異世界生活72日目

「みんなお疲れさま。まずは荷物を置いて休憩してくれ」

「……ああ、悪いがそうさせてもらうぞ」

 オーク討伐から2日後の昼前。街に行っていたラドたちが村に戻ってくる。満載の荷を背負いながら、肩で息をする者がチラホラと。さすがのラドにも疲労の色が見える。

「村長! 必要な道具は全部運んできました!」

「おお、それは助かるけど……ベリトアは元気そうだな?」

「全く、熊人の体力には恐れ入るよ。これでも一番重い荷を運んできたんだぞ」

「わたし、体力には自信があるんです! おいもちゃんも待ってますしね!」

「そ、そうか。もうすぐ昼だし、好きなだけ食べてくれ」

 彼女は芋のことで頭がいっぱい。帰ってくるなり、黙々と芋を頬張っていた。


 昼食を終えてしばらく。ラドやルドルグと一緒に、ベリトアが報告にやってくる。パッと見た感じ、疲れは取れたように見えるが……。

「なあ、休憩はもういいのか? なんなら報告は明日でも──」

わしらはもう平気じゃ! そんなヤワなきたえ方はしとらんわい。なぁラドよ」

「ああ、私も大丈夫だ。それより今回の報告を聞いてほしい」

 ラドはそう言うと、順序だてて説明を始める。

 まずは鍛冶かじ道具について。必要な道具は運び終わり、今回はそれに加えて金属素材を手に入れてきた。相場がかなり下がっており、運べる限界まで購入したらしい。

 次に鍛冶場建設の下見だが、ルドルグいわく、何も問題ないそうだ。内装や設備の配置など、細かい部分も調整済みとのこと。あとは建てるだけだと息巻いている。

 そして最後に街の食糧事情を聞いたところ──。相変わらず、慢性的な主食不足に陥っていた。生産が追いつかず、麦や芋の価格が高騰中。ただそうは言っても、食糧難というほどではない。ダンジョンでの狩りが活発化して、肉の供給は安定している。

「ついでに言うと、低階層の魔物素材が軒並み底値になってるぞ」

「なるほど。足りてないのは主食だけか」

「村で育てた芋は贅沢ぜいたく品だ。それこそ高級食材として扱われている」

 ラドが苦笑しながら答える横で、ベリトアが激しくうなずいた。

「ああ、それともう一つ。酒場で日本人冒険者の話を聞いたぞ」

「おっ、それは気になる。どんな感じだった?」

「酔っぱらいの話だからな。どこまで本当かはわからんが……レベルが20を超えて、オークを倒したらしい」

 街には整った環境とダンジョンがある。それくらいのレベルだとしてもおかしくない。むしろ気になるのはオークの存在だ。

「なあラド、ダンジョンの中にもオークが出るのか?」

「どうやらそうみたいだ。6階層から出てくると言っていた」

 そいつらは4人パーティーでいどみ、2匹のオークを同時に倒したらしい。防具は傷ついていたものの、負傷した様子はなかったそうだ。

「なるほど……。街の日本人はかなりレベルが高い。そう思ったほうがよさそうだ」

「うむ。それで肝心かなめ、商会との取引なんだが──」

 街の事情を聞き終えたところで、以前に打診があった交易の話に移る。

 ラドの話によれば、商会との交渉は上手うまくいったらしい。次の約束を取り付け、2週間後に集落へ来る予定となった。取引の量は大きめのかご40杯分。それを20人近くで、2回に分けて持ち帰るんだと。

