勇者を誘導するために権能を行使した魔神の瘴気を感じ取り、世界樹と龍神が同時に勘付く。

特に世界樹はこの流れを危険視している節があり、いまにも飛び出していきそうな勢いであった。

「あなたは動かないのですか、龍神」

「動く? ……どうしてそのような事を?」

「どうしてではないでしょう。そもそも、魔に連なる者を見張り世界の秩序を保つのは龍族の役目であったはずです」

しかし当の龍神は何をそんなに騒いでいるのかと言わんばかりに平然としており、特に動じた気配はない。

それから世界樹の前で一息つき、淡々と語る。

「魔神は確かに危険ですが、それを我らが父、創造の神が感知していないとでも?」

「そ、それは……!」

「第一、あなたはいつも急ぎ過ぎているのです。何も敵を倒す事だけが解決の方法でもありますまい。何か別の手があるはずです。……きっと父もその何かを望んでいるのだと、私はそう思いますよ」

世界樹は龍神の話に説得力は感じつつも、それはそれ、これはこれでしょうと思案する。

確かにそんな手があれば是非縋りたいものだが、仮にも神の一柱たる自分たちが魔神関連で手を抜いて良い訳ではないからだ。

この世界の流れを俯瞰し大局を見る龍神と、少しのミスも許されないと急ぐ世界樹。

どちらが正しいのは一概には言えないが、龍神はそれもそれでまた父の手のひらの上か、と理解した。

「ふむ。それでもあなたが気になると言うのなら、そう動くと良いと思いますよ。なぜならそうあるべきとあなたという亜神を創ったのは、他ならぬ父の思惑によるものですから」

最後にそう伝え、龍神は世界樹のふもとから旅立っていった。



第一巻 了