「ウガァァ……」
剣術スキルと上昇した力により、さしたる抵抗もなくオークの足を切り飛ばす。すぐさま一匹目の足を切り落とし、バランスを崩したところに追撃を加えていく。
完全に身動きが取れない状態を確認。3人がとどめを刺すと、2匹のオークが黒い霧を放ちながら
「啓介さん、お見事でした。これなら3匹でも対処できますよ」
「いやいや。みんなにもらった経験値のおかげだよ」
安全な場所からの一方的な攻撃。これが実力じゃないことは自覚している。だが
「おっ、3人ともレベルが上がってるよ! しかも一気に3つも!」
春香の鑑定結果を聞いて、椿たちは素直に喜んでいた。
私の戦闘を見届けたあと、攻略組はダンジョンの中へと入っていく。
「さて、儂らも作業に取り掛かるぞ! まずは伐採と資材確保からだ」
ルドルグの号令がかかり、それぞれが作業に取り掛かる。私と椿は伐採と枝打ちを。夏希が木材を加工すると、ルドルグは作業台を作り始めた。
この場所に作る施設は、10人ほどが寝泊まりできる長屋とトイレ。それに調理場と、水を溜めて置ける大きな
「なあ長。戦利品の保管場所はどうする? その都度持って帰るのか?」
「あー、転送用の保管倉庫も作りたいな。長屋の隣にでも頼むよ」
「じゃあ、そっちを先に作るか。嬢ちゃんもそのつもりでな」
「おっけー! 任せといて!」
作業は順調に進んでいき、昼前には倉庫が完成。現在はトイレの建設に取り掛かっている。ときおりオークを倒しつつ、経験値も肉もおいしくいただいた。レベルアップの恩恵は凄まじく、3人の腕力はみるみる上昇。木材の運搬も楽になり、作業効率は格段に向上していく。
「ところで、村人のレベルはどれくらい上げるんですか?」
重そうな丸太を担ぎながら、椿が問いかけてくる。彼女が言う村人とは、戦闘職以外の者たちを指すようだ。子どもを含め、生産職の仲間のことを気にかけていた。
「ひとまずレベル20が目標かな。それだけあれば、村周辺の魔物は余裕だと思う」
「レベル20ですか。それならオークすら倒せそうですね」
「街にいる日本人のこともあるからね。ある程度は自衛できるようにしたい」
村の中ならともかく、結界の外へ出る場合もある。伐採や交易路作りなどで、不意に敵と対峙したときが心配だ。立ち向かうことはできずとも、逃げ切れるだけのチカラは身に着けてほしい。
トイレや桶の設置が終わった頃、ダンジョンからみんなが帰還してきた。そのまま村へと戻りながら、今日の進捗を報告し合う。私も桜の隣を歩き、冒険
「今日は4層まで下りましたよ。レベルは結構高めで、出てくる魔物も変化しました」
魔物の平均レベルは15まで上昇。ゴブリンファイターやゴブリンアーチャーなど、新種の魔物が湧き始めたらしい。
「まさに異世界ファンタジーの定番だな。見た目なんかも違うのか?」
「ファイターは剣と革
残念ながら、剣や鎧はドロップしなかったようだ。「狩りまくればワンチャンあるかも」と、桜たちは息巻いている。そして大猪や大蜘蛛に関しては、
「村長。我らからも報告があるぞ。魔物のリポップについてなんだが──」
ラド曰く、魔物は小部屋でのみ生成されるようだ。通路を歩いていることはあっても、通路上で生まれることはない。地面から黒いモヤが湧き出すと、そのあと20秒ほどかけて実体化。リポップまでの時間はバラバラで、1時間から半日の範囲でランダムに出現するそうだ。
結局、話は尽きることなく、みんなは村に着くまで騒いでいた。
──ダンジョンの発見から1週間が経過──
攻略班の活躍は目覚ましく、日々着々と歩みを進めた。既に5階層のボスを倒し、転移陣の解放にも成功。常に安全マージンを取りながら、無理のないペースで挑んでいる。
そんな今日も探索を終え、夕食がてら話を聞いているところだ。
「──って感じでさ。今のところは順調だよ。オレの出る幕はほとんどないかな」
「いえいえ。冬也くんの出番はこれからですよ。みんな期待してますからね!」
「でもボスのときみたいに、桜さんが倒しちゃうでしょ?」
みんなに聞いた話によると、5階層のボスは『ホブゴブリン』という種族とのこと。身長は約2メートル。手には大きな
とはいえレベル差があり、魔法による先制攻撃すら可能な状態。桜とロアが魔法を放つと、一瞬で消滅したらしい。結局、冬也の出番はないまま、ボス戦は幕を閉じる。
しばらくすると、部屋の中央付近に変化が──。地面から黒い石柱がせり出し、すぐさま魔法陣が展開する。石柱に触れると、1階層の転移陣に転送されるそうだ。
ちなみに、階層ボスから宝箱が出現したり、レアな素材がドロップしたりといった、ゲーム的な要素はなかった模様。いつもの臭っさい
そして6階層に降りてからは、オークだけが出現するように。レベルは25前後と高く、部屋によって3~6体の集団と遭遇する。現在は7階層を攻略中だが、今のところオーク以外の魔物は見ていない。ファイターやメイジといった上位種も出てこないみたいだ。
「ところでラド、魔物の湧きに関してはどうだ?」
そんな一方、ラドたち兎人のメンバーには、5階層までの調査を頼んでいた。各部屋を巡回しながら、魔物が湧く仕組みを調べてもらったんだが……。
「今のところ、リポップの間隔に法則性はないようだ。同じ部屋でもその都度バラつきがある」
やはり魔物の湧き時間はランダムのようだ。種族もレベルもまちまちで、狙い撃ちすることはできない。出てくる魔物はゴブリン種と大猪、あとは大兎と大蜘蛛の4種類。その中から数体が選ばれ、不規則にリポップする感じだった。
「わかった。これで調査は切り上げよう。明日からはレベル上げを優先してくれ」
報告会が終わったあとも、席を立つ者は少ない。暗くなるまで話が続き、ダンジョン談義に花が咲く。