「いや、不足しているものはないかな、って」

「なるほど。まあ在庫はあるし、しばらくは問題ないぞ。鉱山からも質の良いのが採れてるよ」

「ほお。街のものと比べてどう?」

「かなりいいぞ。純度は高いし、鉱石からの抽出率も良いらしい」

 北の鉱山で採れるものは、街の採掘場よりも金属の含有率が高いんだと。製錬の魔道具による変換効率も良く、より高純度なインゴットを生成できるみたいだ。もしかすると、大地神の加護が効いているのかもしれない。

「ベリトアと夏希はどんな感じ?」

「わたしは相変わらず家具作りに専念してるよ。最近はテーブルやイスがメインかな」

「あー、この前見せてもらったよ。アレはいい出来だよな」

「そうでしょう、そうでしょう!」

「ベリトアはどうだ?」

「んー、とくには? 革の素材も倉庫にいっぱいありますし」

 ダンジョンを発見して以来、万能倉庫は魔物の素材で溢れ返っている。どれだけ贅沢に使っても在庫がなくなることはないだろう。

「革と言えばさ。ベリちゃんがこの前作った大型のリュック。アレは評判良かったよねー」

「確かに上物だったな。ダンジョン班も喜んでたわ」

「えへへー、ありがとうございます!」

「ここは村の生命線だからな。これからもよろしく頼むよ」

 私がそう言うと、3人とも誇らしそうに返してくれた。何かあれば声をかけるように伝え、次の場所へと歩いていく。今度は村の主要産業である農業区画だ。

「あ、そんちょーだ!」

「おじさんきたー」

「ほんとだ。つばき姉さん、村長がきたよー」

 田んぼの前までくると、全身泥だらけの子どもたちが──。私に気づいて、大声を出しながら手を振ってくれた。他にも椿や獣人の女性たち、メリナードの奥さんであるメリッサの姿も見えた。彼女らも一様に泥まみれとなっている。

「やあみんな。しっかり働いて偉いじゃないか」

「うん! 今は田んぼを踏み踏みしてるとこだよー!」

「つばき姉さんがいうには、コレが大事なんだってさ」

「土にくうきを入れてるのー」

「そうかそうか。頑張ってて偉い」

 今はどうやら、水を張った田んぼの攪拌かくはん作業をしているようだ。子どもたちにしても、その理由を理解した上で手伝っている。

「メリッサも一緒だったんだな」

「はい。勉強も大事ですが、まずは子どもたちと仲良くなることから始めようと思いまして」

「なるほど。社会勉強を兼ねてるし、とても素晴らしいと思うよ」

「ありがとうございます」

「みんなもご苦労さま。慣れるまでは無理せずにやってくれよ」

 兎人はもちろんのこと、どの種族の顔も生き生きとしている。忠誠度の上がり具合はすこぶる良好。ここでの生活にもすっかり慣れてきたようだ。

 ──にしても、農作業にこれだけの人数が割けるとは驚きだった。子どもが7人いるものの、今ここで作業しているのは全部で21人。村の主力産業にふさわしい人員配備だ。

「啓介さん、お疲れさまです」

「椿、手を止めさせて悪いね。ちょっと様子を見に来たんだ」

「いえ、私も今日は指導だけなので。何か気になるところはありました?」

「いや、全然ないよ。人が増えたなって思っていたとこ」

「そうですね。農作業に従事する人が増えましたし、そろそろ芋畑を拡げようかと思います」

「そっか。芋は村にとって最大の武器だしな」

「収穫時期がかぶらないよう、徐々に拡張していく予定です」

「その辺りは任せたよ。椿の思うようにやってくれ」

 予定では、明日には田植えを始めるらしい。それが終わり次第、芋畑の拡張に取り掛かる。まあこれだけの人数がいるんだ。あっという間に終わってしまうだろう。

 椿たちと別れたあとは、木こりの夫婦を見に行ったり、水車小屋で脱穀作業を覗いたり、機織りをしている人たちと話したり──。村を巡回しながら、のんびりと1日を過ごした。

 ほとんどの作業が私の手から離れ、自分は声をかけて回るだけ。なんとも自堕落じだらくに思えるが……本来、こういう体制を築きたかったので非常に満足している。