異世界生活96日目
集落を村化してから1週間が経過。交易路の開拓は順調に進み、魔物狩りについても、ラドたち戦士職を優先してレベルアップさせている。
一方、商会との取引を2日後に控え、今日は待望だった水車小屋の完成を迎えた。自信満々のルドルグに案内され、私は建物を見て回る。
「
「どうだ。なかなか見事なもんだろ?」
小屋とは思えないほど立派な建物。川にある2基の水車が景気良く回っている。そして歯車を使った動力は、
「ほんと、よくやってくれたよ」
「椿の嬢ちゃんにも太鼓判をもらったぞ。もういつでも稼働できる状態だ」
ルドルグはこのあと、使い方のレクチャーをするそうだ。私も興味はあるけれど、邪魔するのもなんだと思って、ひとまず自宅へと戻ることに。
「あっ、村長! ちょっと相談があるんですけど、いいですかね?」
──と、自宅の近くに来たところで、夏希が声をかけてくる。
見た感じは普段どおりだし、慌てた様子もない。いったいどんな相談なのだろうか。
「どうした? 冬也と何かあったのか?」
「いえ、そっちは順調ですよ。あ、でもせっかくだし話しとくね」
2人の関係は良好。とはいえ、相談とは別に報告したいことがあるようだ。
「実はですね。近々、秋ちゃんも一緒に暮らすことになりまして」
「え? ごめん、もう1回言って?」
「わたしたち、3人で同居することになりました」
(うそ、だろ。冬也の野郎、いつの間にそんな……)
あまりの驚きに一瞬言葉を失ったが、なんとか平静を装って返す。
「3人で決めたなら好きにしていい。だけど、村に不和だけは起こすなよ」
「うん。そのへんは大丈夫! そんなことより、相談なんだけどさ」
「おいお前、そんなことって……。いや、なんでもない。続けてくれ」
どうやら相談というのは、仕事に関することらしい。村の生活を豊かにするため、家具やベッドを作りたいんだと。片手間で作るのではなく、家具作りに専念したいそうだ。
「村の細工師も増えたことだしさ。しばらく自由に作らせてほしいな、って相談です」
現状、村には家具類がほとんどない。夏希のスキルならば、それほど苦もなく作ってしまうだろう。彼女の言うとおり、建築部材の加工は他の人に任せればいい。
「よしわかった。ルドルグと一緒に引継ぎをしてくれ。あと、作業場はどうするんだ?」
「ベリトアの鍛冶場を借りるつもり。金具とかも頼みたいしね。もう許可はとってあるよ」
「そうか。どうせなら加工場を新設しよう。あとでルドルグに相談してみるよ」
「うん、ありがと村長!」
自発的に行動してくれて助かる。夏希の貢献度は非常に高いし、今回も上手いことやってくれそうだ。村の発展のため、遠慮なく進めてほしい。
「ところで夏希。秋穂の件って、どれくらい前から動いてた?」
「えっとね。最初に秋ちゃんが来たときかな。あの頃からこうなるように仕向けてた」
「……なるほど、大したもんだ」
「お互い気が合うしさ。この収まり方が、村にも私にも一番いいんだよ」
「わかった。仲良くやってくれればそれで良い」
それにしても冬也のやつ……。これでもかと言うぐらい問い詰めてやりたい。
が、それをやると、自分が
──それから2日後──
メリー商会との取引当日。会長直々の訪問を前に、私は昨日から集落へ乗り込んでいた。
ここにいるのは、冬也、桜、春香、秋穂。それにラドと斥候職2人を加えた8人。万が一の対人戦を考慮して、村の主力メンバーを引き連れている。
冬也と桜はレベル28、春香と秋穂はレベル25、私も25まで上がっている。よほどのことがなければなんとかなる、と信じたいところ。春香には、全ての来訪者を鑑定させ、気になることはすぐに報告してもらう
「村長、西の方角に多数の気配を探知しました。おそらく商会の方たちだと思います」
斥候職のレヴから報告が上がると、しばらくしてから集団が姿を現す。
武装した者や籠を背負う者。様々な種族の獣人が列を成している。それを見たラド曰く、前回と同じ顔触れとのこと。パッと見た感じ、日本人らしき人物は1人もいないようだ。
「じゃあみんな、打合せどおりに頼む。なるべく友好的にいこう」
そう言っている間にも、商会一行が間近に迫ってくる。
「族長殿、お久しぶりです。前回に引き続き、よろしくお願いします」
ラドに向かって
「メリナード殿、よく来てくれた。ひとまず集落に入って休息をとってくれ」
「はい。ではお言葉に甘えて」
一行に侵入の許可を出すと、商会長が気にした素振りも見せずに入ってくる。それに続いて護衛っぽい2人が。そして他の者もおずおずと続いた。今回はあくまで『侵入』の許可を出しただけ。村人ではないため、自動追放で
小1時間ほど休息をとる面々。芋を籠に詰め込んだあと、運搬役と冒険者たちは、街へと戻っていった。
現在、ここに残っているのは、商会長のメリナードとその息子のメリマス。それに専属護衛の獣人2名だけとなる。ちなみにこの2人は狼人という種族らしい。ケモ耳こそ生えているものの、見た目は人間と変わらない。
「お初にお目にかかります。商会長のメリナードと申します。これは息子のメリマス。村長のことは、先ほどラド殿から