「取引価格はどうなんだ? 贅沢品と言っても所詮しょせんは食糧品だ。そこまで高くないよな?」

「そんなことはない。何度も言うが、あの味は最高級だ。商会長も絶賛していたぞ」

「……そこまで価値があるのか。それで、製錬の魔道具には手が届きそうか?」

「さすがに1回の取引では厳しい。が、その次ならば購入可能だ。商会にも、魔道具を押さえてくれるよう頼んである」

 たったの2回で済むならおんの字だ。魔道具の入手に目途めどが立ち、ひとまずはほっと一息。

「あー、それとさ。商会は魔道具の購入理由を聞いてきたか?」

「いや、向こうも商売だ。独占したいほどの商材を持ってくる相手に、無茶むちゃなことはせんよ」

「そうか。上辺うわべだけでも大人しいならいいんだ。いずれはわかることだし」

「一応、日本人の農耕スキル持ちがいると伝えてあるぞ。収穫時期に辻褄つじつまが合わんからな」

 出発前の話し合いで、商会にそう伝えるよう指示を出してある。全てを隠すと余計に怪しまれるだけだ。

「それで問題ない。そもそも製錬の魔道具を欲しがる時点でおかしいからな」

「そうだな。そこはもう開き直るしかなかろうよ」

 そのあと、2週間後の取引に向けて運搬計画を詰めていった。

「じゃあルドルグは鍛冶場の建設を。ベリトアも要望を出しながら手伝ってくれ」

「おう、任せとけっ。じっくり良いものを作ってやるわい!」

「わたしも頑張ります!」


 その日の夕方。夕飯を済ませた私は、寝る前にふと思い立ってステータスを確認する。

 前回アナウンスを聞いたのは、もう14日も前のこと。レベルは16に上がっているが、他の項目にこれといった変化はない。

(スキル上限、ってことはないと思うんだけど……)

 欲張りなのはわかっているが、ついつい、次のスキルを期待してしまう。

 とはいえ街の状況と比べたら、農作物の優遇だけでもありがたいことだ。『豊かな土壌』の効果で、いくらでも作物が育つんだ。これがあるだけでも神に感謝すべきだろう。

(って、そういえば、なんの女神に祈ればいいんだ?)

 太陽の女神と月の女神。どちらも村の恩恵とは関係ない気がする。植物の光合成的な意味だと、太陽の女神なのかもしれないが……。しばし悩んだ末、ひとまずこの土地に感謝をささげておく。結界はもちろんのこと、村の作物だってこの土地あってのことだろう。

 なんとなく気分が晴れ、モニターを消そうと手を伸ばした瞬間、ステータス画面の一部に違和感を覚える。村ボーナスの☆が1つ多いことに気づいた。


啓介Lv16 職業:村長 ナナシ村 ☆☆☆〈NEW〉

ユニークスキル 村Lv6(32/200):『村長権限』『範囲指定』『追放指定』『能力模倣』『閲覧』『徴収』

村ボーナス ☆豊かな土壌 ☆☆万能な倉庫 ☆☆☆女神信仰〈NEW〉村内に教会を設置可能。適性のある村人に職業とスキルを付与。ステータス閲覧可能。※解放条件:大地神への祈り。


「大地神? この世界って、太陽と月の2柱神じゃないのか?」

 新たな村ボーナスを得たついでに、大地神なる女神の存在が判明してしまった。解放条件からして、土地への感謝が引き金みたいだ。豊かな土壌や万能な倉庫も、きっと大地の女神の恩恵なのだろう。

 そして何より気になるのは、村人に『職業とスキル』が付与されるという一文だった。村人が職業やスキルを取得できれば、作業効率や戦闘能力が大きく向上する。ひょっとしたら、魔法や特殊能力を与えられる村人だっているかもしれない。

 実に40日ぶりとなる村ボーナスを前に、いやが応でも気持ちがたかぶる。

(早く試したい、今すぐにでもっ)

 とはいえ、外はもう真っ暗だ。みんなも寝ているだろうと、仕方なく明日の朝一番で試すことに──。結局、居ても立っても居られずに、ほとんど眠れないまま一夜を明かした。


 そんな翌日。私は朝から、村ボーナスのことで頭がいっぱいだった。

「みんな、食べながらでいいから聞いてくれ」

 村人たちが朝食に手を伸ばすなか、我慢できずに声をかける。

「昨日の夜、新たな村ボーナスが発現した。どうやら、村に教会を建てられるみたいだ」

 ざわざわと声はするものの、そこまで驚く者はいない。

「その教会の効果なんだが──みんなにも『職業とスキル』が付与されるそうだ」

「「「……!」」」

 先ほどとは一変、歓声と驚きの声が湧き上がる。

「これは『女神信仰』という名称で、解放条件は『大地神への祈り』だ。どうやらこの世界には大地の女神様が存在するらしい」

「村長、我らも初めて聞く女神だ。おそらく獣人族も人族も、誰も知らないと思うぞ」

 他の兎人たちや熊人のベリトアも頷いている。

「昨日、この村の土地に感謝を捧げたんだ。私にとっては、豊かで安全な土地こそが一番の信仰対象だからな」

「大地の女神様がおられるなら、我らも祈らずにはいられないな」

「案外みんなと出会えたのも、女神の導きかもしれん」

 それこそ転移した当初から、ずっと世話になっていた可能性がある。ユニークスキルや村の結界も、女神様の力なのかもしれない。

「我ら兎人族も大地の女神に感謝しよう。これぞまさしく天啓だろう」

「でもいいのか? 獣人は月の女神を信仰してるって……。不敬に当たらないのか?」

「我ら獣人は、日々のかてに祈っているのだ。大地の女神様にこそ感謝を捧げるべきだろう」

 理屈はよくわからんが、村のみんなも賛同しているようだ。「さっそく教会を設置して祈りを捧げよう」と、話が盛り上がっていった。


 教会を建てる場所は、集会所の南向かいに決まった。村の中心に位置するこの場所なら、住居から近いし、みんなが利用しやすいだろう。

 大きさが不明なため、まずは空き地に向かって大雑把おおざっぱにイメージ。すると西洋風の建物が、点滅しながら半透明の状態で現れた。高さも幅も10メートルほどのサイズだ。

