異世界生活150日目

 ウルガンの先触れから5日後、ついに交易路が全線開通した。

 ナナシ村から街までの距離は30キロメートル。道幅は4メートルと広くはないが、やり遂げた充実感はひとしおだ。みんなで開通を祝いながら、森の端から街のほうを眺める。

「しかし、思っていた以上に街が近いな」

「ですね。徒歩で20分くらいでしょうか」

 森を抜けた先は、辺り一面が草原地帯。街を囲っている外壁を、ここからでも確認できた。

「一度は行ってみたいよな! 冒険者ギルドとかありそうじゃん?」

「あー、それで冒険者に絡まれる的な? 異世界あるあるイベントだよね!」

 冬也と桜は興味津々なご様子。まだ見ぬファンタジー世界を前に盛り上がっている。

「まぁ、そのうち行くこともあるだろ。それより拡張のスキルを試してみるよ」

 伐採のときの教訓を受け、森の外での拡張がどうなるかを検証。森を出てすぐのところに、10メートルの正方形で拡張をイメージ……したのだが、いつまで経っても結界が現れない。

「あれ、おかしいな。みんなも結界、見えてないよな?」

「ええ。いつもならすぐに発動しますよね」

 まだ拡張する余裕は残っているはず。というか、ついさっきまで使ってたんだけど……。

 今度は森の中に向かって、今できる限界まで拡張をイメージ。すると、いつもどおりに結界が点滅して拡がっていく。

「こっちは普通にできるみたいだ。何が違うんだろ……」

 次は森の中に戻ってから、再び草原方面へと拡張してみる。

 すると、森の端までは拡がったのだが、草原との境目でピタリと止まった。

「おい。もしかしてこの結界、大森林限定なのか?」

『加護の範囲は大森林に限られる』

『大森林には、結界に影響を及ぼす特有の魔素がある』

 などなど、妄想は膨らむけれど、これといった原因はわからず仕舞い。いろいろと試してみたものの、結局、答えは出なかった。

「ダメだ。全然わからん。ひとまず今日のところは帰ろう。検証はいつでもできるしさ」

「ですね。早く帰ってみんなに報告しましょう」

 なんとなく後ろ髪を引かれつつも、その日は諦めて村へと戻った──。