祖父母からの手紙
ベルナールとの食事会の日から、母さんは仕事以外は家にいることが多くなった。
休みの日はどこかに出かけることもあるけれど、日が暮れる前には帰ってくる。
それは良いのだけど、
「ついこの間、初めて会ったばかりの人と、いきなり家族になって一緒に暮らすなんて無理だよ。そう簡単なことじゃない。もっと時間をかけて、お互いを知ってからでも良いんじゃないかな」
「そんなの、一緒に生活をしているうちに、だんだんとわかっていくものだわ」
母さんは良いかもしれないけど、ぼくはごめんだね! と悪態をつきたくなる。けれど、この場にはリュカもいる。ぼくはぐっと言葉を飲み込んだ。
「……はぁ。そう言うけど、この家はどうするの?」
「思い切って、売ってしまうのも良いんじゃないかしら。売ったお金を持参金として持っていければ、お母さんも安心して再婚できるわ。ベルナールさんの助けにもなるし、世のため人のためにもなって、良いじゃない!」
「そんな……。父さんが真面目に働いて買ったこの家を、売るなんて……。家族の思い出だってあるのに……! ぼくは絶対に反対だからね!」
思いもよらなかった母さんの言葉に、さすがのぼくも声が大きくなってしまう。すると、声を聞きつけたリュカが、一人遊びをやめて心配そうに近寄ってきた。
「にぃにー。ぽんぽん、いたい、いたい? だいどーぶ?」
「リュカ……。にいには大丈夫だよ。ありがとう……。大きな声を出してごめんね」
頭を撫でると、リュカはぼくに向かって「んっ」と両手を上げる。お望み通り抱っこすると、小さなお手々でぼくの頭を撫でてくれた。
「よちよち。いたい、たーい、あっちけー!」
その優しさに、涙が込み上げてくる。リュカをぎゅっと抱きしめて、母さんに向き合った。
「この話は、もうリュカの前ではしないで」
「……そうね」
さすがに母さんも「しまった」と思ったのだろう。この日はそこで、話が終わった。