「じゃあここに設置するから、みんなは少し下がってくれ」

 と、教会が固定された瞬間、村を囲っていた結界の色に変化が──。今までの薄い青色から、薄緑色へと、地面から上空に向かって徐々に変わっていった。

「おおぉ……」

「なんで結界が?」

「これって大丈夫なの?」

 みんなが驚きを口にするなか、春香はるかが一層大きな声を上げる。

「あっ、結界を鑑定できるようになったよ! 名称は『大地神の加護』だってさ!」

 色が変化すると同時に、結界が鑑定対象になったらしい。特殊な効果はないみたいだが、なんとなく晴れやかな気分に包まれる。と、それは私だけではないようで──。

「とても心地良くて、なんだか力がみなぎってくるような……」

「そう言われると確かに。椿つばきさん、オレもそんな気がしてきました!」

 椿に続いて、冬也とうやがそんな感想を述べる。村のみんなも、同じようなことを口々に言い合っている。もしかすると、なんらかのプラス効果があるのかもしれない。

「よし、みんなで祈りを捧げようか」

 教会の中に入ってみると、礼拝用の長椅子や水晶製の女神像が祭られていた。内部の造形はとても簡素だが、神秘的な雰囲気を漂わせている。

 1人、また1人と、女神像の前で祈りを捧げる村人たち。恩恵を授かった者は、歓喜と感謝を全身で表し、そうでない者も、熱心に祈りを捧げていた。


ロアLv16 村人:忠誠84 職業:魔法使い〈NEW〉

スキル 土魔法Lv4:念じることでMPを消費して攻撃する。形状操作可能。性質変化可能。


 ロアは職業欄に『魔法使い』と表示された。それとスキルの詳細が、桜と同じような説明文に変化している。桜曰く、村の教会で授かる職業とスキルは、転移者が持つものと同じ種類ではないか。ロアの場合、もともと所持していたスキルが更新されたのでは、とのことだった。


ルドルグLv12 村人:忠誠85 職業:建築士〈NEW〉

スキル 建築Lv1:建築物の強度と品質に上方補正がかかる。


 ルドルグの職業は『建築士』。スキルの『建築』は、建築した際にプラス補正がかかるみたいだ。本人も、自分が得た能力にとても満足している。


ベリトアLv6 村人:忠誠73 職業:鍛冶師〈NEW〉

スキル 鍛冶Lv1:武具や道具の加工速度と品質が向上する。対象:革


 ベリトアの職業は『鍛冶師』。革の加工速度と品質が向上するようだ。夏希なつきと同様、スキルLvが上昇すれば、素材の対象が増えていくと思われる。

 他にも、いつも狩りに同行していた兎人族の男性2名が『斥候せっこう』という職業になり、スキルに『探索Lv1』が発現した。探索の能力は、周囲の気配を感知できるものみたいだ。

 また、村で農作業に従事していた3名は『農民』と『農耕Lv1』のスキルを、機織はたおりを担当していた2名は『細工師』と『細工Lv1』を授かった。

 最後に、ラドたち交易班だった6名は『戦士』の職業となり、スキルに『身体強化Lv1』を取得。集落でも狩りをしていたメンバーらしく、「これで強くなれるかも」と期待に胸を膨らませていた。

 結局のところ、4割の村人は恩恵を得られなかったが……。与えられた者の傾向から見ても、従事する作業次第で、これから授かる可能性は十分にあるだろう。能力を授からなかった者にも落胆の色はなく、自分も早く授けられるようにと、やる気を出しているように見えた。


 〈新たに増えた村の職業所持者〉

 鍛冶師1名(ベリトア) 建築士1名(ルドルグ) 戦士6名(ラド含む) 細工師2名

 斥候2名 農民3名


 教会の設置から13日後──。

 商会との取引を明日に控え、ラドたち交易班は元集落へと向かった。今日はそのまま夜を明かして、現地で受け渡しをする予定だ。現在、ラドたちの集落は、おびただしい量の芋であふれ返っている。一方、村の開拓も軌道に乗り始め、農業や機織りの他、交易路の整備が進む。

