異世界生活89日目
次の日の朝。集落に結界を張るため、調査隊を編成して出発した。
メンバーは全部で7人。私とラドの他に、護衛役の桜と冬也、回復役の秋穂、村との伝達要員として斥候職の2人が同行する。交易路作りを始めてから、既に40日ほどが経過。集落までの道のりは7割以上が完成している。次の交易までには到達しそうな勢いだ。
私はみんなに守られながら、ラドと並んで歩いていた。
「しかし、これだけ整備されてると楽だな。開通したら半日かからないんじゃないか?」
「いや、既に半日かかっておらんぞ。開通すればさらに早まるだろうな」
「魔物をほとんど見かけないし、相当便利に使えそうだ」
集落に向かう途中、1度だけ3匹のゴブリンを探知。冬也と桜が一瞬で仕留めた。東の森での経験で、2人は相当に強くなっている。もはやこのレベルの魔物は相手にもならない。
それからしばらく。集落に近づいたところで、斥候職の2人に様子を探らせる。結果、探知のスキルに反応なし。安全確認をしてから現地へと乗り込んだ。
「ここが我らの住んでいた集落だ。まあ、随分と荒れてしまったがな」
集落の広さは転移直後の村程度。周囲は土壁で囲まれ、
「こんな遠くまで来たのは初めてだ。異世界の雰囲気に触れて感動してるよ」
「街に行けばもっと感じるだろうな。さあ、さっそく始めるんだろう? 私はいつでも構わんぞ」
ラドに促され、集落周りの土壁ごと囲う感じで拡張をイメージ。するといつものように、結界がググッと
「建物ごと敷地化するのは初めてだ。どうなるかわからんから一応離れていろよ」
みんなが下がったのを確認してから、集落ごと固定するように念じる。
「「おおー」」
すると点滅がピタリと止まり、建物を残したまま結界が張られた。
これが人の住んでいる場所でも可能なのか。赤の他人の土地でも結界を張れるのか。街に行けば試せるのだが……それは追い追いにして、検証を進める。
「じゃあ次に、『物資転送』の位置を決めたい。ラド、住居を1軒利用してもいいか?」
「ああ、構わんよ。好きなところを使ってくれ」
「なら一番大きな家にするよ。今回は物資の保管が目的だからな」
既に村の『万能倉庫』を転送位置として設定済み。さっそくこの場所に送れるかを試してみる。最初はどうやって転送するのか不明だったが……何度か試しているうちに、なんとなく感覚が
転送元をイメージすると、その場所の映像が頭の中に浮かんでくる。その中から転送対象と分量を決め、最後に転送先を指定。するとその瞬間、物資が転送される仕組みのようだ。
ゴロゴロッ……ゴトッ
今回は、芋を籠1杯分転送してみたのだが、ほぼイメージどおりの量が住居の土床に転がった。魔法陣のような演出があるわけでもなく、唐突に床の上へ現れる感じだ。
「おお、これは便利だな」
「ちょっと地味ですけど、機能としては申し分ないですね」
集落の結界化と転送確認が終わり、みんな
「村長、一つ報告があるんだが……」
いつもとは違って、少し煮え切らない感じのラド。私の顔をチラチラと
「実はな。村にいる独身の者を
「は? 今なんて言った?」
「種を残すのは我らにとって重要なことなのだ! まあ、私欲が少なからずあることは認める」
何を言い出すかと思ったら、色恋に関する話だった。新たな妻を娶り、子孫繁栄を目指すようだ。他種族のルールだから口は出さんが……実に
「みんなー、今戻ったぞー」
「ただいま帰りましたー」
村に戻って早々、今日の出来事をみんなに報告する。集落に結界を張ったこと。物資転送が上手くいったこと。いずれは街へ進出することを伝えていく。
と、少し離れた場所では、ラドが緊張した面持ちでロアと話している。村長である私の許可を取り付け、娘のロアにも事情を説明しているのだろう。すぐ隣には、お相手であろう兎人の女性も同席していた。「そういうのは見えない場所で」とは思ったものの、兎人の聴覚があればどこにいても一緒だ。そう気づいてからは考えるのをやめた。
その日の夜。ロアの許しも出て、2人は正式な夫婦となった。今夜から一緒に住むらしく、ロアは女性と入替えで住居を移るそうだ。
(せいぜい励んで、村の人口増加に貢献してくれ……)
そんなことを思いつつ、私は