行きましょう!
「さぁ、再開ですよ山田さん、影山さん」
『『……』』
申し訳程度に柄が震え、影が揺れましたね……まぁいいです、とにかく先を進みましょう。
▼▼▼▼▼▼▼
「それではよろしくお願いしますね?」
『……(バッサバッサ)』
という事で、あの後さらにテイムしたファントムマントの麻布さんです。
====================
名前:麻布さん
種族:ファントムマント Lv.9
状態:憑依
『浮遊Lv.3』『暗視Lv.3』『防具憑依Lv.4』『風魔術Lv.4』『闇魔術Lv.2』『魔術強化Lv.2』『精神状態異常無効Lv.-』
称号欄
レーナの従魔:レーナの従魔となった証。主人から受けるバフの効果が上昇《小》
====================
麻布さんは初期装備の外套に憑依して貰っています。
彼には影山さんと同じく魔術による援護と後方警戒をお願いしています。これは頼りになりますね。
「賑やかになってきましたし、新しくサポートスキルでも取得しますか」
スキルポイントも余っていますし、なにがいいですかね? 暗視スキルは自力で取れそうですし、山田さん達が居るのでいいとして、出来るならばみんなにバフが掛けられるものがいいですね? だとするとこれらが良さそうです。
《SPを3消費して新しく鼓舞スキルを獲得しました》
《SPを3消費して統率スキルを獲得しました》
《SPを3消費して指揮スキルを獲得しました》
『鼓舞』と『統率』はどちらも戦闘時にパーティーを組んでる味方のステータスを上昇させるスキルで、『指揮』は声に出さずに従魔や召喚獣などに指示が出来るスキルです。
どれも使い勝手が良さそうなスキルを選んで取得しました。
ついでに自力では難しい耐性スキルも取得しておきましょう。
《SPを5消費して物理耐性を獲得しました》
《SPを5消費して魔術耐性を獲得しました》
《SPを5消費して身体状態異常耐性を獲得しました》
《SPを5消費して精神状態異常耐性を獲得しました》
このくらいですかね、合計29SPの出費ですが必要経費です。このまま先を進みましょう。
▼▼▼▼▼▼▼
──おや? しばらくモンスターを狩りながら進んでいたら足音が聞こえてきましたね? このエリアのモンスターは皆、浮くかゾンビのような引き摺る音や逆に五月蝿いものなのでどれにも当てはまりません。それにこの足音は人間かそれに近いものです……他プレイヤーでしょうか?
とりあえず警戒しながらなるべく気配や音を消して近づきましょう……。
「……」
どうやらすぐ近くにあった曲がり角の向こう側みたいですね。なんなら話し声まで聞こえます。少し様子を見てプレイヤーのようならば即殺しましょう。
▼▼▼▼▼▼▼
「クソっ! まだ腹の虫が収まらねぇ!」
「落ち着けハンネス、今怒ったってしょうがないだろ?」
「でもよ! なんなんだよアイツ! いきなりチュートリアルNPC殺すわ、PKしまくるわ、子供を盾にするわ、滅茶苦茶じゃねぇか!!」
俺ことハンネス──もちろんプレイヤーネーム──が腹を立ててるのはつい一、二時間くらい前の出来事をまだ引き摺ってるからだ。
その俺の怒りの原因たるそいつはいきなり現れた。そこら中に居る初心者達と変わらない装いで──実際そうなんだろうが──チュートリアルNPCに近づきそのまま殺害した。
ベータ版からお世話になったNPCで、俺達プレイヤーとなんら変わらない言動をするし相談にも乗ってくれる気さくなキャラだったから人気もあった。そりゃもう呆気に取られたさ。
でもそんな暇はなかった……間を置かずして奴は、今度は周りに居るプレイヤーをキルしまくりやがったもんだから、場は混乱の渦に叩き込まれた。
そんな中でも場を収め、ささっと奴を捕縛か倒すかしようと動く奴も居た。俺もその一人だ。
一人のベータ版からの知り合いの犠牲でもって半包囲に持っていけた。これで終わりだと思った時からもう怒涛の展開だった。
これでもゲームの腕にはそれなりに自信があったんだが、俺の斧は容易く躱され、その合間に短剣の投擲でヘッドショットを決められリスポーンしちまった。今思い出しても腸が煮えくり返る──!!!!!