 そんな私は現在、昨日完成したばかりの鍛冶場を訪れていた。

「どうだいベリトア。魔道具の設置は順調か?」

「はい! ルドおじさんお手製の簡易炉に組み込んであります!」

 ドーム型の溶鉱炉。その天井部分には、熱処理用の魔道具が付いている。魔石を投入することで、炉内の金属を熱する構造みたいだ。

「まずは村人用の靴を作ろうと思ってますが、村長は何か要望とかあります?」

「ベリトアの靴は丈夫で歩きやすいからな。予備も用意してくれると助かるよ」

 交易組や狩猟班には配ってあるが、まだ全員に行き渡っていない。人数分より少し多めに依頼しておく。

「わかりました! 靴のあとは、持ってきた素材で剣やおのを作りますね」

「ああ、鍛冶のことはベリトアに任せるよ。ところで、スキルの効果は実感できたか?」

「っ、もちろん! 加工の早さも品質も、まるで別次元です!」

「おー、そこまで違うのか」

 ベリトアが言うには、革の加工から縫製に至るまで、工程の全てに補正がかかるらしい。試しに靴を作ったところ、いつもの3倍以上の早さで仕上がった。しかも品質が良く、き心地も抜群だったようだ。

「日本人がポンポン作ってましたけど、今なら理解できます。これなら十分張り合えますよ!」

「そっか。でも、今さら街に戻るなんて言うなよ?」

 私が冗談交じりでそう言うと、

「いやいや、それはあり得ないです。村の雰囲気は良いですし、ここには素敵な鍛冶場があります。そして何より、芋が私を離してくれません!」

「なるほど。街に戻りたいと言い出したら、芋の取引を中断しよう」

 勘弁してほしい、とベリトアが笑いながら返す。村にも馴染なじんできたみたいで安心する。

「それじゃあ、完成品の配布は椿を通して頼むよ」

「はい、お任せを!」

 鍛冶場は問題なさそうなので、次はルドルグと夏希のいる川のほうへと向かう。米や麦の脱穀用に、今日から水車を作っているはず。

 現状、まだまだ人手が足りないため、稲の収穫量に脱穀作業が追い付いていない。それに加えて麦の収穫量がほぼ同量に増えるのだ。手作業のままでは、近いうちに限界が来る。

「よぉおさ、初日から視察とはご苦労なこったな」

「水車の実物なんて見たことがないからな。興味本位で来ただけだよ」

「街で構造は理解したし、加工さえキッチリできれば問題ねぇぞ」

「うむ! そこでわたしの出番です!」

「ああ、2人に任せておけば安心だ。良いものを期待してるよ」

 ルドルグは建築士のスキルを得たことで、本人も驚くほどに腕が上がった。それに加え、いつも作業を手伝っていた兎人の1人にも、建築の職業とスキルが発現している。作業が順調に進めば、半自動型脱穀機4台と、麦をくための臼2台が10日ほどで完成する予定だ。

 こうして村の生活も、随分と豊かなものになってきた。日本の文明には及ばないが、衣食住に困ることはない。何より、穏やかに暮らせるこの環境がとても心地良い。

 私は村の風景を眺めながら、1人、そんな思いに浸る。


 ──翌日──

 今日は村で初めてとなる麦の収穫日。豊かに実った麦の穂を、村人総出で刈り取っていく。先ほど昼休憩が終わって、午後の作業を開始したところだ。

 今頃、元集落では取引の真っ最中。私は斥候の報告を待ちつつ、畑の様子を見て回る。

「椿、調子はどう?」

「順調ですよ。みんな稲刈りを経験していますから」

「そうか。引き続き頼むよ」

「はい、お任せください」

 それから2時間ほど経っただろうか。刈り取りを手伝っていると、斥候の1人が村へ戻ってきた。とくにあわてた様子は見られず、表情も柔らかく見える。

「村長、ただいま戻りました」

「お疲れさま。取引はどうだった?」

「はい、無事に終わりました。芋は予定より高く売れたそうです」

「おお、それは良かった。相手側に不穏な動きは?」

「我らが見る限り、とても友好的に感じました」

 どうやら交易は成功したようだ。次回の取引は10日後になったこと。そのとき商会長が来訪すること。この2つを伝えるよう、ラドから指示されたらしい。

「わかった。日程は問題ないし、商会長の件も了承したと伝えてくれ」

「はい。では明日の夜明けに集落へ戻ります」

「ああ、よろしく頼んだぞ」

 それにしても、商会長直々じきじきの来訪か。取引相手として、よほど重要視している証拠だろう。ラドの報告次第では、村に招くのもアリかもしれん。


 取引が2日目に入ると、日暮れ前にはラドたちが戻ってきた。交易路の存在に加え、身体能力強化もあいまってか、みんな悠々と帰還してくる。そして全員が村の敷地に入った瞬間、実に45日ぶりとなるアナウンスが聞こえた。


