異世界生活120日目
異世界に飛ばされてから4か月。ここでの生活にも随分と慣れてきた。
獣人たちとの共同生活、そしてダンジョンでの冒険と、各々が異世界ファンタジーを満喫している。以前のような焦りは消え、心にもゆとりができてきた。
そんななか、メリー商会が村を出てから3週間近くが経つ。が、いまだに何の連絡もない状態だった。議会との交渉が難航しているのか。それとも厄介ごとに巻き込まれているのか。ステータスを確認しても、村人は1人も減っていない。となれば、命に別状はないはずだが……ついつい、良からぬことを考えてしまう。
(まあ、今は待つしかないよな)
上手くやってくれると信じ、こちらも日々、受入れの準備を進めていく──。
村では2軒目の長屋が完成し、選定にあぶれた移民用の長屋もあと数日で建て終わる。ダンジョンのほうにも長屋が1つ。炊事を含め、寝泊まりできる環境が整った。村人のレベル上げも順調に進み、早い者ではレベルが20に達している。
当初は、結界に寄ってくるオークを私が倒していた。が、ラドたち戦士団が倒せるようになってからは、村人の選出を含めて丸投げした。私自身、それほど忙しいわけでもなかったが、ラドからの申し出に遠慮なく甘えることに。
一方、ダンジョンについては、桜たちに攻略方針を一任。無理をしないことを前提にして自由にやらせている。村の作業にしても、農業担当の椿、物資担当のメリマス、建築担当のルドルグと、私が出張る必要はほとんどない。
村での共同生活を始めて4か月。ようやく村長っぽい立場に収まっていた。
(そろそろ未来について考えるべきだよな)
目先の目標ではなく、もっと先のことを。そう思い、考えを巡らせていく。
まずはなんと言っても『日本に帰れるか』という問題だろう。異世界の言語が理解でき、ゲームのようなシステムがある時点で、まず間違いなく何者かが介入しているはず。
私を含めた転移者たちは、異世界に召喚された目的を知らされていない。けれど、人族領にいる勇者や聖女なんかは別だ。超常の〝ナニカ〟と接触、もしくは何者かに召喚され、与えられた使命の元に動いているかもしれない。いずれにせよ、これだけ大規模な異世界召喚となれば、おいそれと返すつもりはないだろう。
それにぶっちゃけた話、私自身は帰りたいと思っていない。たぶん、『村スキル』なんていう特別な力を得たからだろう。過ぎた力に
次に考えるのは、『この世界との関わり方』について。
現状わかっている範囲だと、この大陸に存在するのは、人族と獣人族の2種族のみ。どうやら戦争になるらしいけど、それをどうこうしようとも、できるとも思っていない。戦争行為自体についても、結局は勝ったほうが正義だ。『どちらが善で、どちらが悪か』なんて考えても意味がないし、心底どうでもいい。
とはいえ、人族が獣人族を飲み込めば、いずれナナシ村にも危害が及ぶだろう。獣人領が村の防壁になっている以上、ある程度の支援は必要だと考えている。
(まあ、このへんはメリナードからの報告次第だな)
そして最後に『敷地の拡張』について。
拡張できる余裕があまりないので、スキルレベルが上がってくれる前提の話だが……。
まずは南の海岸まで敷地を延ばして、塩や海産物を確保したい。これには、大陸の東と西を完全に分断する利点もある。村の拡張については、まだまだ空き地があるので後回しだ。
それよりも北の山脈付近を拡張して、鉱山を発展させたほうがいい。すぐ近くに川があるし、生活するための条件は整っている。今までの傾向から察するに、次の能力解放時には、とてつもない面積を獲得できると思う。南の海岸や北の鉱山まで拡張しても、かなりの余裕があると期待しているところだ。
(あっと、肝心なことを忘れてたわ……)
生活基盤が整ってきた以上、『彼女たちとの関係』もハッキリさせないといけない。結果がどうなろうとも、自分の思いを伝えておく必要がある。それとなく濁していたが、そろそろ面と向かって話し合うべきだろう。
翌日。朝食を終えた村人たちが、各自の作業へと向かっていく。
そしてこの場には、私と椿、桜と春香、それにロアだけが居残った。自宅のリビングに場所を移すと、5人がテーブルを囲んで向かい合う。
「えっと、もう察してると思うけど……。今日集まってもらったのは、私との関係についてだ。お互いどう思っているのか、いろいろとハッキリさせておきたい」
そう切り出すと、みんなが神妙な面持ちで居住まいを正す。続く言葉を待つかのように、こちらを見つめて黙り込んだ。
「俺も全部ぶっちゃけるからさ。みんなも本音で話してほしい。一応言っとくけど、村長の立場は関係ないぞ」
あくまで個人の意見だと念を押し、4人が頷いたところで本題に入る。
「もういい歳だし、鈍い方じゃないからさ。みんなの好意には気づいてたよ。もちろん、忠誠度とは別の意味でね」
それがどんな感情なのかはさておき、異性として見られているのは確かだ。
「俺、4人のことは好きだよ。異性としても、めちゃくちゃ意識してる。でも恋愛感情とは違うんだよね。どっちかっていうと、
「庇護欲って言うのは父性的な? それとも独占欲みたいなもの?」
と、ここで初めて桜が口を開く。
「たぶんその両方だな。お前のようなやつには渡せん! みたいな?」
「全員を囲っちゃおうとか思わないの? 状況的には十分可能でしょ」
「いや、ハーレムはちょっとな……。別に含みを持たせるわけじゃないけど、今のところは全然ない。付き合うとか、結婚したいって願望もないな」
「じゃあ、性的な欲求はどうです? 異性として意識してるんだよね」
「そりゃあるよ。歳の差を加味しても欲求はある。これでもかなり自制してるんだ」
ハーレムは問題外としても、男女の関係に
──と、そこまで話したところで、女性陣が自分の思いを語り始める。
「わたしは啓介さんのこと好きよ。助けてもらった恩があるし、異性としても気になってる。顔はそこまで好みじゃないけど、割り切った関係ならアリかな」
そう言ったのは春香だ。歳もそれほど離れてないし、「そういう関係になっても自然でしょ?」ってことらしい。世間一般の恋愛感ではなく、あくまで好意の
「私は……というか、兎人族の女としては、やっぱり優秀な子孫を残したいですね。村長に好意はありますけど、個人的な思いはありません」
ロアは種族的な観念なのか、それが当たり前なのだと語る。個人的な感情は度外視で、俺の能力自体に
「私はアレかな。性格と能力を
桜は最初に会ったときからずっとそんな感じだった。俺が手を出してこないことに加え、趣味が合うのもプラスの要素らしい。今は魔法に夢中だし、当面はファンタジー世界を満喫したいそうだ。チラッと椿を見たあと、何やら2人で頷き合っていた。