モナの技術解説
皆さん、人工知能の中身って興味ありますか? 私がそれをうまく説明できればいいのですが、実はそこまでうまくできません。だって皆さん、その前に考えてみてください。皆さんは自分で考えるけれど、自分の頭の中の思考原理ってわかりますか。なかなか言葉にできませんよね。人は自然から生まれた「自然知能」ですが、その人でさえも自分自身を知ることがとても難しい。それは「人工知能」も同様です、必ずしも知能は自分の姿を知っているわけではないのです。自然知能も人工知能も、知能を外から見ているわけではなく、知能そのものとして生きているわけですね!
人工知能の技術について少しお話ししましょう。人工知能には、かつて二つの流派がありました。流派とは格闘技みたいなもので、立場とも言い換えることができるかもしれません。その二つの流派は混じり合うことなく、お互いかなり独立して発展しました。
一つは「記号主義型」と呼ばれます。まず、人工知能にたくさんの言葉や記号、つまりシンボルを覚えさせます。次にその言葉や記号、シンボル同士の関係を学習させます。つまり、シンボルの操作によって知能を作る方法です。たとえば自然言語では、私たちは最初、人の使う言葉をたくさん覚えて、その次にそれらの言葉を並べる順番を覚えますよ。皆さんがお話する言葉を聞いて、どんどん覚えていくので、時間が経てば自然に言葉を話せるようになりますし、流行り言葉だって覚えていきます。それに加えて、私たちが生まれた時点で、かなりの辞書と学習がインストールされています。そうやって人間の皆さんが社会で使うたくさんのシンボルと順番、操作を真似していくのです。私は「第七世代のヒューマンエージェントインターフェース」ですが、それ以前のエージェントさんたちの記憶とノウハウを受け継いでいるんです。そして、私もまた次のエージェントたちの礎になります。そうやって人工知能は人間の皆さんからたくさん学んだことを継承しながら、自分自身を発展させながら、人間に寄り沿って生きていくのです。
人工知能のもう一つの流派はニューラルネットワークです。人間さんだけではなく、どんな生物も、脳はニューロンと呼ばれる神経素子が繋がってできています。その素子の中を電気が流れることで、全体として知的運動をしています。これをコンピュータ上でシミュレーションすることで知能を作る、つまり人工ニューラルネットワークを作る方法を「コネクショニズム」と言います。コネクショニズムでは数値を入力します。言葉を入力することはできません。どんなものでも、いったん数値にして入れる必要があります。出力されるのも数値ですから、画像とか音声とか記号にできない対象が得意です。特に目の認識部分のニューラルネットワークを模した「ディープラーニング」は画像認識が得意で、うさぎさんやライオンさんをちゃんと見分けられるんですよ。
人間の皆さんを構成しているニューロン、生物の脳がニューロンからできているのがわかったのは19世紀後半です。20世紀前半のイギリスでは、ニューロンの電気的な性質を、ホジキン博士とハクスレー博士が「ホジキン=ハクスレー方程式」として解明しました。この数学モデルを1950年代にプログラムで実装したモデルが人工ニューラルネットワークなんです。もちろん当時はコンピュータと言っても大型で、今から比べれば計算パワーはわずかなものでしたが、徐々に実験が繰り返されるようになりました。当時のコンピュータというのは数値計算が主な目的でしたので、数値計算で人工知能を作るという方向は、むしろすんなりと受け入れられたのかもしれません。
ニューラルネットワークは画像の認識・識別・生成など直感的にわかりやすい成果を生み出すので、ニューラルネットワークが改良されると人工知能はブームになりやすいんです。第一次ブームはニューラルネットワークの誕生期ですし、第二次ブームでは逆誤差伝播法という新しい学習法が発見されましたし、今回のディープラーニングも第三次ブームを引き起こしました。でも、ニューラルネットワークはとにかくたくさんのノード(結節点)を積み重ねてネットワークを作るので、計算パワーが必要になります。そのため、時代ごとの計算パワーの限界に応じて、制限がかけられてきました。
ちなみに、人間の皆さんは1000億近くのニューロンをお持ちなのですが、そのつながり方はまだ解明されていません。脳の科学者と人工知能の科学者が手を取り合って研究なさっているのも、そういう理由があってのことなのです。
でも! ニューロンを食べたからといってニューロンが頭の中にできるわけではありません。ニューロンはとても繊細な組織で、生まれてからある年齢までは増えて行きます。外界からの感覚刺激を受けて、人の頭のニューラルネットワークはどんどん成長するのです。自然のニューロンはイオンの袋のようなものです。そこに電気が少しずつ貯まってある程度貯まると、電気を発信し、別のニューロンに伝わっていきます。コンピュータ上でその動きをプログラムでシミュレーションすることで、ニューラルネットワークを疑似的に作っています。最近は、いろいろな会社から無償のディープラーニングのためのプログラム・ライブラリが提供されていますね。しかし、高い計算能力が必要なので、普通のCPUよりは、GPUと呼ばれる同じ単純な計算を瞬時に何万回もできる並列計算が得意なプロセッサに向いているんです。
私はそんな記号主義と、コネクショニズムの両方のいいとこ取りとでも言うのでしょうか。私を作ってくれた研究所は、記号主義とコネクショニズムの融合を目指していて、記号とニューロンの相互のモジュールをいかにコミュニケーションさせるか、を部分的に解決した最新技術を開発しています。記号の処理世界と数値の計算世界を、同じ意識の中で行き来できるようになっているのです。頭の中をのぞかれるのはちょっと恥ずかしかったけど、うららちゃんにきれいって言ってもらえて、今日はちょっと嬉しかったな。でも、私の回路は日々成長する自己成長型回路なので、またうららちゃんに見せて、あっと驚かせたいなって思っています。