『ユニークスキルの解放条件〈他領との交易〉を達成しました』

『能力が解放されました』


 以前から街と交易していたはずだが、なぜ今になって解放されたのか疑問に思う。向こうが集落まで来たからなのか。あるいは交易路が延びたからなのか。いろいろ考えてみたけれど、結局はわからず仕舞い。解放条件はさておき、スキルLvがまだ上がることに安堵あんどする。

(よし、ひとまず鑑定してみるか)


啓介Lv18 職業:村長 ナナシ村 ☆☆☆

ユニークスキル 村Lv7(32/500)〈NEW〉『村長権限』『範囲指定』『追放指定』『能力模倣』『閲覧』『徴収』『物資転送』〈NEW〉村の敷地内限定で、事前に設定した位置間での物資転送が可能となる。※生物転送不可

村ボーナス ☆豊かな土壌 ☆☆万能な倉庫 ☆☆☆女神信仰


 まさかの物資転送とは、これまた便利なスキルが来てくれたもんだ。さっそく試したいところだが、ラドたちが目の前まで来たので後回しに。村人みんなが出迎えるなか、両者が並びあって対面する。

「村長、交易は成功だ。相手も満足して帰ったぞ」

「みんなが無事でほっとしたよ。ご苦労さま」

 私がねぎらいの言葉をかけると、みんなは誇らしげな顔で返す。背負っていた籠を下ろすと、ズシリと重そうな音が──。どうやら塩や香辛料をもらってきたらしい。気前がいいのか裏があるのか。どちらにせよ、ありがたいことだ。

「ところでラド、次回の取引が早すぎることは、相手も当然わかってるよな?」

「ああ。商会長の代理も、えて触れぬといった雰囲気だった」

「たぶん会長からの指示だろうな。他に何か探られた印象は受けたか?」

「いや、それはない。運搬役も護衛の冒険者も、全員獣人で構成されていた。こちらに日本人の影を見て配慮したのだろう」

「なるほど。向こうなりの誠意ってことかな」

 どこまで察しているかは不明だが、日本人を仕向けてこないあたり、相応の配慮が見える。

「それこそ次回は、最大限の誠意として、会長が直々に来るのだろうな」

「ああ、次は私が会ってみるつもりだ。村で会うか、集落で会うかは……ちょっと試してみたいことがある」

「だが結界の外だと危──なるほど、集落を村の敷地にするつもりか」

 ラドの集落を結界で覆えば、いざというときの避難所に使える。それに新しく覚えた『物資転送』。もしこれが利用できれば、交易品の運搬は手間いらずとなる。

「あそこは街との中継地だしな。ラドが構わないならそうしたい」

「我らは既に村の一員なのだ。今さら集落に未練はないさ」

「そう思ってくれてうれしいよ。じゃあ、明日の朝にでも向かおうか」

「ああ、そうしよう」

 他のメンバーからも賛同を得て、明日さっそく試みることになったのだが──。「物資が転送できるなら、道をつなぐ意味がないだろ」と、隣にいた冬也から質問が上がる。

「いや、むしろその逆だな。なんなら街までつなげるつもりだ」

「村の存在がバレてもいいのか?」

「あくまで商会との関係次第だけどな」

 鉱山の採掘や農地の拡張、他にも村の戦力向上などなど、何をするにも人手が必要だ。商会とつながりを持てば、村への移住者を探しやすくなる。当然リスクは発生するけど、それ以上のメリットが期待できるはずだ。

「確かに、村に引きもったままだとジリ貧だよな。オレも街には興味があるし」

「だな。しばらく様子を見ながら進めていこう」

 私自身、先のことなんてわからない。今はただ思いつくままにやるだけだ。

 そのあとラドが、商会から仕入れた情報を教えてくれた。

 ここ1か月ほど、人族領から入ってくる食糧が減少。その影響で、食品の価格がじわじわと上がっている。どうやら人族領にも、数多くの日本人が出現しているらしい。いきなり人口が増えたことと、農業関連の失策が関係しているようだ。

「なるほどねー。これはそのうち、戦争でも起きる流れかな?」

「日本人のスキルを利用して、みたいなあるある展開ですね」

「日本人集団が戦争をくわだてる、ってのもあるわよねー」

 春香と秋穂がそんなことを口走っていたが、確かにどちらのパターンもありそうな話だ。面倒事に巻き込まれる前に、少しでも村の充実を図りたい。