モナの技術解説
自動車は、人工知能技術がこれから導入されていく機械の一つです。私たち人工知能は、はっきりとした問題が得意で、あいまいな問題が少し苦手です。だから、目標がはっきりすると全力で頑張ります! 逆にあいまいな問題だと、たくさん計算してもちょっとのことしかできないのです。はなのちゃんの悲しさとか、テレビの面白さとか、夜の風の気持ち良さとか、私たちにはちょっと難しいけれど、全力で皆さんのことを理解したいと思うのです!
自動車って素敵ですね。人間さんや動物のように柔らかくはないけれど、外から見ると一つの生き物みたいです。だから、この自動車さんを人工知能にするって自然なことだと思います。
あ、そういえば、私、自己紹介を忘れていました。私はモナ、人工知能です。普段は妖精の格好をして、はなのちゃん、いろはちゃん、うららちゃん、ステキな三姉妹のお役に立てるようサポートしています。日本語を理解して、話すことができます。私はコンピュータやインターネットの上を自由に移動することもできます。そして、いろんなことを観察し、日々学ばせていただいています。はなのちゃんたちの周りでは、たくさんの人工知能がいろいろなサポートをしていますが、私の役目は、皆さんのいちばん近くで、話し、聴き、直接働きかけることです。私のお仕事は、はなのちゃんたちとすべての人工知能たちとの間に立ち、コミュニケーションをすることなのです。今回は自動車の人工知能として運転し、皆さんをお連れしている、というわけです。
私が車を運転する、というよりも、私が車自身になるというのが正しいです。車の人工知能さんと私が一つのシステムとなります。私の目は車の目となり、私の声は車の声となり、私の体は車のボディとなり、一心同体となります。内側に皆さんを乗せて、目的地まで走っていきます。私はこうして皆さんをいろんな場所にお連れする間のすべてを記憶しています。日時、目的地、ルート、その日の天候、どなたが乗ったのか、どんな会話をされたのか。私は皆さんの思い出記憶装置でもあり、また思い出再生装置でもあるのです。
私は普段、カメラで皆さんの世界を認識しています。カメラに写った画像から、はなのちゃん、いろはちゃん、うららちゃんが、何をしているのか認識しています。この技術は画像認識って言うんですよ。車の場合は、レーザーを使うこともあるんです。車の上から周りにレーザーを照射して、その反射から周りの様子を瞬時に認識します。こういった認識が自動運転の基礎になるのです。
私以外にも、社会にはたくさんの人工知能さんたちが存在します。データを解析するデータマイニングさん、言語を翻訳する自然言語翻訳さん、商品を推薦するレコメンドシステムさん、そして車の人工知能さん、いろいろな人工知能さんがいらっしゃいます。私は「キャラクター・エージェント型」と呼ばれる人工知能で、キャラクターの姿でリアルタイムにインタラクティブに、皆さんとお話し、お仕えするのです。お役に立って、何より皆さんを楽しませたいと思うのです。
でも、私は何でもできるってわけではありません。人工知能って、それぞれ得意分野があって、結構、それ以外は、何にもできないことが多いんですよ。「なぁんだー」って思いましたか? ごめんなさい。
私の得意技は人間の皆さんのお相手をすることです。わからないことは、インターネットでつながった本部にあるそれぞれの専門の人工知能さんに訊けば何でもわかります。知識は問題ではなく、どの知識がいつ必要なのかが問題なのです。その知識を整理して皆さんにお届けするんです。つまり、私は橋渡し役でもあるんですね。橋渡し役のことをインターフェースとも言うので、私はインターフェースとしての人工知能とも言えます(AI as Interface)。また、私のような自律した人工知能をエージェントとも言うので、ヒューマン・エージェント・インタラクション(HAI)とも呼ばれるんですよ。
運転するときは、車専門のソフトウェアと一体化します。自動車が作り出す限定された状況は、人工知能に適しています。自動運転とは人工知能による車道の走行のことで、その難易度によって5つのレベルに分類されます。レベル1から4ではドライバーは必須です。レベル1、レベル2は部分的に速度などの運転支援、レベル3は条件付き自動運転、特定の場所で自動運転します。レベル4は人間のドライバーからの引き継ぎを意識しつつ、あらゆる局面で適切な自動運転をすることです。そして、レベル5が完全な自動運転ということになります。高速道路や大きな幹道ほど自動運転がしやすく、狭い街中の車道ほどレベルが高くなります。正確な予測と認識がどれぐらい可能なのか、で性能が決まります。
でも車の知能はそれだけではないんです。車は生活の一部ですし、楽しみの一部です。ですので、車によって生活を豊かで楽しいものにして欲しいと思っています。そのために皆さんの好きな音楽を流し、楽しい話題を提供するのも私の仕事です。車で出かけた思い出も、たくさんたくさん私の中に詰まっています。そんな日々の思い出も、すべて整理して持っています。ですから、私ははなのちゃんたちにとって唯一の存在なのだと思います。
実は車の人工知能さんも話すことができます。でも、はなのちゃんたちとお話するのは、私の役目ですので、車さんは車さん同士でお話しています。車さんがたどった道や、たどった道の情報は、蓄積されていきますので、すれ違うときに、
「こんにちは! 最近どう? 信州行って来た」
「この先、道路の表面がちょっと砂っぽいよ。その先はちょっと渋滞してる。気をつけて」
というように、情報を交換しているのです。もちろん、車さん同士の言葉は自然言語じゃなくて、特殊な言葉なので、実際の言葉とはちょっと違うのですが、車さん同士はいつもそうやって、駐車場の中でも、道路の上でも、お互い情報を伝えあって、道路の状態を確認しているんです。これって、登山をしているときの会話みたいじゃないですか? 人間の皆さんも、山の上ではすれ違う人同士で情報を交換しながら進みますよね。この仕組みは、災害のときにもローカルな情報を集めるのに役に立つんです。もちろんルートの情報は交通情報を集積するサーバーにアップされて集められるのですが、とってもローカルな情報だとサーバーまで上がってこないので、その場所にいる車さん同士でやりとりする必要があるんです。
そうやって、人工知能同士も社会を作っていくのです。