ただし、穴が元に戻る可能性を捨てきれない。最低でも1週間は立入禁止。調査や採掘はそのあとに開始する。
「いやぁ、これは夢が広がるなぁ!」
「こんなに深く掘ったやつはいないからな。おれも何が出てくるか楽しみだ」
頭もベッケルもかなり期待しているようだ。
「中は真っ暗だからな。メリマスに街灯の魔道具をもらってくれ」
「りょうかいでさぁ!」
このまま大山脈をくり抜けば、人族領や東の領域へも到達できる。もちろん今すぐ行くつもりはないけど、きっといつかは役に立つときが来るだろう。
そんなこんなで思いがけない収穫もあり、お宝を夢見ながら視察を続けた。
その日の夕方。村に帰還して早々、椿から嬉しい報告が──。なんと村で飼っているクルック鳥の
「今日のお昼頃に生まれたんですよ」
「可愛いもんだね。うちの田舎で飼っていたのを思い出すよ」
「それって、啓介さんのご実家ですか?」
「ああ、
ここ数年は電話でしか連絡を取ってなかったけれど、あの元気の塊みたいな爺ちゃんだ。今もよろしくやっているだろう。
「それはそうと、育て方は特殊だったりする?」
「メリーゼさんに聞きましたけど、とくに手をかける必要はないそうです。親と一緒にしておけば問題ないって」
「そっか。なら安心だね」
「村で生まれた初めての命。元気に育ってほしいものです」
「ほんとだな。大切にしよう」
そんなこんなで夕食を摂りながら、みんなで今日の成果を話し合った。途中、家畜のことがキッカケで、村の中心に水路を引くことが決まる。飲み水は桜の水魔法に頼り、生活水は川から汲んでいたが……。村の人口が増えてきたし、気軽に使える状態にしたい。
幸いなことに、川の水質は極めて良好。北の源泉から村までは、ずっと結界で覆っている。水路さえ引いてしまえば、綺麗な水が使い放題だ。農業はもちろんのこと、日々の調理や家畜の世話にも役立つだろう。
当面は私と農業班を中心に片手間でやっていくことに。水路を敷地化してしまえば、伐採や除根の手間いらず。農耕スキルや土魔法を使えば、そこまで難しい工事ではない。
「まあ、風呂は桜任せになるけどな」
「問題ありません。私も毎日入りたいですし。ねっ、夏希ちゃん」
「桜さんのお湯は別格だもん! もうアレなしじゃ生きていけない!」
「おい夏希。おまえは入りすぎだろ。毎日何回入ってんだよ」
「何よ。わたしたちを敵に回すつもり?」
「ほんと、冬也ってデリカシーないよね」
冬也の迂闊な発言に、夏希と秋穂が速攻で食いつく。
(あー、やっちまったな。風呂の話題は沈黙に限ると散々……)
しばらく女性陣に囲まれ、風呂の大切さを教え込まれる冬也。助けに入る者など現れるはずもなく。1人、また1人と、男たちが逃げ出していく。ちなみに私は一番に回避したよ。