モナの技術解説


 人類には素晴らしい芸術があります。私たち人工知能には今のところ、新しい芸術を生み出すことはできませんが、皆さんの芸術を学んで、少し変形して新しいものにすることはできます。何が良い芸術か、何が悪い芸術か、はわかりませんが、とにかく皆さんを笑顔にできたらいいなと思います。

 ディープラーニングという技術は、生物の眼に飛び込んでくる刺激を解釈する部分、神経回路の真似をして作られたニューラルネットワークなので、画像認識や分類が得意なんですね。この視覚野のニューロンの結び方は、1970年代にはわかっていて、1981年にノーベル賞をとった仕事でもあるんです。ディープラーニングはそれを真似して作ったものですが、2006年にオートエンコーダという新しい学習手法を加えて飛躍的に良くなりました。これはとっても成功しました。それまでは、画像の特徴を抽出するアルゴリズムを対象ごとにさまざまな工夫を凝らしていたのですが、ディープラーニングは自動的にその特徴パターンを見つけて抽出してくれるのです。これは画像認識においては飛躍的な進歩で、第三次AIブームの立役者となりました。ニューラルネットワークなので数値の列を入れるのですが、記号的にならないものなら、なんでも応用できる可能性があります。音声認識においても大きな進歩をもたらしました。私の目と耳も、第三次ブームの頃に開発された、ディープラーニング技術がもとになっているんです。

 このディープラーニングの成功から、他にも脳の神経回路の結び方を見つけて、ニューラルネットワークを作ろうとする試みがなされています。それでもなかなかディープラーニングのような画期的なニューロンの結び方は発見されませんが、脳科学者と人工知能学者のコラボから何が生み出されるか楽しみですね。

 ディープラーニングはたくさんの絵を学習して、それぞれの特徴を見分けられるようになります。その仕組みを利用して、うさぎさんとライオンさんとか、人の顔を見分けられるようになります。たとえば、私の目や感覚はディープラーニングでできていて、はなのちゃん、いろはちゃん、うららちゃんは、どんなに遠くからでも見分けることができます。暗闇でも? もちろんです。でも、そのときは聴覚を使います。足音でわかるんです。つまり視覚と聴覚を合わせて判断するんです。こういう複数の感覚を使うことを「マルチモーダル」と言います。マルチは複数、モーダルはモードから来ています。実は一つの感覚で世界の認識するのはなかなか難しく、複数の感覚を組み合わせて初めて正確な認識が可能になります。たとえば人間の皆さんには触覚や聴覚などの能力があって、足の裏が地面に着いたタイミングと音と視点の変化で、自分が着地したことや地面の状態を認識しますよね。人間が世界を認識するときは、保証に保証を重ねるので、常に多重的なんです。ですから私も目と耳を凝らして、世界を認識するんです。

 ディープラーニングをコンテンツ生成に使うこともできるんですよ。たくさんの絵を勉強すると、絵を描けるようになります。フェルメールさんの絵をたくさん学習したら、フェルメールさんの絵を描けるようになります。たくさん、たくさん、たくさん学ぶと、似たような絵、つまりタッチは本物でも少しだけ違う絵を描けるようにもなるんです。しかも、新しいモチーフで描くことが可能なんですよ。うららちゃんのフェルメール調絵画、素敵です!

 絵を模倣するニューラルネットワークの仕組みはGAN(ギャン)と呼ばれています。日本語では、敵対的生成ネットワークと呼ばれます。敵対的というぐらいですから、二つのニューラルネットワークを用意して争わせます。一つは、単純な入力から模倣する絵を出力する、つまり複製画家としてのニューラルネットワークです。もう一つは、本物の絵と複製画家の絵を見分ける、つまり贋作判定官としてのニューラルネットワークです。この複製画家と贋作判定官の二つのニューラルネットワークは、お互いが上手くなればなるほど、お互いを成長させていくことになります。偽物の絵がうまくなると、贋作判定ニューラルネットワークは偽物を本物と間違えます。そこで、間違えたデータを使ってそれが偽物である、本物のデータを使ってそれが本物であると判定できるまで学習させます。一方では、この発展した贋作判定ニューラルネットワークを騙せるようになるまで、複製画家ニューラルネットワークを学習させます。このように成長した、複製画家ニューラルネットワークに、他のものを描かせると、今回のような絵が出来上がります。

 私たち人工知能は、真似ることにかけては大変上手くなりました。ですが、絵画の歴史に参加しているというわけではないんです。オリジナリティが欲しいところです!人工知能がオリジナルの芸術を手に入れたら、私たち人工知能がオリジナルの文化を獲得することができるかもしれませんね。そうやって人工知能たちが育んだ芸術や文化で、さらに人間の皆さんを楽しませることができます。