「初めまして。ナナシ村で村長をしている啓介と言います。周りにいるのは、この世界に転移してきた日本人の仲間です」

「みなさま初めまして。メリナードです。よろしくお願いします」

 友好的な態度を前面に出しながら、各々が簡単な自己紹介を交わしていく。ひとしきり挨拶を終えたところで、商会長のメリナードが真剣な顔つきで語り出した。

「我らメリー商会は、あなた方の存在や能力について、詮索せんさくする気も邪推することもありません。良き取引相手として、長くお付き合いしたいと考えています」

「ええ、事前に配慮いただいたのだろうと感じましたよ。日本人の姿もなかったですしね」

 メリナードはゆっくりと頷いて、

「正直に話しますが──。芋のことや、この緑の膜のことなど、気になることだらけです。しかし、ここで見たものや聞いたことは、決して他言しないよう徹底させます」

 春香の鑑定でも特殊な能力を持つ者はいなかった。洗脳や偽装の可能性はまずないだろう。

「ありがとうございます。私も良い関係を作れたらと考えていますよ」

「はい。信頼関係を築けるよう努力いたします」

 その言葉に偽りはなさそうだ。息子のメリマスや護衛の2人も深々と頭を下げていた。

「こちらの3人は、メリナードさんの近しい人と考えても?」

「もちろんです。息子も護衛の2人も、私が最も信用している者たちです」

「そうですか。なら、私のスキルと村についてお話しします」

 そう言って、村人の条件や村のルールなどを説明していく。上辺だけの信頼よりも、忠誠度を見たほうが早い。いっそのこと、村人になれるかを試してみることに──。

 話を聞いて納得した4人は、村人になることを了承。もし忠誠度が足りなければ、即時に結界の外へ弾かれるはずだ。

「忠誠度が足りない場合はあちらに飛ばされます。危険はないのでご安心を」

 私が居住の許可を出すも、全員が結界内にとどまっている。春香の鑑定による忠誠度は、商会長が78で息子が73、護衛の2人は6766だった。

「正直、忠誠度の高さに驚いています。もっと低いものと予想していました」

「村のことや村長の能力を聞きましたからね。言い方は悪いですが、その価値は十分に高いと伝わりました。真っ当な商人であればこうなると思います」

「というと、護衛の方も?」

「いえ、この2人は旧知の仲です。私の意向をみ取ってくれた結果でしょう」

「なるほど。なんにせよ、4人は村の一員になりました。これ以上の証明はありません」

「確かに、残酷で明確な証明ですね。私どもも嬉しい限りです」

 当初は集落で1泊する予定だったが、せっかくなので村へ招待することに。ただ、集落に誰もいないのはまずい。ラドと斥候のレヴ、息子のメリマスと護衛の1人は残ることに決まる。彼らは明日の取引が終わってから村へ合流する予定だ。


 村へ到着したあとは、みんなで新たな村人の歓迎会を開いた。

 お互い初対面とはいえ、忠誠度さえクリアしていれば問題はない。終始歓迎ムードで食事が進むと、メリナードはあっという間に周囲と溶け込んでいった。私も取りつくろうのをやめ、普段どおりの口調で接している。

「メリナード、今後の予定は明日じっくりと話そう。風呂もあるから、よかったら試してくれ」

「おお、風呂ですか。この夕食しかり、先ほどから驚かされてばかりですよ」

 さすがは商人だけあって、夕飯に出てきた食材を事細かに聞いていた。商人目線からでも、村で採れる食糧は別格とのこと。価値のある商材であることは間違いないのだろう。