「私もあの人は酷いと思います……」
「だよな! ほらライン! チェリーもこう言ってんじゃねぇか。幼馴染みなんだろ? 自分が助けようとした子供と一緒に目の前でキルされてなんとも思わねぇのかよ?」
「俺だって悔しかったさ。でも今言ったってしょうがないだろ? もうアイツは今どこ居るのかわからないから、攻略再開してるんだし」
「そりゃそうだがよ……」
「はいはい、そこまでよ。続きはここの攻略が終わってからね」
そう言って仲裁するのは魔術師のエレノアだ。確かに今言ったってしょうがないし、こいつらの言う通りだ……でもエレノアだって鬼のような形相であれは山姥かと思っ──俺はなにも考えてない。考えてないからそんな目で見ないでくれ……。
「悪かった当たり散らしてた、許してくれ……」
「いやいいさ、気持ちは痛いほどわかる」
「そうだぜ、俺なんて首を捻じ折られたんだ! アレはトラウマだぜ……」
「……私も自分の矢が子供に刺さった時、心臓止まるかと思った」
確かに槍使いのケリンも弓使いのミラも辛い思いしたよな。俺だけじゃない。
特にケリンは悲惨だったな……今も遠い目してるし……。
「みんな……そうだな! まずはこのエリアを初踏破してやろうぜ! そんで次は負けねぇ!」
「そうね、次会った時は今度こそ──」
「──こんにちは。こんな所で不用心ですよ」
そうやって聞き慣れない女の声が聞こえたと思った時にはエレノアの首から短剣が生え、背後ではチェリーの首が落ちたところだった……。
▼▼▼▼▼▼▼
「お、お前ぇぇぇぇえええ!!!!」
俺は衝動のままに斧を振るう。少しでもこの激情を晴らさんと、この憎き相手に叩き付けるかのように上段──身体を横に逸らし──薙ぎ払い──バックステップで──振り上げ──身体を斜め後ろに倒し──袈裟斬り──そのままバック転でどれも躱される。狭い通路内だってのに冗談じゃねぇ!!
「この野郎ォ!」
そのまま踏み込もうとして──ガキィン──!! ──投擲された短剣をラインの長剣が弾く。
「ハンネス! 落ち着け、俺達と連携しろ!」
「っ! あ、あぁそうだ、その通りだ」
くそっ! いきなり件の野郎に仲間二人が殺られて一気に沸騰しちまった……頭に血が上った状態で勝てる相手じゃねぇってのに……だが、この狭い通路内で仲間と連携すれば目がない訳じゃない。
ベータ版からの特典で、上限のLv.15とスキルレベルの半分を引き継いでる俺達はトップ組としての技量も矜持もある──!!!
「……ふーん」
だんだんと、ほんの少しずつだが相手を追い詰めんと連携して攻める! ケリンの槍は執拗に足元を狙い踏み込みを躊躇させる。ラインの剣捌きは頭を狙い相手の注意を奪い視線を遮る。そして動きが止まれば……いや、少しでも隙が出来れば俺が斧を叩き込む──!!!
「シッ!」
「フッ!」
「オラァ!」
「……」
クソッ! 掠りもしてねぇ! これでもダメなのか?! 狭い通路内で三人がかりだぞ?!
ケリンの槍はダンスを踊るように躱され、むしろ時おり槍を踏みつけられバランスを崩したところで首を狙われる。ラインの剣閃は目線すら寄越さず首の動きのみで躱される。俺の大振りの斧は言うに及ばず……。
「クソッタレ!」
「化け物め……」
思わずラインと一緒に悪態をついちまう……でも仕方ねぇだろこればっかりはよ、いっそ面白いくらいに当たらねぇんだから!
だが俺達もただ苦戦してるだけじゃねぇ、ジリジリと奴を誘導し──
「──っ!」
ミラが矢を放つ。当たらないとはいっても奴は俺らに掛かりきりの状態、しかも矢は死角である後方から来る。距離的にミラのキルゾーンだ。そのまま後頭部から貫かれて即死だ、ざまぁみろ! 奴の死を半ば確信し──
「……あっと、ありがとう存じます」
「──は?」
その時だった。奴がなにかに引っ張られるように後ろに倒れ、矢は素通りしてそのままケリンの頭を貫く結果に終わる……ケリンがリスポーンしていくのをただ呆然と眺めながらひたすら考える。
──なぜ回避出来た?
──奴は後ろに目でもついているのか?
そんな場合ではないとわかってはいるが、確実に決まったと確信していただけにショックは大きく、目を見開いて固まってしまった。
時間にして数秒程度だろうがその間に奴はミラに迫る。
「……くっ!」
ミラは相手を近づけまいと矢を連射するが全て短剣で弾かれる。
その音で我に返りラインと二人で駆け出すがもう遅い……正面から喉を貫かれてミラのHPは全損する……。